処方せん医薬品
処方せん医薬品(しょほうせんいやくひん、prescription medication)とは、医師の処方箋を必要とし、薬剤師による調剤によって処方される医薬品のことである。一方で、処方箋不要で、薬局で購入することもできる一般用医薬品がある。
「箋」は2010年に常用漢字となった。
製薬産業による適応外への違法なマーケティングが一般化しており、それは死亡や重篤な副作用といった危険性を度外視して行われている[1]。アメリカでは薬物の過剰摂取による死亡の過半数が処方せん医薬品となってきた[2]。英米で運転死亡事故を上回り、国際的な懸念である[3]。
目次
「箋」(せん)の表記
処方箋の「箋」(せん)は2005年当時には常用漢字に含まれていなかったため、かな書きの表記になっている。但し、その後の2010年6月に文化審議会が答申した「改定常用漢字表」[4]では「箋」が常用漢字に追加されている。
日本
日本では、薬事法第49条が規定した、「薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。」[5]に拠って厚生労働大臣が指定した医薬品のことである。
該当する医薬品は2005年に通達された「厚生労働省告示第24号」[6]に依る。
歴史
日本では従来、要指示医薬品として同様の規制があった。2005年4月にこれを「処方せん医薬品」と改称するとともにその品目が拡大された。これは医師等による指示が口頭では実際になされたのかが必ずしも明瞭ではないので、処方箋の発行を求めることに拠って医薬品の適正使用を一層徹底させることを目的としているが、一方では健康保険で使用される医薬品の販売抑制も目的であるとされている。
なお、動物用医薬品においては現在も要指示医薬品の名称で同様の規制が行われている。
処方箋医薬品以外の医療用医薬品
医療用医薬品の全てが処方箋医薬品であるわけではない。処方箋医薬品には薬理作用が強い薬剤や、発売から間もない新発医薬品などが指定されている。一方、経口投与のビタミン剤や漢方薬などは医療現場で繁用されているが指定されていない。
処方箋医薬品の誤販売問題
2006年6月に、CFSコーポレーションが処方箋医薬品である喘息治療薬「ネオフィリン錠」を処方箋無しで販売し、同剤に因る急性中毒が疑われる事例が発生した[7]。これを端緒として多くの販売業者に拠る処方箋医薬品の誤販売の問題が表面化した。これは前述の要指示医薬品から処方箋医薬品への移行に伴う品目の拡大を認識していなかったためと言われている。
ハイリスク薬
ハイリスク薬の用語は、処方せん医薬品を薬剤師が調剤する業務において用いられる、危険性が高いため特に注意が必要な医薬品のことであり、抗がん剤や乱用の可能性もある精神科の薬といった薬剤である[8][9]。こうした薬の安全管理的な説明等を行った際には、通称ハイリスク薬加算がなされる。
毒性の強い医薬品
毒薬や、劇薬は、その薬品の毒性の危険性に従って薬事法において指定されている。
乱用の危険性が高い医薬品
乱用の危険性が高い医薬品については、他に指定されている場合がある。
習慣性医薬品は、睡眠薬の乱用に伴って、1961年に薬事法によって指定された医薬品である。大部分は後に、麻薬及び向精神薬取締法によって第1種から3種までの向精神薬に指定されている。同麻薬取締法による麻薬の指定は従来からである。
覚せい剤は、戦後のアンフェタミン類の乱用に伴って1951年に覚せい剤取締法が制定され、同法によって指定されている。
このような指定は、各国が1971年の向精神薬に関する条約に批准しているため、アメリカの規制物質法や、イギリスの1971年薬物乱用法のように同様である。
不正
医薬品の違法なマーケティングが行われている。
近年、アメリカでは各製薬会社による特に精神科の薬を含めたテンプレート:日本語版にない記事リンクの使用を勧める違法なマーケティングにより、数億ドル以上の罰金を伴って罰金の史上最高額を更新し合っている[10][11]。
- グラクソ・スミスクラインは、2011年30億ドルは、抗うつ薬パキシル(パロキセチン)ブプロピオン、抗てんかん薬ラミクタール(ラモトリギン)、糖尿病治療薬アバンディア (ロシグリタゾン)などを適用外使用において違法にマーケティングし、副作用データを報告しなかったことなどを含む[1]。
- ファイザー、2009年23億ドルは、抗リウマチ剤のベクストラ(テンプレート:仮リンク)、抗精神病薬のジオドン(テンプレート:仮リンク)、抗てんかん薬のリリカ(プレガバリン)などを適応外用途において違法にマーケティングし、うち10億ドルの罰金は処方することを奨励するために医療従事者を豪華に接待したことが理由である[1]。
- アボット、2012年15億ドルは、抗てんかん薬デパコート(バルプロ酸)を違法にマーケティングし、有効性や安全性また費用対効果に対して虚偽の情報を説明し、不適切に高齢者施設で販売し、さらに見返り金を支払ったなどが理由である[1]。
- イーライリリー、2009年14億ドル以上は、抗精神病薬のジプレキサ(オランザピン)を特に子供や高齢者や、認知症などに対して、心不全、肺炎、体重増加や糖尿病の危険性を知りながら、適応外で販売し、体重増加との関連性を狭小化しようと「糖尿病の神話」と題するビデオテープなども用いていた[1]。
- ジョンソン・エンド・ジョンソンとその子会社ヤンセン、2012年11億ドル以上は、抗精神病薬のリスパダール(リスペリドン)の死亡、脳卒中、発作、体重増加や糖尿病などの命に関わる副作用について虚偽を主張し、軽視または隠ぺいしたことによる[1]。
- アストラゼネカ、2010年5.2億ドルは、抗精神病薬のセロクエル(クエチアピン)を承認されていない用途、攻撃性、アルツハイマー、認知症、不安、注意欠陥多動性障害、うつ病、気分障害、心的外傷後ストレス障害、不眠などに対して販売し、またそのような使用を推進するのに豪華リゾート地などを用いた[1]。
- ノバルティス、2010年4.23億ドルは、テンプレート:仮リンク(抗てんかん薬)の違法なマーケティングと、オクスカルバゼピンの他に高血圧の治療薬バルサルタン(ディオバン)など5薬剤を処方した際に見返り金を支払ったことが理由である[1]。
糖尿病治療薬のアクトス(テンプレート:仮リンク)の発がんリスク隠ぺいによって武田薬品工業に60億ドル、提携企業のイーライリリーに30億ドルの支払いが命じられたが、上級審に臨むなどことを表明している[12]。
自社製品の販売を促進するために製薬会社がテンプレート:仮リンクを雇うことがあることに対する対策も必要である[13]。また、2014年の日本におけるノバルティスによるディオバン事件のように、試験のデータを改ざんするというような根本的な不正も存在する。
製薬産業による、組織的な犯罪は深刻かつ反復的であり、それは死亡や重篤な副作用といった危険性を度外視して行われている[1]
過剰投与による死亡
2010年のアメリカでは、過剰摂取による死亡の原因の過半数が処方せん医薬品であり、全体の74.3%が意図しない死亡である[2]。
日本でも薬漬け医療の問題を持つ[14]。