忽然と客の消えるブティック
忽然と客の消えるブティック(こつぜんときゃくのきえるブティック)は、都市伝説の一つ。
都市伝説の例
とあるブティックの試着室に入った女性が、いつまで待っても出てこない。一緒に来た夫や恋人、友人が店員に尋ねても、「そんな客は来なかった」と返されてしまい、結局行方不明になってしまう、というもの[1][2]。
行方不明者のその後には、様々なバリエーションがある。
- 臓器売買:闇組織の関与が示唆される[2]。
いずれも海外旅行中の事件とされることが多い。
この都市伝説は「オルレアンの噂」と呼ばれる事件が発端とされる。
1981年に新婚旅行先のローマのブティックの試着室で日本人花嫁が消えて、スペインの裏町で両手足を切断された状態で発見されたという話があり、それを追跡した『週刊読売』が外務省に確認したところ、そのような話はないとのことであった[4]。
オルレアンの噂
1969年5月、フランスのオルレアン地方で、ブティックに入った女性が次々と行方不明になるという噂が流れる。疑惑の店舗は6軒で、その全てをユダヤ人が経営している。行方不明になった女性は中近東と南米へ売春婦として売られていった[5]。
実際にはそんな事件は発生していなかったが、民衆はユダヤ人に敵意を示し、暴動寸前の事態となるが、3か月後に反ユダヤ主義のデマだと新聞が断定すると事態は鎮静化に向かった。しかし各地に噂として飛び火して、1970年代のパリ在住の日本人の間でも語り継がれていたという。パリへの旅行者を通じて、日本にも伝播していったものと見られる[5]。
やがて失踪するブティックもパリ中心だったものが、イタリアになったり、香港など東南アジアで失踪するというパターンが急増していった[6][7]。
人が忽然と消える話は、日本の神隠しをはじめ、世界中に古来から存在するが、その舞台がブティックに限定されたのは、この事件の影響であると考えられる[1][2]。
参考文献
- エドガール・モラン『オルレアンのうわさ―女性誘拐のうわさとその神話作用』みすず書房、1973年 ISBN 4622049074