第二正典
第二正典(だいにせいてん)とは、旧約聖書の中でカトリック・正教会は正典とするが、プロテスタントでは正典とせず外典や偽典として扱われている書物のこと。聖公会は正典と同格の文書として受け容れるが、教義の源泉とすることは禁じている。
経緯
ローマ・カトリックは、1546年のトリエント公会議にて正典の範囲を決定し、旧新約66巻に加え、『トビアの書』『ユディト記』『マカバイの書上』『マカバイの書下』『知恵の書』『シラ書』『バルク書』『エレミヤの手紙』の7つを正典として加えた[1]。
その後、『第1エズラ書』『マナセの祈り』『第3マカベア書』を除いて正典と同格[2]とした。
扱い
各派における扱いはさまざまであるとする新共同訳聖書の主張に対し、それらを旧約外典と呼び正典と峻別するプロテスタントの立場からは、新共同訳の主張は「正典と外典の違いについてあまりにも無知な意見である」との指摘がある[3]。
ローマ・カトリックとプロテスタントの共同のエキュメニカルな翻訳である新共同訳聖書では第二正典を含むものと含まないものの二種類が販売されているが[4]、現行の新共同訳聖書(旧約続編付き)では『第3マカベア書』を除いて、『エズラ記(ラテン語)』(『第4エズラ書』『第2エスドラス書』とも)を加えて旧約と新約の中間に配置されている。しかしヴルガータ(=カトリックのカノン)では第二正典を区別することなくマソラ由来の正典と混在させて配列しており、カトリックの翻訳聖書ではその順序を踏襲している。
ウェストミンスター信仰告白など歴史的なプロテスタント福音主義の信仰告白は聖書を66巻であると告白しており、プロテスタントである福音派の立場からは新共同訳聖書が「聖書の外典を続編として加え」たことについて、「読者にはその区別がよくわからないようです。」[5]、「カトリック教会も受け入れない外典が付け加えられている」[6]と指摘されている。
一覧
七十人訳聖書は写本によって多少の異同はあるが、後のマソラ写本39巻に加えて下記の書物を含んでいる。
- 第1エズラ書
- マカバイ記1(第1マカベア書)
- マカバイ記2(第2マカベア書)
- トビト記(トビト書)
- ユディト記(ユディト書)
- 知恵の書(ソロモンの知恵)
- シラ書(ベン・シラの知恵)
- バルクの書(バルク書)
- エレミヤの手紙
- マナセの祈り
- 『歴代誌』下33章。
- ダニエル書補遺
- 正典の『ダニエル書』に「アザルヤの祈りと三人の若者の賛歌」「スザンナ」「ベルと竜」を加える。
- エステル記
- ギリシャ語 - 正典にない6ヶ所の付加部分がある。
- 第3マカベア書
注:()外のものがカトリック表記で、プロテスタントと同じ場合は省略。
脚注
- ↑ トリエント公会議では、『第1エズラ書』『第2エズラ書』『マナセの祈り』が認可されなかった。
- ↑ ただしカノンは七十人訳聖書のラテン語翻訳である聖ヒエロニムス訳『ヴルガータ』。
- ↑ 尾山令仁著『ヨハネが受けたキリストの啓示』羊群社 p.323-325
- ↑ 含むものは『聖書 新共同訳 旧約聖書続編つき』というタイトルである
- ↑ 泉田昭著『日本における聖書とその翻訳』日本聖書刊行会p.33
- ↑ 尾山令仁著『聖書翻訳の歴史と現代訳』p.24