世界人権宣言
世界人権宣言(せかいじんけんせんげん、Universal Declaration of Human Rights、略称:UDHR)は、1948年12月10日の第3回国際連合総会で採択された、すべての人民とすべての国が達成すべき基本的人権についての宣言である(国際連合総会決議217(III))。正式名称は、人権に関する世界宣言。
世界人権宣言は、この宣言の後に国際連合で結ばれた人権条約の基礎となっており、世界の人権に関する規律の中でもっとも基本的な意義を有する。
これを記念して、1950年の第5回総会において、毎年12月10日を「世界人権デー」とし、世界中で記念行事を行うことが決議された。日本は、この日に先立つ1週間を人権週間としている。
宣言の内容
法規範性についての争い
世界人権宣言は、条約ではなく、総会において採択された決議である。国際連合総会決議は勧告であり法的拘束力がないために、世界人権宣言も拘束力がないのではないかという問題がある。
これに対して、慣習国際法を明文化したものであり、慣習国際法としての拘束力があるとする説がある。しかし、宣言がみずから前文で、「権利を創設する」としており、また、当時の人権状況をみれば慣習国際法とはいい難いと批判されてもいる。
そこで、宣言に法的拘束力を認める有力説として、現在では、慣習法になる手前の段階である「ソフト・ロー」として法的拘束力があるとする説や宣言が採択された当時は拘束力がなかったものの、その後に宣言を基礎にした各種人権条約の発効や各国の行動によって現在は慣習国際法になっているとする説がある。後者が多数において支持されている説になる。
なお、世界人権宣言の内容の多くは、国際人権規約などによっても明文化されており、その後の国際人権法にかかる人権条約はすべてその前文において国際連合憲章の原則と共に、世界人権宣言の権威を再確認している。しかし、人権状況に問題がある多くの国は、これらの条約に署名していないことが多い。そのため、世界人権宣言そのものの法的拘束力を認めるための論議が行われるのである。
しかしながら世界人権宣言を根拠とした「人権と基本的自由の保護のための条約」は欧州人権裁判所によって加盟国の憲法をも上回る法的拘束力を与えられ、欧州連合加盟国によって議論された「欧州憲法」中にもこの世界人権宣言が含まれている。
関連項目
- 国際人権法
- 人間と市民の権利の宣言(フランス人権宣言)
- 人種的差別撤廃提案(パリ講和会議)
- 法の不遡及 - 極東国際軍事裁判 - 東條英機ら「A級戦犯」7人の処刑は世界人権宣言採択の13日後である。
- 国連人権賞
外部リンク
- 世界人権宣言公式サイト(各国語翻訳ページ)(国連人権高等弁務官事務所) - 300以上の言語に翻訳された世界人権宣言の全文を収録。
- 世界人権宣言の日本語訳
- 世界人権宣言(仮訳文)(外務省)
- 世界人権宣言(谷川俊太郎による訳)(アムネスティ・インターナショナル・ジャパン)