標準模型
テンプレート:Redirect テンプレート:Amboxテンプレート:DMC テンプレート:Amboxテンプレート:DMCA テンプレート:標準模型 標準模型(ひょうじゅんもけい、テンプレート:Lang-en、略称: SM)とは、素粒子物理学において、強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用の3つの基本的な相互作用を記述するための理論のひとつである。標準理論(ひょうじゅんりろん)または標準モデル(ひょうじゅんモデル)とも言う。
目次
概要
標準模型は、強い相互作用についての量子色力学、弱い相互作用と電磁相互作用についてのワインバーグ=サラム理論をあわせた SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y ゲージ対称性に基づいて、ヒッグス機構による真空の対称性の破れとフェルミオンの質量獲得、アノマリーの相殺の要請によるフェルミオンの世代構造と世代間混合とCP対称性の破れについての小林・益川理論などの理論の総称である[1]。 標準模型は特殊相対性理論と整合する量子論として、場の量子論的方法で記述されている。
標準模型の素粒子
標準模型の素粒子は力を媒介するスピン1のゲージ粒子、対称性を破るスピン0のヒッグス粒子、物質を構成するスピン1/2のフェルミオンからなる。
ゲージ粒子
粒子名 | 記号 | ゲージ対称性 |
---|---|---|
グルーオン | G | SU(3)c |
Wボソン | W | SU(2)L×U(1)Y |
Zボソン | Z | |
光子 | A |
標準模型はヤン=ミルズ理論に従い、それぞれのゲージ群に対応するゲージ粒子が存在する。
SU(3)Cに対応するゲージ粒子はグルーオンと呼ばれている。
SU(2)LとU(1)Yに対応するゲージ粒子に関しては、ヒッグス機構によりゲージ場の混合と質量の獲得が起こるので、多少複雑な様相を呈する。 ウィークアイソスピン SU(2)L の非対角成分は質量を獲得してWボソンとなり、対角成分とウィークハイパーチャージ U(1)Y は交じり合って、質量を獲得するZボソンと質量を獲得しない光子になる。 テンプレート:-
フェルミオン
粒子名 | 記号 | 表現 |
---|---|---|
クォーク | Q | (3,2)1/6 |
上系列反クォーク | U | (3*</sub>,1)-2/3 |
下系列反クォーク | D | (3*</sub>,1)1/3 |
レプトン | L | (1,2)-1/2 |
反荷電レプトン | E | (1,1)1 |
フェルミオンは強い相互作用をするクォークと、強い相互作用をしないレプトンに分けられる。 さらに、クォークとレプトンは、それぞれ左手型(テンプレート:En)粒子と右手型(テンプレート:En)粒子に分類することができる。 標準模型における左手型粒子は電弱相互作用のウィークアイソスピンを持つが、右手型粒子は持たない。 そのため、左手型粒子と右手型粒子ではゲージ相互作用の形が異なり、標準模型はゲージ相互作用に関してカイラルな理論となっている。 また、この性質のために、電弱対称性がヒッグス機構によって破れないかぎり、全てのクォークとレプトンは質量を持つことができない。 全てのクォークと荷電レプトンは、ヒッグス機構によって質量を獲得する。ニュートリノは標準模型の範囲内では質量を持つことはない。
フェルミオンは左手型クォークと左手型レプトン、右手型アップクォークと右手型ダウンクォーク、右手型荷電レプトンで世代と呼ばれるグループを構成する。 一般に、ゲージ相互作用を含む模型については、カイラルアノマリーと重力アノマリーが相殺されている必要があるが、 世代を構成するフェルミオンの間でアノマリーが相殺される構成になっている。 標準模型は、3世代のクォークとレプトンが存在する。 小林・益川理論によると、フェルミオンの混合によりCP対称性が破れる為には3世代以上のフェルミオンが必要である。 実際に、フェルミオンの混合に起因するCP対称性の破れは実験で確認されており、標準模型による予言と良く一致することが確かめられている。 テンプレート:-
ヒッグス粒子
