除法
除法 (じょほう、除算、割り算とも、 テンプレート:Lang-en-short) とは、四則演算(加・減・乗・除)のひとつで、乗法の逆演算である。
二項演算で、日本では除算記号として「÷」を使う。左項の数を「被除数 (テンプレート:Lang-en-short) または「分子 (テンプレート:Lang-en-short)」、右項の数を「除数 (テンプレート:Lang-en-short) 」または「分母 (テンプレート:Lang-en-short)」と言う。演算の結果を「商 (テンプレート:Lang-en-short)」と言い、整数の除法のように「割り切れない」場合の余りを「剰余 (テンプレート:Lang-en-short)」と言う。与えられた被除数と除数から商と剰余を計算することを割り算、除算といい、計算法を指して除法という。
数値以外にも一般化すると、除法は、乗法を持つ代数的構造について「逆元を掛けること」として考えることができる。数値以外では一般には乗法が可換であるとは限らないため、除法も左右 2 通り考えられる。
整数の除法
整数 m と n に対して、m = qn を満たす整数 q が唯一つ定まるとき、m ÷ n = q, q = テンプレート:Sfrac などと表して、m は n で整除(せいじょ)される、割り切れる(わりきれる、テンプレート:Lang-en-short)あるいは n は m を整除する、割り切るなどと言う。
またこのとき、m を被除数(ひじょすう、 (テンプレート:Lang-en-short) あるいは実(じつ)といい、n を除数 (テンプレート:Lang-en-short) あるいは単に法 (ほう、テンプレート:Lang-en-short)といい、q を商 (しょう、テンプレート:Lang-en-short) と呼ぶ。またこれらを併せて m を n で割った商は q である、m の n を法とする商、あるいは法 n に関する商 (テンプレート:Lang-en-short) などとも言う。
m が n で割り切れない場合にも、剰余 (じょうよ、 テンプレート:Lang-en-short; 余り)の概念を導入して除法を(0 で割ることを除いて)整数全体での演算に拡張することができる。具体的には、整数 m を n で割ったとき、整商が q で剰余が r であることを
- m = qn + r かつ 0 ≤ r < n
が満たされることであると定義する。これは、感覚的には被除数から除数を引けるだけ引いた残りを剰余と定めているということである。「r は m の n を法とする(法 n に関する)剰余 (テンプレート:Lang-en-short) である」などのように法を明示することもある。
このような整数 q, r は、m, n によって唯一組にきまる(除法の原理)。また、この等式が成り立つことを除算記号 ÷ と記号 … を用いて
- m ÷ n = q … r
と表す。
また、 m = qn + r だが 0 ≤ r < n とは限らない r も剰余と呼ぶことがあり、 r が正の場合はこれを正剰余と呼び、負の場合は負剰余と呼ぶ。剰余としては 0 ≤ r < n を満たす r とする最小非負剰余を用いるのが一般的であり、通常、余りとは最小非負剰余のことである。 m = qn + r が −テンプレート:Sfrac ≤ r < テンプレート:Sfrac を満たす r は絶対値最小剰余と呼ぶ。
しかし、何の計算かにもよるが、剰余としてこれらのどれを採るかは選択の余地があり、計算機やコンピュータの機種により、あるいはプログラミング言語やその処理系により、実際のところまちまちである。簡単な分析とサーベイが "Division and Modulus for Computer Scientists" という文献にまとまっている[1]。
有理数の除法
上では考えている数(自然数もしくは整数)の範囲内で商を取り直し剰余を定義することにより、除法をその数の範囲全体で定義することができることを述べた。しかしよく知られているように、数の範囲を有理数まで拡張し、商のとり方に有理数を許すことにより、剰余の概念は取り除かれ、有理数の全体で四則演算が自由に行えるようになる。ただし、0 で割ることは常に許されない。
整数 m と n について m が n で整除されない場合にも、m の n を法とした商を m/n などと記して用いる(分数表記)。分数表記を用いた有理数の表示は一意的ではない。
