大根おろし
大根おろし(だいこんおろし)は、大根の根部をおろし器を用いてすりおろした食品。
和食の付け合せや薬味として使われることが多い。大根おろしをパック詰めした商品(冷凍)もある。独特の辛みが魚料理等の臭みを中和する効果がある。
また大根おろしは消化を助けるはたらきをすることもあり、天ぷらをはじめ油物や肉料理等、一般的に胃に重いとされる料理との相性もよい。大根にはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼなどの消化酵素が豊富に含まれているが、これら酵素は熱に弱いため、加熱をともなう調理法では有効に利用できない。大根おろしとして生のまますりおろすことで消化を助ける効果をはじめて得ることができる。
辛さ
野菜スティック等で生の大根をそのまま食べても、辛みよりむしろ甘みを感じる。大根おろしの辛みは、辛み成分アリルイソチオシアネート(芥子油)によるものであるが、この物質は、そのままの大根の中には存在していないからである。イソチオシアネートは大根をすりおろしたり切ることで、細胞が壊れると初めて化学反応により生成される。そもそも大根中の別々の場所に存在していたイソチオシアネートの前駆物質(グルコシノレート、芥子油配糖体)とミロシナーゼと呼ばれる酵素が、細胞が壊れることにより混ざりあい、イソチオシアネートを生成する化学反応を起こすことによる。イソチオシアネートの前駆物質は根の先端部分ほど含有量が多く、葉に近い部位の約10倍にもなる。また若い大根には多く、成長するにしたがって減少する。そのため辛い大根おろしには夏大根がより適している。
おろし方
上述のように大根おろしの辛みを得るためには、細胞を効率良く壊すことが必要である。そのためには大根の切断面を繊維を断ち切るようにおろすとよい。おろし金に対して直線に力をこめて一気にすりおろすとより辛味が増す。具体的には長手方向に対して直角に円を描くように回しながらおろすと良い。『怒りながら大根をおろすと辛くなる』という昔ながらの伝承は、道理にかなっているといえる。
さらに、おろしてから5分程度経過したら、辛みがピークに達しその後減少する。また、皮付きでおろすと更に辛みが増す。
逆に辛味を減らしたい場合は、くびの方を使い、輪切りにした側面からゆっくりと円を書くようにすりおろす。繊維に沿っておろすことになり細胞が壊れにくいためである。前述の皮の方に辛みがあるのでさらに芯の部分を使用すると辛みは減少する。
さらに甘みを生かす為にはおろしたあと即加熱することで10分程度で加熱前より2倍程甘みが増す。
イソチオシアネートは揮発性のため、おろしてからしばらくおいておくと辛みが減少する。また、ビタミンCなども時間とともに同様に減少する。それをさけるためには、食べる直前におろす。
大根おろしに医者いらず
昔から「大根おろしに医者いらず」との格言があるように、大根おろしは様々な面から体に良い食品とされている。
まず第一に、上記のように消化を助ける働きがある。加えて、ビタミンCを始めとする各種栄養素が豊富に含まれている。(ジアスターゼ脚注参照。)
さらに大根おろし汁でうがいをすると口内炎や虫歯、歯肉炎など口の中の炎症に効くとも言われている。イソチオシアネートの持つ殺菌作用によるものとされる。この殺菌作用は生ガキを洗浄する際にも利用される場合がある。
蜂蜜を加えて飲むと咳や喉の痛み、声枯れ、二日酔いによいとする民間療法も知られている。
また古くは魚の毒を消すものとして重宝された。焼き魚に添えられることが多いのはこのためである。
もみじおろし
大根に箸などで穴をあけ、唐辛子を詰めてすりおろすともみじおろしになる。赤おろし(唐辛子をおろして塩漬けにしたもの)と大根おろしを混ぜて作られることもある。紅色が美しく、辛味をいかした薬味として用いられる。なお、大根おろしとにんじんおろしを混ぜたものも同じくもみじおろしという。ただしこの場合、にんじんと大根がお互いの栄養素を破壊するため、食べあわせがよくない。
用いられる料理
その見た目から、しばしば雪を意識したみぞれ、白雪等の料理名がつけられる。
- 焼き魚(秋刀魚、鯖、鰯など)
- しらす干し(ちりめんじゃこ)
- からみ餅
- おろしそば、おろしうどん
- おろしスパゲッティ
- 鍋 - 鍋の中に入れたものはみぞれ鍋あるいは雪鍋などと呼ばれる。また、漬け汁にも用いられる。
- 鶏唐揚げのみぞれ和え
- 和風ハンバーグ、豚カツ、ステーキ
- 煮物(みぞれ煮)
- 天ぷら
- 納豆
- 刺身(特にフグに対するもみじおろし)
- 味噌汁