標準模型では、ヒッグス機構により電弱対称性が自発的に破れる。 一般に場の揺らぎは粒子として解釈されるが、ヒッグス場の4つある揺らぎの自由度のうち3つは、WボソンとZボソンが質量を持つことに伴い、その縦波成分として吸収される。 残りの1自由度は、スピン0のスカラー粒子であるヒッグス粒子としてあらわれる。 2012年7月にジュネーブ郊外の欧州原子核研究機構(CERN)で行われているLHC実験により新粒子の発見が発表された[2]。 この新粒子の性質はヒッグス粒子と良く一致しているとされている。ヒッグス粒子の生成および崩壊の様子を詳しく調べることにより、精度を高める実験が継続中である。 テンプレート:-
歴史
- 1928年 - ポール・ディラックが相対論的量子力学により、電子の反粒子の存在を予言。(ディラック自身はこの粒子を陽子と解釈しようとした。)
- 1931年 - ヴォルフガング・パウリがニュートリノの存在を予言。
- 1932年 - カール・デイヴィッド・アンダーソンにより、電子の反粒子である陽電子が発見される。
- 1948年 - 朝永振一郎、リチャード・P・ファインマン、ジュリアン・シュウィンガーによる量子電磁力学の繰り込みの発表。
- 1954年 - 楊振寧、ロバート・ミルズによりヤン・ミルズ理論が発表される[3]。
- 1956年 -
- 1957年 - 呉健雄らのグループがコバルト60のベータ崩壊においてパリティが破れていることを観測する[6]。
- 1964年 -
- 1967年 - スティーブン・ワインバーグにより後のワインバーグ=サラム理論が発表される[10]。(1968年にアブドゥッサラームも独立に発表[11]。)
- 1971年 - ヘーラルト・トホーフト、マルティヌス・フェルトマンがヤン・ミルズ理論の繰り込みに成功[12][13]。
- 1973年 -
- 小林誠と益川敏英により小林・益川理論の提唱される[14]。
- デイビッド・グロスとフランク・ウィルチェック[15]、H. デビッド・ポリツァー[16]による漸近的自由性の発見
- ガーガメル実験(en:Gargamelle)により、中性カレント反応(Zボゾンを介した相互作用)が発見される。
- 1974年 - サミュエル・ティンらのグループ[17]、バートン・リヒターらのグループ[18]により、独立にジェイプサイ中間子(チャームクォーク)が発見される。(11月革命)
- 1977年 - レオン・レーダーマンらのグループにより、ウプシロン中間子(ボトムクォーク)が発見される[19]。
- 1983年 - カルロ・ルビア、シモン・ファンデルメールらのグループにより、Wボソン[20]、Zボソン[21]の発見。
- 1995年 - テバトロン実験により、トップクォークが発見される[22][23]。
- 2012年 - LHC実験によりヒッグス粒子が発見される[24][25]。
未解決の問題
標準模型は2014年現在までに行われた素粒子物理学に関する実験結果をほとんど全て矛盾することなく説明することができているが、 その一方で、理論的または実験・観測的観点から解決すべき問題をいくつか抱えている。 このことは標準模型を超えた物理(en:Physics beyond the Standard Model)の存在を示唆する。 この節では標準模型において未解決の問題を列挙する。
重力の量子化
テンプレート:See 標準模型は基本的な相互作用とされる四つの力のうち、電磁気力、弱い力、強い力の三つをヤン=ミルズ理論に基づき量子論的に記述することに成功している。 しかし、残りの一つである重力についてはその記述を欠いている。言い換えれば、重力を媒介するとされる重力子は標準模型の粒子のリストに含まれていない。 これは、標準模型の基礎的な枠組みとなっている場の量子論に重力を組み込むことが非常に困難であるとされているからである。 重力を量子論的に扱うことができる枠組みの候補としては、超弦理論、ループ量子重力理論などが挙げられる。
大統一理論
