監査委員
監査委員(かんさいいん)は、地方公共団体に設けられた財務や事業について監査を行う機関である。
地方公共団体の執行機関のひとつで、地方公共団体の財務や事業について監査を行う機関である。監査委員は複数いるが、合議制でなく、委員一人一人の独任制であるため、監査委員会とは言わない。
監査委員の詳細については、第7章第3節第5款(第195条から第202条)によって次の通り定められている。
- 地方自治法についてこの節では、条数のみ記載する。
人事
地方公共団体の長が、議会の同意を得て、以下から委員を選任する(第196条第1項・第197条)。
- 人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた見識を有する者(任期は4年)
- 議員(任期は議員の任期)
定数は法律で以下のように規定されている。また定数は条例で増加できる(第195条、第196条)
監査委員は、衆議院議員、参議院議員、検察官、警察官、収税官吏、普通地方公共団体における公安委員会委員と兼ねることができない(第141条第1項・第166条第1項・第201条)。
以下に該当する者は監査委員となることができない(第164条・第198条の2・第201条、公職選挙法第11条・第11条の2)。在職中に以下に該当した場合は監査委員を失職する(第164条・第198条の2・第201条)。
普通地方公共団体の議会は、監査委員が以下に該当する時は、議決により罷免することができる。この場合においては、議会の常任委員会又は特別委員会において公聴会を開かなければならない。委員は、この規定による場合を除くほか、その意に反して罷免されることがない(第197条の2)。
- 心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認める時
- 監査委員に職務上の義務違反その他監査委員たるに適しない非行があると認める時
また当該自治体の有権者の3分の1以上[1]の署名を集めると、監査委員のリコールを地方首長に請求できる(第86条)。請求が有効であれば、地方首長が地方議会に付議し、議員の3分の2の定足数で4分の3以上の多数で同意があればリコールされる(第87条第1項)。リコールの請求は、就任から6ヶ月間及び地方議会のリコール採決日から6ヶ月間はリコールの請求をすることができない(第88条第2項)。
職務
監査委員は、当該地方公共団体の執行する事務のうち政令で定めるものを除いたもの、及び当該地方公共団体が補助金等の名目で財政援助を行なっている団体の執行する事務について、その手続きが適正であるか、業務の存続が適当であるかなどといった点について、監査を行なう。事務にあたっては、全ての都道府県及び条例で定めた市においては監査委員事務局の職員である書記が補佐を行なう。
監査委員の行う監査・審査・検査の内容と根拠法令は以下のとおりである。
- 住民の直接請求による事務監査(第75条1項)
- 議会の要求による事務監査 (第98条2項)
- 財務監査(定期監査) (第199条1項、4項)
- 財務監査(随時監査) (第199条1項、5項)
- 行政監査 (第199条2項)
- 主務大臣若しくは知事又は長の要求監査 (第199条6項)
- 財政援助団体等監査 (第199条7項)
- 長の要求 (第199条7項)
- 決算審査 (第233条2項)
- 月例現金出納検査 (第235条の2、1項、3項)
- 指定金融機関等の監査 (第235条の2、2項、3項)
- 基金運用審査 (第241条5項、6項)
- 住民監査請求 (第242条1項)
- 職員の賠償責任監査 (第243条の2第3項)
- 健全化判断比率審査 (地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条第1項)
- 資金不足比率審査 (地方公共団体の財政の健全化に関する法律第22条第1項)
監査委員は、包括外部監査人が、監査のため必要があると認めるときは、協議して、関係人の出頭を求め、若しくは関係人について調査し、若しくは関係人の帳簿、書類その他の記録の提出を求め、又は学識経験を有する者等から意見を聴かせることができる(第252条の38)。
ただし、監査委員は以下については、監査することができない(第199条の2)。
代表監査委員
監査委員は、その定数が3人以上の場合にあっては識見を有する者のうちから選任される監査委員の1人を、2人の場合にあっては識見を有する者のうちから選任される監査委員を代表監査委員としなければならない(第195条の3)。
代表監査委員は以下のことを担当する。
- 監査委員に関する庶務
- 監査委員の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に関する事務
- 住民訴訟に関する事務を処理
- 代表監査委員又は監査委員の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟において、代表監査委員が当該普通地方公共団体を代表すること
脚注
- ↑ 地方自治法等の一部を改正する法律(平成14年法律第4号、2002年3月30日公布)により「その総数の3分の1(その総数が40万を超える場合にあつては、その超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上」(原文漢数字)と改正されている。