ルノー・5

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ファイル:