京阪10000系電車
京阪10000系電車(けいはん10000けいでんしゃ)は、2002年(平成14年)4月15日に営業運転を開始した京阪電気鉄道の通勤形電車。
概要
本系列は、老朽化が目立ってきた1900系や2600系0番台の置き換えを目的として新造された。主に支線である宇治線と交野線で運用されており、2006年4月16日のダイヤ改定以降、本線での営業列車は運用変更時を除き存在しなかった(回送列車のみの設定)が、2009年9月12日のダイヤ改定で平日深夜に限り再び同系による本線運用が復活した。該当するのは中之島発となる快速急行「ひこぼし」の1本と、その送り込みの区間急行1本であり、いずれも交野線運用の間合いであった。しかし、2011年5月28日のダイヤ改定で同系による本線での定期営業列車は消滅した。
車体
- アルミ製で7200系をベースにしているが、バリアフリー化を進めるため床面を20mm下げている。この際台枠を20mm薄くすることで対応したため、台枠の強度確保のため車体裾部の絞り込みを廃止した。また一方で、屋根高さを10mm上げたため出入り口高さは7200系と比較して30mm高い1850mmとなっている。先頭車の前面形状は7200系や9000系と同一である。最高速度は120km/h(運用上は110km/h)、起動加速度は2.8km/h/sである。
- 外板塗色 - 従来の緑の濃淡のツートンカラーから45年振りに変更され、青緑の「ターコイズグリーン」一色となった。また運転台次位の窓上にメタリックシルバーで「KEIHAN」のロゴを入れた。なお、2008年より始まった塗色変更により他の通勤車と同じ塗色となった。
- 台車 - 1次車は動力車は川崎重工製のKW-77D・付随車は住友金属製のFS-517E、2次車は川崎重工製のKW-77Dに統一された。車輪はすべて防音車輪を採用して騒音低減を図っている。
- 空調装置 - 6000系以来、連続形のクーラーきせ内に3台のユニットクーラを搭載していたが、これに代わってそれぞれ独立したクーラきせ内にクーラを設置している。これにはコストと保守の削減のほかに、混雑する出入り口部を避けてクーラの吸気口を配置できるというメリットがある。
- 制御装置 - 東洋電機製造製の「ATR-H4200-RG678A」でIGBT素子によるVVVFインバータ制御が採用された。IGBT素子インバーター制御は京津線用としては800系で採用実績があるが、京阪線用としては初採用となった。なお800系は全電動車方式で8M1C (8ヶのモーターを1つのコントローラーで制御) に対して10000系では2M1C2バンク (2モーターを1つのコントローラーで制御する回路を2つを一纏めしたもの) 方式が取られている。これは編成中の電動車 (M) と付随車 (T) の両数は2M2T ( Mc-T-T-Mc ) であるため、一つの制御回路が故障しても勾配区間で立ち往生することが無いようにと考えられた。
- ブレーキ - 6000系2次車以降標準の「回生ブレーキ優先全電気指令式電磁直通ブレーキ (HRDA-1) 」が採用され、2200系の発電ブレーキ車に比較すると45%の電力削減となり、省電力化が図られている。一部の車両には京阪で初めてタイヤフラット防止装置を試験的に導入(10004Fは導入確認済み)、
- 編成中に異なる電源方式のコンプレッサー(空気圧縮機)を搭載している点も本系列の特徴の一つである。これは編成中に三相交流電源となるSIV(静止型補助電源装置)が1台のみの搭載で、編成中に2基あるコンプレッサーの双方とも三相交流式にしてしまうとSIVが故障した際にドアエンジンや空気ブレーキ用の圧縮空気が供給されなくなるため、あえて1基を1900系に使われていた直流式を採用した。
- リサイクルパーツ - 1次車では、1900系のHB1500B形コンプレッサー(1900系のコンプレッサーは昇圧工事時に全車DH25から新製のHB1500Bに交換されており経年が浅かった)や2600系のPT-4805A-Mパンタグラフ、はては汎用品のヒューズ箱、棒連結器からタイフォンに至るまで廃車発生品や予備パーツの見直しによる発生品を流用してコストダウンを図ったが、2次車はほぼすべて新造品となっている。しかし、2次車のコンプレッサーに2600系のものが使われている編成もある。
内装
- 基本的に7200系に準じたロングシートとなっている。座席は7200系・9000系および5000系更新車は背面が緑、座面が青の2色シートであったが、本系列では紺色に近い青色一色となった。これはシートモケットに耐久性があり価格も安くリサイクル可能なポリエステルを採用されたためである (5000系・7200系も、10000系のモケットに順次交換されたが、後に再度交換されている) 。
- LED案内表示器は中之島線への対応のため、マップ式表示ではなくスクロール表示のみとした。なお、7200系・9000系・5000系も全車この仕様に変更している。
- 窓ガラスはUVカットガラス (カット率90%) とされ、ドアガラスも複層ガラスとしている。なお2次車10004F以降の室内灯は難燃性基準の改正により蛍光灯カバーが省略され、側窓はコスト低減と利用客の使用頻度が低かったことを理由にパワーウインドウを廃止して一部固定窓化された。
