渡辺京二

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テンプレート:複数の問題 渡辺 京二(わたなべ きょうじ、1930年8月1日 - )は、熊本市在住の思想史家歴史家評論家京都府出身。碩台小学校、大連一中、第五高等学校を経て、法政大学社会学部卒業。書評紙日本読書新聞編集者、河合塾福岡校講師を経て、河合文化教育研究所主任研究員。2010年、熊本大学大学院社会文化科学研究科客員教授に就任。

経歴

  • 活動写真の弁士であった父に従い、少年期の7年間を中国大連で過ごす。1947年(昭和24年)、大連から日本へ引揚げ、熊本市の縁者のもとに身を寄せる。
  • 1948年(昭和23年)に日本共産党に入党するが、翌1949年(昭和24年)結核を発症、結核療養所に入所し、1953年(昭和28年)までの約四年半をそこで過ごした。
  • 1956年(昭和31年)、ハンガリー事件により共産主義運動に絶望、離党する。
  • 1998年、近世から近代前夜にかけてを主題とし、幕末維新に来日した外国人たちの滞在記を題材として、江戸時代明治維新により滅亡した一個のユニークな文明として甦らせた『逝きし世の面影』[1]を公表した。
  • 2010年には、北方における日本・ロシア・アイヌの交渉史をテーマとした『黒船前夜』を公表した。

受賞

人物

  • 初期の代表作『小さきものの死』『神風連とその時代』『日本コミューン主義の系譜』等において、いわゆる熊本神風連の乱や天皇制ファシズム二・二六事件等、日本近代における大衆運動や諸暴動を分析、その原因を、急激な近代化・西洋化により日本の基層民が抱くに至った西欧型市民社会に対する違和と、伝統的共同体の解体により失われた共同性への幻視的な希求に求めた。
  • 思想的主著と言うべき『なぜいま人類史か』は、イヴァン・イリイチコンラート・ローレンツらを手がかりに、現代社会を世界=コスモスとの親和感を喪失した奇形的文明と規定した、極めて反時代的な思索の書である。
  • 人間を原子論的個人に解体する近代文明に対し根底的な問題意識を持つが、一方でその出現を一箇の人類史的必然として受け止めるとともに、近代が人類にもたらした恩恵の大きさを基本的に肯定し、左翼イデオロギーからする倫理的かつ性急な近代批判には同調しない姿勢を貫いている。
  • 石牟礼道子とは、渡辺が編集者時代からの長年に渡る同志友人である。

雑誌への寄稿

  • 総合情報誌『選択』誌上で、『追想 バテレンの世紀』を長期連載中である。
  • 熊本県に本拠を置く人間学研究会が発行する同人誌『道標』にもエッセイ、評論等を寄稿することがある。

評価

  • 優れた評伝作家でもあり、『北一輝』『評伝宮崎滔天』は、両者を近代文明と格闘した特異な思想家として位置付け、斯界の高い評価を得ている。
  • 渡辺京二の『逝きし世の面影』について西部邁(評論家)は2013年に次のように述べた。「渡辺京二さんが『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)という本で面白いことをやっていまして、幕末から明治にかけて日本を訪れたヨーロッパ人たちの手紙、論文、エッセイその他を膨大に渉猟して、当時の西洋人が見た日本の姿――いまや失われてしまった、逝きし世の面影――を浮かび上がらせているのです。/この本を読むと、多くのヨーロッパ人たちが、この美しき真珠のような国が壊されようとしていると書き残しています。」[2]

