過給機
テンプレート:出典の明記 過給機(かきゅうき)とは、スーパーチャージャーSuperchargerの和訳であり、内燃機関の吸入する空気の圧力を大気圧以上に高める装置の総称である。ジェットエンジン等にも同様の機構が圧縮機として用いられているが、このような動作に不可欠な原動機本体内のものは含まず、原動機本体とは独立した補機としての分類である。日本では特に乗用自動車用エンジンにおいて、ターボ式過給機(ターボチャージャー)を除く機械式過給機のみを指してスーパーチャージャーと呼ぶ場合も多いが、本来スーパーチャージャーは過給機全般を指す。(後述)
概要
レシプロエンジンの吸気は、ピストン下降によって大気圧よりも低くなった(一般的に負圧と言われる)シリンダー内圧によって行われる。現在では吸気バルブはカムによって強制的に開かれるが、初期のエンジンでは吸気バルブはこの負圧によって開かれ[1]、ばねの力で閉じられていた。
大気圧との差圧以上の圧力で燃焼室に吸気を送り込むという発想は古くから存在し[2]、航空機の発達の前に開発されていた。航空機の飛行時、高度が高くなるにつれて徐々に気圧(空気密度)も小さくなり、海面上高度6,000mでは約半分となる。このため、内燃機関が吸入できる空気(酸素)量も減少することになり、出力(トルク・馬力)も低下することになる。高々度での航空機の性能向上が求められた第二次世界大戦時には軍用機のエンジンには必須の装備となった。
現在の航空機はジェットエンジン(ターボプロップエンジンを含む)が中心であり、レシプロエンジンは軽飛行機が中心であるため採用例は少ない。その代わり、船舶、鉄道をはじめ、建設機械や発電機などの産業用エンジンに広く採用されている。自動車に採用されるものが一般的に知られるが、普及の度合いから見るとむしろ少数派である。
燃焼前のシリンダーに混合気を吸入し圧縮するガソリンエンジンでは、過給に伴うデトネーションが避けられないのに対し、空気のみを吸入し圧縮するディーゼルエンジンではその問題が無く、相性が特に良い。最新のディーゼルエンジンでは出力向上のみならず、エミッション(排出物)低減にも寄与している。
過給機とは元来、super charger の日本語訳であり、駆動方式や圧縮方式の区別を含まない呼称だった。駆動方式により排気タービン式過給機はエキゾーストタービンスーパーチャージャー(Exhaust turbine super charger)、ルーツブロアーなどの機械駆動式を指す機械式過給機はメカニカルスーパーチャージャー(Mechanical super charger)と呼ばれる。航空機用レシプロエンジンに見られる、遠心式コンプレッサーをエンジンのクランク出力で機械的に駆動しているものは機械式過給機であり、ターボチャージャーとは呼ばれない。
過給機を搭載したエンジンには必ず最大過給圧が設定され、ウェイストゲートバルブなどで圧力制御が行われている。最大過給圧は過給機の容量によって大きく変わる。大容量の過給機は、小容量の過給機よりも過給の立ち上がりに時間が掛かり、スロットルのレスポンスが悪い場合(ターボラグ)も見受けられる。また、過剰に大きな過給機を取り付けた場合には、過給のレスポンスが悪いばかりでなく、ウェイストゲートバルブの過給制御が追いつかずに、過給圧が設計の想定以上に掛かってしまうオーバーシュートが起こりやすくなる危険もある。
一般的に、自然吸気エンジンの場合にはシリンダー内の圧力は大気圧に近いため、排気量の値がそのまま実質排気量となる。一方、過給機を搭載したエンジンの場合、仮に最大過給圧が1barかかっている時には、シリンダー内の大気圧1barに過給圧1barが上乗せされるため、シリンダー内の気圧は2barとなる。つまり、大気圧換算で排気量の2倍の混合気が送り込まれることになる。
モータースポーツによっては、自然吸気エンジンの排気量制限と同時に、過給エンジンの最大過給圧もそのエンジンの排気量に応じて細かく制限が加えられることが多い。代表的な例が1988年のF1世界選手権で、自然吸気エンジンが上限排気量3,500ccだったのに対して、ターボエンジンは排気量1,500cc+最大過給圧2.5barに制限されていた。
過給機の代表的な種類
- スーパーチャージャー
- ラムエアインテーク(内燃機関においての過給効果は副次的範囲に留まる)
出典
関連項目
- 圧縮機
- 過給圧
- 自動車用エンジンの過給方式
- ウェイストゲートバルブ
- ブローオフバルブ
- インタークーラー
- ミスファイアリングシステム
- ブーストコントローラー
- ブーストアップ
- ブースト計