- エアコン - 代替フロンR407Cを使用したフルオートエアコンを採用して車内環境の快適化を図った。
- 扉部分のつり革がはね上げ機構を省略した短いタイプとなる。はね上げ機構がないのは7000系以来。
ワンマン化工事
- ワンマン運転を実施することを見据えて自動車内放送装置を準備工事としていた。これについては2007年夏以降で本工事を実施した。実施済み列車は開扉予告放送のフレーズが「左(右)側のドアが開きます」から「左(右)側のとびらを開けます」に変更されている。ワンマン表示は日本では希少である英文表示「Conductorless」を併記したものである。この表示は跳ね上げが可能であり、他の路線で使用される場合や、交野線でも早朝のツーマン運転の場合、および回送の際にはワンマン表示は跳ね上げられる。なお、自動放送は交野線・宇治線普通列車の放送のみの収録であり、他線での運用の際は自動放送を使用しない。
予算区分 | 編成番号 | 竣工日 | 運用開始日 | ワンマン化改造 | ABS取付 | 粘着剤噴射装置取付 | 新塗色化 |
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2001年度分 | 10001F | 2002年3月18日 | 2002年4月15日 | 2007年7月31日 | 2009年9月9日 | ||
2002年度分 | 10002F | 2002年4月19日 | 2002年4月24日 | 2007年7月27日 | 2009年12月2日 | ||
2002年度分 | 10003F | 2002年4月25日 | 2002年4月27日 | 2007年7月24日 | 2010年2月26日 | ||
2005年度分 | 10004F | 2006年3月27日 | 2006年4月15日 | 2007年7月23日 | 2006年3月27日 | 2009年7月27日 | |
2006年度分 | 10005F | 2006年4月28日 | 2006年5月3日 | 2007年7月25日 | 2007年3月5日 | 2010年1月25日 | |
2006年度分 | 10006F | 2006年5月19日 | 2006年5月23日 | 2007年7月26日 | 2007年3月15日 | 2007年3月15日 | 2010年4月23日 |
現状
本系列は新造当初からワンマン運転対応機器が搭載されていたが、これは京阪電鉄発表の報道資料によると、これは交野線・宇治線でワンマン運転を実施する予定となっていたからである。2002年の営業運転開始直後にワンマン運転時の使用を想定した「中書島 ⇔ 宇治」「枚方市⇔私市」の行先幕を表示して運行したが、誤乗が相次いだことにより、わずか数日で通常の表示に戻された。しかし、交野線については2007年9月22日からワンマン運転を行うにあたり、同年8月1日より「枚方市⇔私市」[1]の表示を復活させた。また2013年6月1日より宇治線でもワンマン運転となったため、これ以降は13000系と共通運用となり、そのため13000系の交野線運用が増えた分、本系列は宇治線へも定期運用されている。宇治線で運用の際は「中書島⇔宇治」を表示している。
2006年4月16日のダイヤ改正に合わせて、一部仕様を変更した4年ぶりの増備車である第4 - 6編成が投入された。改正前日の同月15日より10004Fが、続いて5月3日に10005Fが、23日に10006Fがそれぞれ営業運転を開始した。
2008年4月15日、京阪は本系列を含む大津線・鋼索線以外の車両の塗色を2012年度までに新塗色に変更するとともに、未塗色変更車を含めての新CIロゴの貼付を行うと発表した[2]。2009年7月27日に、新塗色の第一編成が登場(10004F)。その後、他の編成の新塗色化も進み、10006Fの新塗色化により、本系列の新塗色化は終了した[3]。この結果、本系列で採用されたターコイズグリーン一色の塗色は登場から8年で消滅した。また、全ての編成が新ロゴの「KEIHAN Keihan Railway」に貼り替えられた。
当系列の製造は24両をもって打ち止めとなった(6000系より続いた大型非常扉を採用した車両も当系列が最後となっている)。あとに続く一般車は2代目3000系[4]および当系列をベースに3000系の意匠も取り込んだ13000系が投入されている。
その他
特別塗色・ラッピングなど
- 2002年7月には立命館宇治高等学校の校舎移転による小型の広告が10001Fに貼り付けられ、ヘッドマークも装着されていた。
- 2002年11月にはGOGO! トレインの発売をPRをするヘッドマークが10001Fに装着された。
- 2003年8月 - 9月まで10001Fはダイヤ改正の告知の広告が貼付されていた。
- 2004年7月28日から2005年3月1日まで10001Fはe-kenet PiTaPaのラッピングが施された「e-kenet PiTaPa train」として運行されていた。
