車両通行帯
車両通行帯(しゃりょうつうこうたい)とは、日本における交通法規の用語の一つ。車両が道路の定められた部分を通行するようにするために、白線などの道路標示によって示されている部分。
目次
車両通行帯の定義
道路交通法では、車両通行帯は次のように定義されている。
- 車両が道路の定められた部分を通行すべきことが道路標示により示されている場合における当該道路標示により示されている道路の部分をいう。 (道路交通法第2条第1項第7号)
車両通行帯は、都道府県・方面公安委員会が道路標示として設置することとなっている。道路管理者が設置した区画線のうち道路交通法において道路標示とみなされているのは車道中央線と車道外側線のみであるので、道路管理者が道路法に基づいて設置した車線境界線で区切られた部分は、道路交通法上の車両通行帯ではない。
- 道路標識、区画線及び道路標示に関する命令第7条
しかし、道路上の車線境界線が区画線であるのか道路標示であるのか判別はできないため、いわゆる車線が道路交通法上の車両通行帯であるかどうかを直ちに判別することは困難である。
車両通行帯と車両通行帯の区切り(車両通行帯境界線)は、通常は白色の破線で標示されるが、進路変更禁止の道路標示は黄色の実線で標示されるため、この場合は実線となる。また、リバーシブルレーンにおける変移対象の車両通行帯境界線や、一部の自転車レーンと第二通行帯間の車両通行帯境界線は白色の実線で標示される。
車両通行帯は、同一方向にある通行帯数の左から第一通行帯、第二通行帯…と数える。
車線と車両通行帯
「車両通行帯」は道路交通法で用いられている用語であり、一般には、道路構造令第2条第5号で定義されている車線や「レーン」という言葉が日常的にも使用されているが、両者の意味は厳密には異なっている。
車両通行帯とは、道路中央線より左側(一方通行の道路では道路全体)の部分について、車両が走行すべき部分をさらに細かく区切るために設けられる道路標示なので、中央線が引かれているだけのいわゆる片側1車線道路や、中央線の無い道路、一方通行で車線境界線が無い道路は、道路交通法においては「車両通行帯のない道路」と表現される。 片側2車線の道路は「同一方向に2つの車両通行帯がある道路」という。同様に片側3車線の道路は「同一方向に3つの車両通行帯がある道路」となる。一方通行の道路も同様である。
一方、道路構造令における車線の数え方は、往復(両側)の合計で数えることになっており(第5条第2項、第3項など)、一方向のみの車線数で表されることはない。従って、中央線の無い道路は1車線となり、片側1車線道路・一方通行の2車線道路はいずれも2車線と呼ばれる。
車両通行帯による通行方法
車両は、車両通行帯のある道路においては、原則としては、一般道路か高速道路かに関わりなく、第一通行帯を通行することとなっている。そして、自動車(小型特殊自動車、最高速度が著しく遅い自動車を除く)は、道路に第三通行帯以降の通行帯がある場合には、速度に応じて、第二通行帯から最右通行帯の1つ左の通行帯までの間を通行することができる。(道路交通法第20条第1項)
すなわち、
ということである。
もっとも、法第20条第1項の通則は以下の場合には適用されない。
- 追越しをする場合。追越しをする場合には、元の通行帯の1つ右側の通行帯を通行しなければならない(道路の中央から右側にはみ出すことはできない)。
- 交差点においてまたは道路外に出るために右左折する場合に、あらかじめ道路の左側端、中央または右側端に寄る場合。
- 交差点における進行方向別通行区分(後述)に従い通行する場合。
- 進路変更禁止の道路標示(黄色線)により進路変更ができないため通行する場合。
- 緊急自動車に一時進路を避譲する場合。
- 「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」。駐停車車両や道路工事等を避ける場合が含まれると解される。
- 駐車・停車が許されている場合において駐停車するため道路の左側端等に寄る場合。
- 専用通行帯、車両通行区分、特定の種類の車両の通行区分、牽引自動車の高速道路等の通行区分など、または路線バス等優先通行帯の指定がある場合(後述の専用通行帯など参照)。
恒常的に混雑・渋滞している都市部の一般道路や渋滞時の高速道路などにおいては、必ずしも法規通りに守られていない現状もあり、最右通行帯での前方車に対するあおり運転や、第1通行帯側からの追い越し等が見受けられることがある。
専用通行帯など
道路標識等によって、各々の車両通行帯につき、通行するべき車両、また通行するべきではない車両の種類を指定するもの。対象車両については、原則としては、法第20条第1項の通則は適用されない。また原則として、法第20条第1項の通則の例外となるような場合には、下記の専用通行帯などの規定もまた適用されない。
(以下、道路交通法のほか道路標識、区画線及び道路標示に関する命令に適宜基づく)
専用通行帯
専用通行帯の道路標識等(327の4、327の4の2(自転車専用のみ)、109の6)がある道路においては、道路標識等により指定された特定の種類の車両は、その指定された専用通行帯を通行しなければならない。
また、その特定の種類の車両以外の車両は、その専用通行帯以外の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自転車を含む軽車両、50cc以下のスクーターおよび小型特殊自動車はこの限りではなく、他に道路標識等による指定がなければ法第20条第1項の通則に依然従うこととなる。
路線バス専用通行帯や、二輪車専用通行帯が代表的な例である。また、近年では、自転車専用通行帯も増加している。
なお、第一通行帯として指定されている路線バス専用通行帯では、指定される特定の種類の車両に、路線バスの他に「自二輪」(=自動二輪車)を含めている場合が多い。また、第一通行帯として指定されている二輪車専用通行帯で「二輪」と指定されているものについても、「二輪」=「二輪の自動車及び原動機付自転車」と言う定義であるため、自動二輪車も対象となる。道路標示により「二輪・軽車両専用」「二輪・軽車両」と標示されている事が多い。(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第2・備考一(六)より)