著書

単書

  • 『熊本県人 日本人国記』 新人物往来社 1973年/言視舎(改訂版) 2012年
  • 『小さきものの死 渡辺京二評論集』 葦書房(福岡) 1975年
  • 『評伝宮崎滔天』 大和書房 1976年、新版1985年/書肆心水 2006年
  • 神風連とその時代』 葦書房(福岡) 1977年/洋泉社MC新書 2006年/洋泉社新書y 2011年
  • 北一輝』 朝日新聞社 1978年/朝日選書 1985年/ちくま学芸文庫 2007年-毎日出版文化賞受賞
  • 『日本コミューン主義の系譜 渡辺京二評論集』 葦書房(福岡) 1980年
  • 『地方という鏡』 葦書房(福岡) 1980年
  • 『案内 世界の文学』 日本エディタースクール出版部 1982年
    • 改題 『娘への読書案内 世界文学23篇』 朝日新聞社〈朝日文庫〉 1989年 
    • 再改題 『私の世界文学案内 物語の隠れた小径へ』 ちくま学芸文庫 2011年
  • 『ことばの射程』 葦書房(福岡) 1983年
  • 『なぜいま人類史か』 葦書房(福岡) 1986年/洋泉社MC新書 2007年/洋泉社新書y 2011年
  • 『逝きし世の面影』 葦書房(福岡) 1998年/平凡社ライブラリー 2005年-和辻哲郎文化賞受賞
  • 『渡辺京二評論集成I 日本近代の逆説』 葦書房(福岡) 1999年
  • 『渡辺京二評論集成II 新版小さきものの死』 葦書房(福岡) 2000年
  • 『渡辺京二評論集成III 荒野に立つ虹』 葦書房(福岡) 1999年
  • 『渡辺京二評論集成IV 隠れた小径』 葦書房(福岡) 2000年
  • 『日本近世の起源 戦国乱世から徳川の平和へ』 弓立社 2004年/洋泉社MC新書 2008年/洋泉社新書y 2011年
  • 『江戸という幻景』 弦書房 2004年
  • 『アーリイモダンの夢』 弦書房 2008年
  • 『黒船前夜~ロシア・アイヌ・日本の三国志』 洋泉社 2010年-大佛次郎賞受賞
  • 『渡辺京二コレクション〔1〕 史論 維新の夢』 ちくま学芸文庫 (小川哲生編、2011年6月)-編者は大和書房・洋泉社での元担当編集者。
  • 『渡辺京二コレクション〔2〕 民衆論 民衆という幻像』 ちくま学芸文庫 (小川哲生編、2011年7月)
  • 『未踏の野を過ぎて』 弦書房 2011年
  • 『細部にやどる夢 私と西洋文学』 石風社 2011年
  • 『ドストエフスキイの政治思想』 洋泉社新書y 2012年
  • 『もうひとつのこの世 石牟礼道子の宇宙』 弦書房 2013年
  • 『近代の呪い』 平凡社新書、2013年10月-講演録
  • 『万象の訪れ わが思索』 弦書房、2013年11月
  • 『幻影の明治 名もなき人びとの肖像』 平凡社、2014年3月
  • 『無名の人生』文春新書、2014年8月

訳書

  • イヴァン・イリイチ 『コンヴィヴィアリティのための道具』(渡辺梨佐との共訳)日本エディタースクール出版部、1989年

共著

  • 『近代をどう超えるか-渡辺京二対談集』 弦書房(福岡) 2003年、有馬学中野三敏ら全7名
  • 『女子学生、渡辺京二に会いに行く』(津田塾大学三砂ちづるゼミとの共著)亜紀書房、2011年
  • 『日本の国土 日本人にとってアジアとは何か』(共著)有斐閣 1982年

脚注

  1. 小谷野敦は、同書の徳川時代の性に関する箇所を厳しく批判しているが(『なぜ悪人を殺してはいけないのか』新曜社)、渡辺は同書の新版あとがきで、「案の定こういった反論を予測していた」と述べ、直接小谷野の名を挙げて反論はしなかったが、ダークサイド(暗黒面)のない社会などなく、それでも江戸文明が持つのびやかさは今日でも注目に値すると記した。(新版が平凡社ライブラリーのことなら、刊行は2005年9月、小谷野論文の初出は『比較文学研究』2005年11月なので、小谷野論文を読んで書かれたものではない)なお同書新版は、数年間で十数版を重刷した。
  2. テンプレート:Cite book