- 10003Fは2006年7月29日より2007年1月25日にかけて「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングとなり、初日には特別に運用変更で本線区間急行で運用した(一部時間帯のみ)。
- 10001Fは2011年3月19日より2012年3月31日にかけて「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングとなった[5]。
- 10006Fは2013年3月2日より2014年3月23日の予定で「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングとなった。さらに夏頃にはキャラクターの投票により1位となったキャラクターのラッピングが登場する予定となっている。また車内装飾がされ、10時から16時に運用される列車では、トーマスの声優を務める比嘉久美子の録音による車内自動放送に変更される。[6]
運用
- 2006年1月4日には車両故障によるダイヤ乱れにより、10001FがK特急「おりひめ」の1本に充当された。4両のK特急運用はこれが初めてである。
- 2006年8月10日には宇治川花火開催に伴う運用変更で準急「ひこぼし」の運用に2本入った(10002F・10005Fが充当)。そのうち1本は「ひこぼし」での折り返し前に本線区間急行に充当されている。
- 2006年10月22日には、天満橋駅で開催された鉄道の日イベント開催に伴うアクセス列車として10003Fを使用した臨時K特急「おりひめ」が私市 → 天満橋間で運転された。土曜・休日のK特急運用はこれが初めてである。「おりひめ」のヘッドマークとともに「鉄道の日」のキャラクター「テッピー」副標識を付けての運転となった。天満橋到着後は同じく「きかんしゃトーマスとなかまたち」ラッピングとなった7203Fとともに展示され、展示後は特別に運用変更で本線区間急行で運用された。
- 2006年11月19日にも10003Fによりファミリーレールフェア直通臨時列車で天満橋から寝屋川車庫まで運行し、約1か月ぶりに本線を走行した。
- 2007年1月21日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車ラストランとして10003Fを使用した臨時列車が運転された。特に、宇治始発の天満橋行は宇治快速以来のことであり、また特急が新停車駅になってからは初めてのこと、宇治線での特急設定は臨時ながらも初であったため、多くのファンが撮影などに押しかけた。ただし、停車駅は宇治快速時代と異なり、宇治線内は各駅に停車していた。
- 2007年8月10日には宇治川花火開催に伴う運用変更で準急「ひこぼし」の運用に1本入った(10001Fが充当)。
- 2011年3月19日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車運行開始記念として10001Fを使用した臨時快速急行が中之島 → 私市間で、臨時普通が私市 → 枚方市間でそれぞれ運転された。土曜・休日の交野線直通快速急行運用はこれが初めてである。
- 2011年5月5日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車の10001Fを使用した臨時快速急行「私市ハイキング号」が中之島 → 私市間で、臨時普通が私市 → 枚方市間でそれぞれ運転された。「私市ハイキング号」は約9年ぶりの運転となった(ただし当時の名称は「きさいちハイキング号」)。
- 2011年7月9日には「きかんしゃトーマス」ラッピング電車の10001Fが宇治線で運用された。
- 2013年6月15.16日には宇治線開業100周年記念イベントに併せて「きかんしゃトーマス」ラッピング電車の10006Fが宇治線で運用された。
七夕伝説
- 2008年7月7日には「七夕伝説」イベントに伴う「おりひめ」「ひこぼし」の出逢いとして、10001Fに「おりひめ」のヘッドマークを取り付け、準急「ひこぼし」に充当された1929Fと共に、私市駅で19:04 - 19:07の3分間「おりひめ」「ひこぼし」の並びが演出された。この「おりひめ」ヘッドマークは、通常のK特急としては運転されなかった代わりに、交野線内の普通列車1往復に取り付けたため、通常の「直通K特急 私市 → 淀屋橋」の表記を、「七夕伝説 枚方市⇔私市」と差し替えた、7月7日限定の特別のものであった。
脚注
外部リンク
- ↑ ただし2008年の幕交換以降は行先幕の様式が異なっている。
- ↑ 実際の塗装変更の完了は、予定より若干遅れた2013年6月となった。
- ↑ 京阪10000系全編成が新塗装に - 鉄道ファン railf.jp 2010年4月29日
- ↑ 2008年に製造された2代目3000系は主に快速急行や特急など優等列車に重点的に運用されており、京阪でいうほかの「一般車」とは性格が大いに異なる。
- ↑ テンプレート:PDFlink 2011年2月17日、京阪電気鉄道
- ↑ テンプレート:PDFlink 2013年2月18日、京阪電気鉄道