前嶋信次
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前嶋 信次(まえじま しんじ、1903年7月20日 - 1983年6月3日)は、イスラム史、東洋史家、東洋学者。
山梨県に生まれる。山梨県立日川高等学校、東京外国語学校仏語科を経て、東京帝国大学文学部東洋史学科を卒業。当時は日本ではほとんど研究する者がなかったイスラム史を志し、アラビア語を学ぶ。一時、台南第一中学校教諭や台北帝国大学助手となり、戦時中は南満州鉄道東亜経済調査局に勤めた。戦後は1951年から1971年まで慶應義塾大学教授でイスラム史を研究紹介。日本イスラム協会、日本オリエント学会の設立運営に貢献し、日本のイスラム学研究の発展に尽力した。
アラビア語文献に基づいた東西交渉史の実証的研究を数多く行う一方で、文学的情趣をあわせもった一般的向けの啓蒙書を数多く著してアラブ文化・イスラム文化を日本に広く紹介した。特に、日本ではじめてアラビア語原典からの翻訳となった『アラビアン・ナイト』が名高い。弟子に家島彦一や三木亘・坂本勉らがいる。多くの編著刊行にも関わっている。
主な著書
- 『玄奘三蔵 史実西遊記』 岩波新書、1952年 復刊1988年・2010年ほか
- 『サラセン文化』 弘文堂(アテネ文庫)、1955年。小冊子
- 『イスラムの文化圏 回教の文化』 至文堂(世界史新書)、1962年
- 『アラビア史』 修道社、1958年、増補版1971年
- 『アラビアの医術』 中公新書 1965年、平凡社ライブラリー 1996年
- 『イスラム世界 世界の歴史.8』 河出書房新社、1968年、河出文庫、1989年
- 『アラビアン・ナイトの世界』 講談社現代新書、1970年、平凡社ライブラリー、1995年
- 『シルクロードの秘密国 ブハラ』 芙蓉書房、1972年 新版1977年
- 『イスラムの蔭に 生活の世界歴史.7』 河出書房新社、1975年 新版1980年、河出文庫、1991年
- 『イスラムの時代 世界の歴史.10』 講談社、1977年、講談社学術文庫、2002年-文庫版は単著
- 『アラビア学への途 わが人生のシルクロード』 NHKブックス:日本放送出版協会、1982年。学問的自伝
- 『アラビアに魅せられた人びと』 芙蓉書房、1982年、中公文庫、1993年
- 『東西文化交流の諸相』 誠文堂新光社、1971年 (著者自選の論文集)
- 『シルクロード史上の群像』
- 『民族・戦争』
- 『文化の東西交流』
- 『東西物産の交流』 ※最晩年(1982年)に、増補改訂版が左記の全4巻で刊行。
- 『空海入唐記』 誠文堂新光社、1983年(上記未収録の論考)
- 『日持上人の大陸渡航 宣化出土遺物を中心として』 誠文堂新光社、1983年(同上)
- 『イスラム文化と歴史』 誠文堂新光社、1984年 (同上)
- 『インド学の曙』 世界聖典刊行協会〈ぼんブックス〉、1985年 (没後刊行の論考)
- 『イスラムの宗教と歴史』 世界聖典刊行協会〈ぼんブックス〉、1987年 (没後刊行の論考)、窪寺紘一編・解説
- 『前嶋信次著作選』 杉田英明編、平凡社東洋文庫全4巻、2000年
- 『1.千夜一夜物語と中東文化』
- 『2.イスラムとヨーロッパ』
- 『3.〔華麗島〕 台湾からの眺望』
- 『4.書物と旅 東西往還』
- ※単行本未収録を中心にした論文集、3巻に書誌を、4巻に年譜を収録。
主な訳書
- 『三大陸周遊記』 イブン・バットゥータの抄訳版、河出書房、1954年、角川文庫、1961年、復刊1989年
- ※改訂版は河出書房新社、1977年、中公文庫、2004年
- 『アラビアン・ナイト』(全18巻、12巻目まで) 平凡社東洋文庫、1966年-1981年
- ※13巻目以降は池田修訳、1993年に18巻目刊行完結、別巻(実質は坂本勉訳)、1985年
- スタンリー・レーン・プール(Stanley Lane-Poole) 、冒険の世界史シリーズ:リブロポート、1981年
関連文献
- 『シルクロード事典』 芙蓉書房 加藤九祚との共編 1975年、新版1993年
- 『西と東と 前嶋信次先生追悼論文集』 汲古書院 1985年、弟子達による紹介・書誌。
- 『イスラム学事始 前嶋信次の生涯』 窪寺紘一著 世界聖典刊行協会〈ぼんブックス〉 1989年
- ※元平凡社編集担当者による詳細な伝記
- 『前嶋信次 ミネルヴァ日本評伝選』 杉田英明著 ミネルヴァ書房 〔未刊 刊行時期未定〕