山尾悠子

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山尾悠子(やまお ゆうこ、1955年3月25日 - )は、小説家幻想文学作家。その短い活動期間と難解な作品で、長い間カリスマ性をもって幻・伝説の作家と呼ばれてきたが、近年になって執筆活動を再開している。

経歴

1955年、岡山市生まれ。本名非公開。同志社大学文学部国文科卒。 大学在学中の1973年に「仮面舞踏会」を『SFマガジン』(早川書房)のSF三大コンテスト小説部門(のちのハヤカワ・SFコンテスト)に応募して選外優秀作に選ばれ、1975年11月号の「女流作家特集」で掲載されデビューする。

その後、山陽放送に勤務のかたわら『SFマガジン』、『奇想天外』(奇想天外社)、『SFアドベンチャー』(徳間書店)、『小説ジュニア』(集英社)等の雑誌に 作品を発表。1979年に退職して執筆に専念し、1980年には書き下ろしの長編第1作『仮面物語』を上梓するが、1985年以降は作品発表を休止し、徐々に伝説的な作家と見なされていく。

十数年の休止期間を経て、1999年に『幻想文学』第54号(アトリエOCTA)に「アンヌンツィアツィオーネ」を発表して復活。2000年に、単行本未収録作も含む当時までの作品を集めた『山尾悠子作品集成』を国書刊行会から刊行。2003年9月には2作目の書き下ろし長編『ラピスラズリ』を発表した。

2004年には金原瑞人らと、ジェフリー・フォード『白い果実』を翻訳した。

作品

『SFマガジン』で作品を発表していたためもあり、SF作家として認知され斯界にファンも多く、ある種未来的・異世界的な意匠が頻出するが、本質は幻想文学である。荒巻義雄は「安部公房倉橋由美子などの幻想文学の戦列に繋がるもの」と述べている(早川書房『夢の棲む街』解説)。

澁澤龍彦と、その紹介した作家達からの影響は大きく、同時にこの世代の作家のトップランナーでもあったことは、『山尾悠子作品集成』の栞に寄せた佐藤亜紀野阿梓小谷真理の賛辞からも読み取れる。

作品は難解。精密に構築された幻想的な架空の世界を舞台に、寓意的な事件が順次起きてゆくスタイルのものが多い。硬質な文体による緊密な描写が、幾何的で鮮烈なヴィジョンを生み出す、ひとことで言えば「言葉で構築された象徴派絵画」のような小説であり、それは本人もモンス・デシデリオピラネージデルヴォーキリコ等の「絵画から小説のイメージを得ることが割合多い」(三一書房『夢の棲む街/遠近法』後記)と述べていることからも頷ける。代表作の一つである、《腸詰宇宙》という円柱形の世界を描いた「遠近法」もまた、「マントゥアの天井画」の写真を見て構想したという。

『夢の棲む街』は、『季刊幻想文学 第11号』で「幻想SF 50選」にも選ばれている。

著作

単行本

  • 『夢の棲む街』 早川書房 1978年
  • 『仮面物語』 徳間書店 1980年
  • 『オットーと魔術師』 集英社 1980年
  • 『角砂糖の日』 深夜叢書社 1982年(短歌集)
  • 『夢の棲む街/遠近法』 三一書房 1982年
  • 『山尾悠子作品集成』 国書刊行会 2000年
  • 『ラピスラズリ』 国書刊行会 2003年 のち ちくま文庫 2012年1月10日 ISBN 978-4480429018
  • 『歪み真珠』 国書刊行会 2010年
  • 『夢の遠近法 山尾悠子初期作品選』 国書刊行会 2010年

翻訳作品

参考文献

  • 「幻想文学 第54号 小特集 山尾悠子の世界」 アトリエOCTA  ISBN 4900757543
  • 『山尾悠子作品集成』 所収、「解題(石堂藍)」 国書刊行会 ISBN 433604256X
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