単科大学と総合大学
単科大学(たんかだいがく)とは、単一の学問領域を教育・研究する大学の日本における呼称であり、総合大学(そうごうだいがく)とは、様々な学問領域について教育・研究する大学の日本における呼称である。
日本の単科大学・複合大学・総合大学
元々、総合大学とは、人文科学・社会科学・自然科学の3つすべての領域を専攻して総合的な教育研究を行う大学のことであった。「総合大学」という語のこの用法は、人文科学・社会科学・自然科学の3つすべての領域を専攻していた帝国大学が新制大学に移行する直前に国立総合大学(国立総合大学令〔大正8年勅令第12号〕に基づくもの、なお国立総合大学令は帝国大学令を1947年〔昭和22年〕に改称したものである)になったことを一つの論拠としていると考えられる。
文科系と理科系という、明治時代の過渡期に設けられたおおまかな分類上、双方が専攻できることをもって総合大学とすることもある。また、1990年代以降、学際分野を専攻する学部が増加して「境域分野の名称を冠する学部名」や「話題性のある語を用いた学部名」が登場した。同系統の学問分野のみで構成されている大学についても「○○系総合大学」などと総合大学の語を含むものの、諸科学にまたがって学問を専攻している総合大学ではないという、分かりにくい表現をしていることもある。こうした事情から複数の学部を設置している大学は、自らを「総合大学」と呼ぶことが多いもののその定義は曖昧であり、「医学部がない大学は総合大学ではない」「文系と理系のそれぞれが1つ以上あれば総合大学だ」などと「総合大学」という用語の定義を巡っては意見が分かれることが多い。
大学が自ら「総合大学」と呼ぶ理由として、少子化での受験生減少を背景に、単科大学や新設大学との差別化を目的としていることがあげられる。看板だけの総合大学も多いが、近年では「文理融合」や「学際教育」と呼ばれる学部間の連携を強化したカリキュラムを取り入れ、総合大学としての機能性を整える大学も増えつつある。また、単科大学と総合大学との合併する例もある。
単科大学でも、専攻分野を多数配置していたり、総合科学部や教養学部などの学際的分野の学部を設置して、総合大学的な機能を果たしている大学もある。
英語表記
「単科大学」「総合大学」はあくまで日本語での呼び方である。日本の単科大学は英語ではcollege(university以外)という名称を名乗ることが多いものの、英語では必ずしも、単科大学がcollege、総合大学がuniversityとなるわけではない点に注意を要する。
college (カレッジ)は、一定規模の教育組織を指し、大学の各学部、大学院をおく大学におかれる研究科群、大学の各キャンパス(校地)、学寮などを意味することがあり、必ずしも単科大学を指し示している語とはならない。イギリスおよびその連邦国では、中学・高校・補習校などにも使われる[1]。また、university は、各々の部門が連携して学問が取り扱われているところを意味しており、単科大学であっても、大学院の課程が設けられていれば、部門間の連携があると考えてuniversity と呼称される例もある。具体例として、アメリカでは伝統的なリベラルアーツカレッジのように大学院を持たない場合にcollege、大学院を有する場合にuniversityと、大学院のあるなしで呼称が区別される場合もある。
以前の学校教育法の規定に基づく定義
日本では、かつて学校教育法(昭和22年法律第26号)に設けられていた規定に基づいて、数個の学部を置く大学を「総合大学」と呼び、単に1個の学部をおく大学を「単科大学」と呼んでいた。
かつての学校教育法の第53条には、「大学には、数個の学部を置くことを常例とする。」と定められており、例外として「ただし、特別の必要がある場合においては、単に一個の学部を置くものを大学とすることができる。」と定められていた。この規定は、「国立学校設置法の一部を改正する法律」(昭和48年法律第103号)(通称: 筑波大学法)によって改正され、学部数に関する規定は、学校教育法から削除された。
旧規定 | 新規定 |
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第53条 大学には、数個の学部を置くことを常例とする。ただし、特別の必要がある場合においては、単に一個の学部を置くものを大学とすることができる。 | 第53条 大学には、学部を置くことを常例とする。ただし、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。 |