初級システムアドミニストレータ試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Ambox テンプレート:資格

初級システムアドミニストレータ試験(しょきゅうシステムアドミニストレータしけん、Systems Administrator Examination、略称初級シスアド、略号AD)は、情報処理技術者試験にあった区分である。

概要

旧名システムアドミニストレータ試験として、1994年に初回試験を実施。このときは、年1回秋期のみの開催だった。 1996年にシステムアドミニストレータを初級システムアドミニストレータ試験と改名、さらに上位の範囲を上級システムアドミニストレータとして実施。1999年に初級システムアドミニストレータの受験者増加により春期・秋期の年2回の開催となり、範囲はやや上等になる。この年から合格率が減少する。

試験内容は、業務効率の向上・改善を目的とし、現状業務における諸問題を把握・解決するために、担当する業務の情報化を利用者の立場から推進するエンドユーザーコンピューティング(EUC)役割がある。ただし、英語の「System Administrator」は、サーバやネットワークの構築・運営・管理を行う「システム管理者」の意味であり、エンドユーザの意味はないことから、日本語を母国語としない者に対して説明するときは注意が必要である(英語版Wikipediaでの説明)。

受験者は高校・大学生~20代の若い人が多かったものの、基本情報技術者試験ほど20代に集中してはおらず、30代以上の層も少なくなかった。60歳代や70歳代など高齢者の受験や、10代の受験も僅かながら増加していた。

高等学校・高等専門学校などのジュニアマイスター顕彰において、12ポイント~20ポイント(基本情報技術者へ吸収後)が付与される。このポイントは、英検準1級と同等である。

平成20年度までの14種あった情報処理技術者試験の中では、難易度が一番低い。受験者は一年に10万人を超えることもあり人気が高かった。 他の団体の主催する簿記試験やベンダー試験などの合格者が受験することもあり合格者の年齢層は28歳前後の業務経験者が中心であった。学生にとっては合格率が10%を下回る学校も多くあった、そのため他の業界の国家試験としては、1990年代は社会福祉士2000年以降はファイナンシャルプランニング技能士二級程度の実務年数・競争率が同様と推定できる。

  • 簿記・経営分析といったストラテジに関する出題は、全経簿記能力検定上級に近い範囲の出題もあった。そのため日商簿記検定二級や販売士二級などに合格後の受験者も多かったようである。
  • テクノロジの知識を問う範囲は、J検情報活用検定一級、全商情報処理検定一級、サーティファイシスアド技術者能力認定試験一級、全経情報処理能力検定一級、IT活用能力検定一級、より上等である。またパソコン検定(P検)では、準1級と2級の間に初級シスアドがあると言われていた。
  • 上記試験の合格者のうち、差分講習・修了考査の後、初級システムアドミニストレータ試験の午前試験を免除可能となる試験もあった。この考え方は、後の基本情報技術者試験の午前試験免除につながっている。(J検情報システム試験基本クラス、サーティファイ情報処理技術者能力認定試験二級により置き換わっている。)
  • 上位には、情報セキュリティアドミニストレータ試験上級システムアドミニストレータ試験があったが、データベース、ネットワーク、運用管理の出題が多いことから技術的知識を習得しソフトウェア開発技術者試験を経てテクニカルエンジニア試験へステップアップする者も多かった。また中小企業診断士一次試験の範囲とも部分的に類似しており、財務会計、運営管理、マーケティング、経営分析、金融などの出題もあるため、ストラテジやマネジメントに関するさまざまな試験へとステップアップしていける試験でもあった。

沿革

  • 平成 6年(1994年)7月1日  システムアドミニストレータ試験を新設する[1]
    • 年一回、秋期に実施するものとされた。
  • 同年10月16日 試験を初実施する[2]
  • 同年12月1日 初の合格者を告示する[3]
  • 平成 8年(1996年)5月21日 システムアドミニストレータ試験を廃止し、初級システムアドミニストレータ試験を新設する[4]
    • 上級システムアドミニストレータ試験が新設されたことにより、本試験は名称を変更する形となった。
  • 平成11年(1999年)4月18日 春期試験を初実施する[5]
    • 受験者増大により年二回実施されることとなった。
  • 平成12年(2000年)午後試験の方式変更。
  • 平成21年(2009年)4月19日 最後の試験を実施する[6]
  • 同年4月30日 試験を廃止する[7]
  • 同年5月26日 最後の合格者を決定する[8]

形式

午前 午後
150分

多肢選択式(マークシート使用)
基本問題が80問出題、全問解答

150分

多肢選択式(マークシート使用)
実践問題が7問出題、全問解答

内容

以下の6項目と応用分野

当初から平成12年(2000年)までは午後は、4問が基礎能力、3問が応用能力とされていた。

科目免除

その他

情報処理技術者試験センターの統計資料による累計の受験者数1,644,386人、合格者数519,990人、合格率31.6%。

応用分野

情報処理の分野だけでなく、製造サービス建設業運輸など、あらゆる分野において応用が効くとされる。これは、エンドユーザコンピューティングコンピュータの小型化、低価格化の進展によりあらゆる場面で活用される状況が発生しているためであり、今後のユビキタスコンピューティングの進展には必須とも言われていた。

初級シスアドはコンピュータ利用の基本的知識を問うものであるので、これ単独ではなく、多方面の専門職業資格を合わせ持つのが最も望ましい状態とされている。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:情報処理技術者試験
  1. 平成6年通商産業省令第1号「情報処理技術者試験規則の一部を改正する省令」
  2. 平成6年6月10日『官報』第1417号、14ページ「官庁報告 国家試験 平成6年度秋期情報処理技術者試験」
  3. 平成6年12月1日『官報』号外第225号、11ページ「官庁報告 国家試験 平成6年度秋期情報処理技術者試験合格者」
  4. 平成8年5月21日、通商産業省令第49号「情報処理技術者試験規則の一部を改正する省令」
  5. 平成10年12月8日『官報』号外第256号、64ページ「官庁報告 国家試験 平成11年度春期情報処理技術者試験」
  6. 平成20年11月20日『官報』号外第255号、50ページ「官庁報告 国家試験 平成21年度春期情報処理技術者試験」
  7. 平成19年12月28日、経済産業省令第79号「情報処理技術者試験規則等の一部を改正する省令」
  8. 平成21年6月18日『官報』号外第127号、1ページ「官庁報告 国家試験 平成21年度春期情報処理技術者試験合格者」