外套

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インヴァネスコート
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ブリティッシュウォーマー
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ダスターコート

外套(がいとう)とは防寒などのために着る外衣をいう。英語では overcoat(オーバーコート)という。なお、日本語では「オーバー」または「コート」と略すこともある(もっとも、日本語で「コート」とは外套のみを意味するのではない。コートの他の用法についてはコート参照)。

外套には種々の長さがある。通常、膝丈程度をロングコート、腿丈程度をハーフコート、腰丈程度をショートコートなどという。丈は市中服装にあっては膝丈程度が上品とされる。

外套の着脱について、レストランなどでは埃が他の客の迷惑にならないように男性は入り口で脱ぎ、クロークがあればそこに預けるべきとされる。他人の家屋を訪問した際には日本では屋外で脱ぐことが多いが、欧米では屋内で脱ぐことが多い(ただし、脱いだ場合はそこで長居をする意味になるので、訪問先に促される前に脱ぐと図々しい訪問者とされるので注意)。

外套の種類

フォーマル系

礼装用途にも使用される外套。屋内礼装・屋内準礼装である燕尾服、モーニング、ディナージャケット(タキシード)、ディレクターズスーツの上に着用しても礼を失しないとされる。
フロックコート背広に似た形状で、背広が巨大化したような外見。前袷はシングルフロント、ダブルフロント双方が存在するが、どちらの形であっても中に着込んだ上着が見えないようにVゾーンを狭く着丈を長く作るのが伝統的な意匠である。また上ベルベットサテンなどの光沢のある別素材で仕立てると、よりフォーマル性が高くなる。
名前の由来はイギリスのチェスターフィールド伯爵が最初に着たという説が有力。

セミフォーマル系・スポーツ系

  • アルスターコート(ガーズコート、ガーズマンコート)
トレンチコートの元祖。衛兵が着用していたことが由来。英国の旅行着として流行し、シャーロック・ホームズのシリーズの一作におけるホームズの旅行外套としてもアルスターコートが取り上げられている。
アルスターカラーの前袷がダブルフロントの6ボタンか8つボタンが特徴。背バンドという帯が背中に付いている。仲間にポロコート、ブリティッシュウォーマーがある。重い生地で仕立てることが多かったためヘビーコートとも呼ばれ、また袷の深いダブルフロントで嵐にも耐える意味からストームコートとも呼ばれる。
  • ポロコート
ポロを観戦するときに着用する英国発祥のコートで、ブリティッシュウォーマー、アルスターコートと関連が深い。ダブル6つボタン。背バンドが付き、袖口は折り返しのターンナップカフ、襟はアルスターカラーまたはピークドラペルポケットはフレームドパッチ式ポケットが特徴。
日本には20世紀半ばにアイヴィールックのアイテムの一つとして米国経由で紹介され、その当時ブルックス・ブラザーズ社が提案したキャメルブラウンのポロコートが人気を博した。但しブルックス・ブラザースモデル以前の、英国での伝統的ポロコートはダークカラーが中心であったとの説もある。
  • カバート・コート
古くは乗馬や狩猟の際の防寒外套として、カバートクロスと呼ばれる丈夫な綾織りウールで作ることから名づけられたコート。カバートクロス生地は、狩猟時に獲物を追いながら木立や藪をくぐり抜ける際に引っ掛かったり鉤裂きが起きにくいように、起毛を寝かせ滑らかに仕上げられていることが多い。
チェスターフィールドコートと同様にフォーマルで用いられる場合もあり、また20世紀前半から英国の街着としても流行し今日に至る。意匠としては、袖に3本から4本のステッチ(レールウェイステッチと呼ばれる)が入り、前袷は風が入りにくい比翼仕立てのシングル3つまたは4つボタン。
  • ローデンコート(ローデンシューティングコート、オーストリアンローデンシューティングコート)[2]
オーストリアはローデレス地方由来の厚手の縮充ウール生地・ローデンクロスで作られるコートで、本来は狩猟や農業、林業に用いられた。
深めの前袷に打ち抜きのくるみボタン、脇の下を縫い付けないことにより肩周りの可動域を広く取り猟銃を構えやすくするフローティングショルダー構造が特徴。昔ながらのローデンコートはローデングリーンと呼ばれる緑がかった色合いのものが多い。
  • スポルベリーノ
イタリア発祥の比較的軽量な防寒外套で、芯地や肩パッドなどの副素材がほとんど無い柔らかい着用感が特徴。研究職の白衣、ダスターコートを外出用に転用したとの説がある。
チェスターフィールドコートの意匠を踏襲しているがチェスターフィールドよりもフォーマル性は低く、用いられるのはセミ・フォーマル或いはドレス・カジュアルの場が中心。

