阪急210系電車
210系電車(210けいでんしゃ)は、かつて京阪神急行電鉄→阪急電鉄に在籍した通勤形電車である。
概要
千里山線(現・千里線)用として、新京阪鉄道引き継ぎ車である10t積み有蓋電動貨車3000形(1928年梅鉢鉄工所製、1954年廃車)の電気機器・台車を流用して1956年に電動車である210形211・212が付随車である260形261を間に挟んだMc-T-Mcの3両固定編成1本がナニワ工機で製造された。
車体
車体デザインは同時期に神戸・宝塚線向けに大量に建造された車体更新車・610系とほぼ同型だが、アンチクライマがなく、前面窓止めにはHゴムが使用され、側面窓枠はマルーンに塗装されるなど、やや印象を異にした。
窓配置は210形がd1(1)D6D(1)2、260形が2(1)D6D(1)2(d:乗務員扉、D:客用扉、(1)戸袋窓)で、前面は3枚窓構成の非貫通式であった。
主要機器
極力種車の機器が再利用されている。
主電動機は端子電圧750V時定格出力56kWの非力な吊り掛け式電動機であるTDK-531-B、台車も小振りな汽車製造会社製M-12イコライザー台車で、あくまでも支線用の低出力車である。制御器は種車から流用したES-530電動カム軸式自動加速制御器、ブレーキはA動作弁によるAMA・ATA自動空気ブレーキである。
竣工時には211と212にパンタグラフがあったが212のものについては後に撤去され、261に直流1500Vの母線引き通しが実施されて211から給電されるように改められた。
運用
当初は千里山線で使用されたが、1963年頃に嵐山線に移った。
211,212は改造の上広島電鉄に譲渡され、1080形となり、宮島線において1989年まで運用された(広島電鉄移籍後の経過については広島電鉄1080形電車を参照のこと)。なお両社間における類似した譲渡としては、同形式以前に阪急500形→広電1070形が存在している。