- <math>\frac{p}{q}\div\frac{r}{s} = \frac{p \times s}{q \times r}.</math>
このような意味で四則演算が自由に行える集合の抽象化として体の概念が現れる。すなわち、有理数の全体が作る集合 Q は体である。
実数の除法
実数は有理数の極限として表され、それによって有理数の演算から実数の演算が矛盾なく定義される。すなわち、任意の実数 x, y (y ≠ 0) に対し xn → x, yn → y (n → ∞) を満たす有理数の列 {xn}n∈N, {yn}n∈N (例えば、x, y の小数表示を第 n 桁までで打ち切ったものを xn, yn とするような数列)が与えられたとき
- <math>x/y := \lim_{n\to\infty}x_n/y_n</math>
と定めると、この値は極限値が x, y である限りにおいて数列のとり方によらずに一定の値をとる。これを実数の商として定めるのである。
複素数の除法
実数の除法を用いれば複素数の除法が、任意の複素数 a + ib, c + id (ただし c と d は同時には 0 にならない)に対して
- <math>\frac{a+ib}{c+id}:=
\frac{ac+bd}{c^2+d^2} + i\,\frac{bc-ad}{c^2+d^2}
</math> として定義できる。極形式では
- <math>\frac{z}{w}=\frac{|z|e^{\text{arg}\,z}}{|w|e^{\text{arg}\,w}}:=\frac{|z|}{|w|}e^{\text{arg}\,z-\text{arg}\,w}</math>
と書ける。やはり |w| = 0 つまり w = 0 のところでは定義できない。
0で割ること
代数的には、除法は乗法の逆の演算として定義される。つまり a を b で割るという除法は
- <math>a \div b = x \iff a = b \times x</math>
を満たす唯一つの x を与える演算でなければならない。ここで、唯一つというのは簡約律
- <math>bx = by \Rightarrow x=y</math>
が成立するということを意味する。この簡約律が成立しないということは、bx = by という条件だけからは x = y という情報を得たことにはならないということであり、そのような条件下で強いて除法を定義したとしても益が無いのである。
実数の乗法において、簡約が不能な一つの特徴的な例として b = 0 である場合、つまり「0 で割る」という操作を挙げることができる。実際、b = 0 であるとき a = bx によって除法 a ÷ b を定めようとすると、もちろん a = 0 である場合に限られるが、いかなる x, y についても 0x = 0 = 0y が成立してしまって x の値は定まらない。無論、a ≠ 0 ならば a = 0x なる x は存在せず a ÷ b は定義不能である。つまり、実数のもつ代数的な構造と 0 による除算は両立しない。
ユークリッド除法と除算アルゴリズム
等分除と包含除
テンプレート:独自研究 テンプレート:未検証 日本において、初等的な教育手法として、(整数の)除法においてその「意味」として等分除と包含除の 2 種類に分類し導入をはかる、というものがある。ある量が「基準となる量」の「幾つ分」に除されるかを考えるとき、「基準となる量」を求めるのが等分除、「幾つ分」になるかを求めるのが包含除である。
等分除と包含除について東京書籍算数教科書の著者の1人、加藤明(兵庫教育大学大学院教授)は、 テンプレート:Quotation
として、 テンプレート:Quotation テンプレート:Quotation と述べているテンプレート:Sfn。なお、ここで「式の意味」なる語が出てくるが、『「3×4」の意味は「3個の集まり」が「4つ分」あること』といったような「式の意味」の定義(「立式」といった、やはりその世界のみの用語が使われる)は、日本の一部の初等教育の世界にだけ存在する「定義」である(かけ算の順序問題)。テンプレート:要出典
伝承
割算天下一を名乗った毛利重能の著書「割算書」によれば、割算の起源は以下のように記されている。 テンプレート:Quotation
関連項目
注記
- ↑ Division and Modulus for Computer Scientists(PDF、2013年11月13日閲覧)