マント系

がなく、ケープの付いた外套。イギリスのインヴァネス(インバネス)地方で生まれたことからこの名称がついた。マントの一種。かつては礼装用途にも使用されていた外套。
戦前に防寒着として用いられていた。17世紀〜19世紀頃に礼装用途にも使用されていた外套。

ビジネス・軍服関係の外套

第一次世界大戦のイギリスの軍服に使用されたコートで、アルスターコート、ポロコートの一種。前袷はダブル仕立てで、勲章付きの軍礼装の上に羽織る前提で容積を大きめに作ることが多い。肩章が付いているのが特徴。
  • タイロッケンコート
英国バーバリー社の19世紀末頃の代表的な製品で、冬季軍装として多く用いられた。
フロントボタンがなく、タイでロックする即ち帯で固定するという名称由来の通りウエスト全周をベルトのみで絞って留めるガウンのような構造。シングルフロントながらダブルフロントに見えるほど前袷が深い。
前述のブリティッシュウォーマー、タイロッケンコートを原型として、ラグランスリーブ、ガンパッチ、エポーレット、手榴弾携行用Dリングなどを追加した軍用機能性外套。トレンチの名称は英国軍が第一次世界大戦塹壕戦で使用したのが由来。バーバリーが発明した目の詰まったゴム引きコットンギャバジンなどの、汚れにくく雨風を通しにくい素材で作られることが多く、戦後は一般市民に広がった。
ファイル:Burberrys Trenchcoat.jpg
ステンカラーコート
飾りがないシンプルな外套。「バルマカーン」はスコットランドの地方名に由来しており、「バルカラー」は「バルマカーンカラー」の略である[1]。日本には20世紀半ばにアイヴィールックのアイテムの一つとして紹介され、以来、ビジネススタイル向けコートの定番として定着した。
ラグラン袖が特長だが、ラグランは撫で肩を強調するシルエットになるため近年では、セットインスリーブ式のややスクウェアなシルエットのものも増えている。
腰や袖のベルトが付属しているものもある。
春用の薄手のコート、トレンチコートから変化した。
ウールやギャバジンを用いた、Pコートに似た形をしたコート。大きなショールカラーやノッチドカラーが特徴。オリーブ色カーキが多い。
腰や袖のベルトが付属しているものもある。

カジュアル・軍服関係の外套

  • M-51(モッズパーカ)
50年代に米軍の野戦用パーカとして採用された。日本では主に「モッズコート」として知られるが、アメリカ軍では「コート」ではなく「パーカ」と呼ばれている。フィールドコート(フィールドジャケット)とは全くの別物である。
  • M65(フィールドジャケット)
60年代に米軍の野戦用ジャケットとして採用された。一般に「ジャケット」と呼ばれているが、米軍被服では「コート」に分類される
英国海軍アメリカ海軍が主に艦上用のコートとして採用した。腰丈。
英国海軍が採用した。腰丈。

カジュアルの外套

  • スリッカー
立襟の防水用コート、レインコートの一種。
  • スパニッシュコート(ゴールコート)
スパニッシュカラーと呼ばれる、が特徴のカジュアルなコート。コーデュロイで作られることが多い。
  • ダスターコート
春先に埃や風よけで着る薄いコート。西部劇でよく着用される。
  • ドゥブリョンカ(シューバ)
ロシアで着用される製のコート。
  • ドライビングコート(カーコート)
運転の妨げにならないように腰丈程の短めの丈が多い。綿や革、ナイロンが多い。
  • ドンキーコート
スパニッシュコートの一種。
  • バレルコート
肩が丸まり、樽のように真ん中が膨らんでいるコート。
  • ベンチコート
野外スポーツ観戦のときなどに着用。ジャンパー的色合いが強い。
インドの王族を思わせる立襟のコート。マハラジャはインド語で王族の意味。インドの首相のジャワハルラール・ネルーからネールコートとも呼ばれる。
  • モッズコート(M-51
  • ランチコート
牧場で働くカウボーイが着用したハーフコート。
  • ルダンゴト
立襟のコート。

和服の外套

  • 角袖コート
着物に合わせて着るコート(洋服でも良い)インバネスコートから別れたコート、ステンカラーコートの外観を参考にした。
  • 道行コート
男女兼用のコート、主に着物に合わせる(着物でなくても良い)
着物に合わせて着るコート(洋服でも良い)

レインコート(雨衣)

女性用の雨コート。
  • 雨コート
主に着物に合わせるレインコート(洋服でも良い)
ケープと同じ語源。
  • ステンカラーコート
レインコートの一種。
  • トレンチコート
レインコートの一種。
広くはレインウェアも含むが、狭義では外套型のものを指す
雨具も兼ねている。

脚注

  1. 田中

参考資料

ブランド

  • バーバリー - トレンチコート、冒険家の愛用、英国王室御用達などによって知られているメーカー

関連項目

外部リンク

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