指数関数

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底が テンプレート:Math である指数関数(グラフの 1 マスは テンプレート:Math

指数関数(しすうかんすう、exponential function )とは、冪乗における指数変数として、その定義域を主に実数の全体へ拡張して定義される初等超越関数の一種のこと。

対数関数逆関数であるため、逆対数 (テンプレート:En ) と呼ばれることもある[1]

指数関数は次のように表記される。

<math>b^x.</math>

テンプレート:Mvar を指数関数の (テンプレート:En ) といい、テンプレート:Mvar を指数という。特に、底がネイピア数である場合 (テンプレート:Math)、

<math>\mathrm{e}^x,\,\exp\,x,</math>

と二種類の記法がある。 後者の記法を使って一般の底の指数関数を表すには、自然対数(底を テンプレート:Math とする対数関数)を用いる。

<math>b^x = \exp(x \ln b).</math>

たとえば テンプレート:Math の場合には、次のような表記ができる。

<math>{\left(\frac{1}{2}\right)}^x = \exp{\left(x \ln \frac{1}{2}\right)} = \exp(-x \ln 2) .</math>

特に断りがない場合、指数関数といえばネイピア数であるものを指す。また解析学の立場では、底がネイピア数でないものは指数関数とは呼ばないことが多い。このことは指数関数をどのような性質から定義するかによる。

定義

正の実数 テンプレート:Mvar を底とする指数関数 テンプレート:Mvar は、次の公理から一意に定まる関数として定義される。

指数関数の値 テンプレート:Mvar において、指数 テンプレート:Mvar自然数(あるいは有理数)であるとき、これは テンプレート:Mvar冪乗に一致する。冪乗を適当な方法を用いて拡張することにより、指数関数を定義することも可能である。

微分

底がネイピア数 テンプレート:Math である指数関数 テンプレート:Math導関数テンプレート:Math 自身となる。

<math>\frac{\mathrm d}{\mathrm{d}x}\mathrm{e}^x = \mathrm{e}^x.</math>

解析学においてはこの性質を満たす関数として指数関数を定義する。つまり、指数関数 テンプレート:Math とは、

  1. <math>\exp(0) = 1,</math>
  2. <math>\left(\frac{\mathrm d}{\mathrm{d}x} - 1\right)\exp(x) = 0.</math>

を満たす関数のことである。この関数は代数的な定義で示される性質を満たし、両者は一致することが示される。

一般の指数関数 テンプレート:Mvar の導関数は自然対数 テンプレート:Math を用いて、合成関数の微分公式より、

<math>\frac{\mathrm d}{\mathrm{d}x}a^x = \frac{\mathrm d}{\mathrm{d}x}\mathrm{e}^{x \ln a}

= \frac{\mathrm{d}(x \ln a)}{\mathrm{d}x}\frac{\mathrm d}{\mathrm{d}(x \ln a)}\mathrm{e}^{x \ln a} = (\ln a)a^x</math> となる。テンプレート:Math とすれば テンプレート:Math なので最初の公式に戻る。

一般化

複素変数への拡張

テンプレート:Math の解析的な性質より、これをマクローリン展開すると、

<math>\exp x = \sum^{\infin}_{n=0}\frac{1}{n!}x^n</math>

となることから、定義域を、任意の実数から複素数全体へと拡張することができる。

テンプレート:Math を、テンプレート:Math と書き、複素指数関数 (テンプレート:En ) と呼ぶ。ここで テンプレート:Mvar虚数単位である。 テンプレート:Math のマクローリン展開より、

<math>\operatorname{cis}x = \sum^{\infin}_{n=0}(-1)^n\frac{1}{(2n)!}x^{2n} + i\sum^{\infin}_{n=0}(-1)^n\frac{1}{(2n+1)!}x^{2n+1}</math>

と書けるが、右辺の第 1 項は テンプレート:Math のマクローリン展開、第 2 項は テンプレート:Math のマクローリン展開に テンプレート:Mvar を乗じたものに他ならない。即ち、テンプレート:Math であり、これが テンプレート:Math の名前の由来である。複素指数関数は、三角関数に関する和として表現できるのである。

任意の複素数 テンプレート:Mvar は、テンプレート:Math と表現できるから、

<math>\exp z = \exp(x + iy) = \exp x\cdot \exp iy = \exp x(\cos y + i\sin y)</math>

これこそが、指数関数の定義域を複素数全体に拡張したものである。この逆関数として、複素変数の対数関数を定義することもできる。こうして定義される対数関数 テンプレート:Math

<math>\ln z = \int_1^z \frac{\mathrm{d}z'}{z'}</math>

として定義される複素関数 テンプレート:Math と一致する。

一般の複素数 テンプレート:Mvar を底とし、複素変数 テンプレート:Mvar を指数とする指数関数は、複素変数の対数関数 テンプレート:Math に対して、テンプレート:Math が定義される限りにおいて

<math>\alpha^z = e^{z\,\ln \alpha}</math>

とおくことにより定義することができる。これは テンプレート:Math の多価性により一般には多価関数となる。ただし、テンプレート:Math については テンプレート:Math のこととは解さず、テンプレート:Math と理解するのが一般的であるようである。

複素変数への拡張は他にも方法があり、マクローリン展開を用いずに微分の自己再帰性と初期条件だけを与えた正則関数を考えても同じ結論を得る事ができる。

行列の指数関数

テンプレート:Main 上記のテイラー展開テンプレート:Mvar に任意の正方行列 テンプレート:Mvar を代入することにより、行列の指数関数 テンプレート:Math が定義される。

とくに、テンプレート:Mvarテンプレート:Mvar 次の一般線型群 テンプレート:Mathリー環 テンプレート:Math すなわち テンプレート:Mvar 次の実正方行列全体を亘るとすれば、この指数関数

<math>\exp: \mathfrak{gl}(n, \mathbb{R}) \to {GL}(n, \mathbb{R})</math>

はリー環からリー群への指数写像の一つの例を与える。

二重指数関数

テンプレート:Main 二重指数関数には 2 種類の定義がある。

  1. 2 つの指数関数の項からなる関数。<math>f(x) = \exp(ax) - \exp(bx)</math> など。
  2. <math>f(x) = a^{b^x}</math> の形で表現される関数。

出典

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関連項目

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  1. MSDN の Exp 関数の解説