レーザー冷却

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テンプレート:出典の明記 レーザー冷却(レーザーれいきゃく)とは、レーザー光を用いて、気体分子の温度を絶対零度近くまで冷却する方法のこと。おもに、単原子分子、もしくは単原子イオンに用いられる。

原理

ここでは主にレーザー冷却過程のうちおおむね数ケルビンから数ミリケルビンの領域で有効に働くドップラー冷却過程について説明する。

ドップラー冷却

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原子やイオンは電磁波)を吸収すると、その光のエネルギー(光子運動エネルギーE = h ν(hプランク定数、ν:光の振動数)を受け取って、光圧という力を光の進行方向へ受ける。ドップラー冷却過程ではこの光圧を利用する。簡単のためにまず、一次元での説明を行う。

まず、冷却しようとしている物質は気化しているものとする。また、圧力は充分に低く、原子(イオン)同士の相互作用は無視できるくらい低い確率でしか起こらないものとする。ここに、左右両方向から、冷却しようとしている原子の吸収波長よりもやや長波長側に調節した同じ強度のレーザー光を照射したとする。

もし、原子(イオン)が右に運動していると、左右から照射されている光の原子から見た波長は光のドップラー効果により変化をする。この変化の符号は反対で、具体的には右から照射されている光の波長は原子から見て短くなり、左から照射されている光の波長は長くなる。これにより右から照射されている光の波長は吸収波長により近づき、左から照射されている光の波長は遠ざかることになる。右から照射されている光の吸収確率が増え左から照射されている光のそれが減ることにより、実質的に左向きの光圧を受けることになる。逆に左に運動している原子は、同様の過程により実質的に右向きの光圧を受ける。

左右どちらに運動していても運動方向と反対向きの光圧を受けることになり、原子(イオン)の平均速度は減少する。つまり左右方向の運動について冷却される。これは三次元空間の各軸について同時に行なうことができ、全ての軸について運動エネルギーを減らす、すなわち冷却することができる。

なおレーザー光を吸収することで原子(イオン)の得たエネルギーは、原子を励起させたのち自然放射によって放出される。この際の放射は全方向にランダムに起こるため、その際の光圧は原子の平均速度には寄与しない。しかし、原子の温度すなわち運動エネルギーは原子の根二乗平均速度に比例し、これはこの自然放射により増大する。

ドップラー冷却過程で到達できる温度はドップラー効果由来の光圧のアンバランスによる冷却効果と、自然放射による加熱効果のつりあいで決まり、使用する原子(イオン)の吸収線の線幅に比例する。ナトリウムルビジウム等のアルカリ金属原子、水素、準安定希ガス原子についてはこの線幅はメガヘルツオーダーであり、ドップラー冷却限界温度はミリケルビンのオーダーとなる。ストロンチウム等のアルカリ土類原子についてはキロヘルツのオーダーの吸収線が使用可能であり、その場合マイクロケルビンのオーダーとなる。

偏光勾配冷却

アルカリ金属原子等のように、レーザー冷却に用いる吸収線の下状態が角運動量を持つ場合、レーザー冷却の次のステップとして偏光勾配冷却過程が使用可能である。偏光勾配冷却過程ではドップラー冷却限界以下への冷却が可能である。この場合の冷却限界は光子反跳温度で与えられる。光子反跳温度は原子(イオン)が光を一回吸収あるいは放出する際の速度変化に対応する温度であり、大抵の場合マイクロケルビンかそれ以下である。このことから、偏光勾配冷却過程の冷却限界温度も数マイクロケルビン程度となる。

限界

ドップラー冷却過程、偏光勾配冷却過程を含むレーザー冷却が有効に働く大前提として原子(イオン)同士の相互作用が無視できるというものがある。ボーズ=アインシュタイン凝縮を実現するためには高密度を実現する必要があり、レーザー冷却のみではこれは達成不可能である。このため、原子系でのボーズ=アインシュタイン凝縮の実現のためには更にもう一段階、蒸発冷却を必要としている。

応用

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形成された絶対零度近くの分子やイオンの集団は量子性を顕著に表し、ボース=アインシュタイン凝縮の検証、量子コンピュータの実験などに用いられる。

関連項目