テンプレート:See 標準模型が記述する3つの力のうち、強い力は、電磁気力と弱い力とは別のゲージ対称性により記述されている。このため、3つの力を統一的に理解することは難しい。 しかし、電磁気力を記述するU(1)ゲージ対称性が<math>SU(2)_L \times U(1)_Y</math>ゲージ対称性がヒッグス機構により自発的に破れた結果あらわれたものであるように、 標準模型のゲージ対称性<math>SU(3)_C \times SU(2)_L \times U(1)_Y</math>もより大きなゲージ対称性が自発的に破れた結果あらわれたものである可能性が指摘されている。 この可能性に基づいた理論は大統一理論と呼ばれている。 <math>SU(3)_C \times SU(2)_L \times U(1)_Y</math>のおおもととなった大統一理論のゲージ対称性にはいくつか候補があるが、SU(5)、SO(10)、<math>E_6</math>などが提案されている。 強い力と電弱相互作用を統一的に記述する大統一理論では、クォークをレプトンに変換するような相互作用が可能になる。 具体的な現象としては陽子崩壊が予言される。カミオカンデなどの実験で陽子崩壊を実証するための実験が続けられているが、2014年現在、実験的証拠は得られていない。
階層性問題
テンプレート:See 標準模型は場の量子論に基づいた模型であるため、物理的に意味のある量を計算するために繰り込みと呼ばれる操作が必要となる。 このことと関連して、標準模型ではヒッグス機構による電弱対称性の自発的破れの大きさを観測事実と合わせるために、理論のパラメーターを非常に精密に調整する必要がある。 この問題は、プランクスケール(1019GeV)と電弱対称性が破れるスケール(102GeV)の間に大きな隔たりがあることに起因しており、階層性問題と呼ばれている。 この問題を解決する模型として提案されているものはいくつかあるが、代表的なものの一つが超対称性模型である。
強いCP問題
テンプレート:See 中性子の電気双極子モーメントの測定により、その大きさは2014年現在の観測精度を下回る値であることが分かっている。 このことは、標準模型の弱い相互作用以外の部分でCP対称性がよく成り立っていることを示しており、 強い相互作用に関するパラメーターとクォークの湯川行列の位相がCP対称性がよく成り立つような値に設定されていることを意味している。 標準模型ではこの2つのパラメーターは特に関連性の無いものであり、精密に調整されているという状況は不自然である。 この不自然さの問題は何らかの機構によって解決されるべきであると考えられており、強いCP問題と呼ばれている。 解決策の一つとして有力視されているものが、Peccei-Quinn機構(en:Peccei–Quinn theory)である。この機構によりアクシオンと呼ばれる新しい粒子の存在が予言される。
世代数の謎
3世代のフェルミオンが存在する理由は未だ不明である。
ニュートリノ振動
テンプレート:See 1998年に神岡鉱山に設置されたスーパーカミオカンデによりニュートリノ振動が発見された[26]が、これは質量を持ったニュートリノが存在することの証明となっている。 標準模型ではニュートリノの質量は厳密に0であるため、この実験結果は標準模型には何らかの修正が必要であることを示すものの一つとして重要である。 ニュートリノに質量を与えるための標準模型の拡張はいくつか提案されており、代表的なものの一つがシーソー機構(en:Seesaw mechanism)である。
暗黒物質
テンプレート:See 現在の宇宙のエネルギー密度の約1/4を暗黒物質が占めていることが明らかになっているが、 標準模型には暗黒物質の候補となる粒子が存在しない。そのため、暗黒物質の正体を素粒子に求める場合は標準模型の拡張が必要である。
バリオン数の非対称性
標準模型に含まれるフェルミオンは物質と反物質の2種類に分類される。 物質と反物質はほぼ対等な存在であるが、我々の住む宇宙では物質の量が反物質に比べて圧倒的に多い。 この非対称性はバリオン数の非対称性と呼ばれており、宇宙が誕生して間もない頃に何らかのメカニズムで生み出されたと考えられている。 標準模型の枠内でこの非対称性を生み出すことは困難であることが知られており[27]、標準模型を超える物理の存在を示唆していると考えられている。
脚注
- ↑ 南部 et al. 3章(牧二郎 著)
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参考文献
- 論文
- 参考書籍
関連記事
外部リンク
- 電子・陽電子リニアコライダー計画
- The Review of Particle Physics(素粒子物理学の総論) - 2012年までの素粒子の実験と理論をまとめた論文(英語)
- 素粒子の標準模型 - 日本語による解説