専用通行帯の規制対象車両には、法第20条第1項の通則は適用されない。また、法第20条第1項の通則の例外となるような場合には、専用通行帯の規制は適用されない。
車両通行区分
車両通行区分の道路標識等(327、109の3)により車両の通行の区分が指定された道路においては、車両は、その指定された区分に応じて、その指定された車両通行帯を通行しなければならない。
専用通行帯の道路標識等との違いは、道路の左側部分の各々の車両通行帯に対して、各々、車両の種類を指定する事である。
車両通行区分の規制対象車両には、法第20条第1項の通則は適用されない。また、法第20条第1項の通則の例外となるような場合には、車両通行区分の規制は適用されない。
特定の種類の車両の通行区分
特定の種類の車両の通行区分(327の2、109の4)の道路標識がある道路においては、道路標識等により指定された特定の種類の車両は、その指定された車両通行帯を通行しなければならない。
専用通行帯の道路標識等との違いは、道路標識等により指定された特定の種類の車両以外の車両に対しては効力を及ぼさないことである。
大型貨物自動車を対象とするものが代表例である。
特定の種類の車両の通行区分の規制対象車両には、法第20条第1項の通則は適用されない。また、法第20条第1項の通則の例外となるような場合には、特定の種類の車両の通行区分の規制は適用されない。
牽引自動車の高速道路等の通行区分など
高速道路等における大型トレーラー等の重大事故の抑止のために導入された。
牽引自動車は、高速自動車国道および自動車専用道路の本線車道(車両通行帯を有する道路。以下同)においては、原則として本線車道の第一通行帯(登坂車線は含まない。以下同)を通行しなければならない。(ただし、自動車専用道路においては牽引自動車の自動車専用道路第一通行帯通行指定区間(327の6、109の8)の道路標識等がある区間に限る。また、高速自動車国道において牽引自動車の高速自動車国道通行区分(327の3、109の5)の道路標識等がある場合には、それが指定する車両通行帯を通行しなければならない。)
また、この規制に該当する場合には、法第20条第1項の通則は適用されず、また法第20条第1項の通則の例外となるような場合にかかわらず、この規制の例外は以下による。
- 最低速度に違反している車両の追越しをする場合。追越しをする場合には、元の通行帯の1つ右側の通行帯を通行しなければならない(道路の中央から右側にはみ出すことはできない)。
- 進路変更禁止の道路標示(黄色線)により進路変更ができないため通行する場合。
- 緊急自動車に一時進路を避譲する場合。
- 「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」。駐停車車両や道路工事等を避ける場合が含まれると解される。
なおこの規制における牽引自動車とは、牽引するための構造及び装置を有する大型自動車、普通自動車又は大型特殊自動車であって、牽引されるための構造及び装置を有する車両で道路運送車両法上の車両総重量が0.75トンを超えるものを牽引しているものを言う。
路線バス等優先通行帯
路線バス等優先通行帯の道路標識等(327の5、109の7)の道路標識等(327の4、109の6)がある道路においては、路線バス等以外の自動車は、路線バス等優先通行帯を通行している時に、後方から路線バス等が接近してきたときは、路線バス等の運行を妨げないように、できるだけ速やかに進路変更をしてその通行帯の外に出なければならない。また、渋滞等により路線バス等優先通行帯の外に進路変更が出来なくなる可能性がある場合には、最初からその通行帯を通行してはならない。
規制の対象外である、小型特殊自動車及び道路交通法における自動車ではない自転車を含む軽車両、原動機付自転車は、路線バスが接近しても優先通行帯の外に出る必要はない。
路線バス等優先通行帯のすぐ右側の通行帯を通行する小型特殊自動車以外の自動車は第20条第1項の通則のうち、第一通行帯を通行すべきとする通則は適用されない。
規制対象の自動車は、路線バス等優先通行帯の規制以外の他の通行帯に関する規制(第20条第1項の通則のうち第一通行帯を通行すべきとする通則を除いたもの、もしくは法第20条第1項の通則の例外となるような場合、または専用通行帯などの規制など)がある場合にはそちらに従わなければならない。また、「道路の状況その他の事情によりやむを得ないとき」(駐停車車両や道路工事等を避ける場合が含まれると解される)は規制の対象外となる。
なおこの規制における路線バス等とは、以下のものを言う。
- 一般乗合旅客自動車運送事業の自動車(いわゆる乗合バス)
- 通学・通園バス(スクールバス、専ら小学校、中学校、盲学校、聾学校、養護学校、幼稚園又は保育所に通う児童、生徒又は幼児を運送するために使用する自動車で、車両の保安基準に関する規定で定めるところにより、その旨を表示しているもの)
- 都道府県・方面公安委員会が指定した自動車
進行方向別通行区分
車両が交差点において直進、左折または右折する場合において、「進行方向別通行区分」の道路標識等(327の7、110)がある場合には、その区分に従い、あらかじめその指定された車両通行帯を通行しなければならない。道路交通法第35条第1項(指定通行区分)により規定される。
この規定には例外があり、以下の場合には上記の規制は適用されない。
- 自転車等の軽車両が交差点を通行(直進・右左折)する場合。
- 交通整理の行われている交差点において「原動機付自転車の右折方法(2段階)」(327の8)の道路標識があるか、または交差点において右左折車線(右左折通行帯)も含めて道路の片側(一方通行では道路)に3以上の通行帯がある場合に、原動機付自転車が、同法第34条第5項の規定によりその交差点で右折(二段階右折)または左折する場合。
- 「道路の損壊、道路工事その他の障害のためやむを得ないとき」。駐停車車両や道路工事等を避ける場合が含まれると解される。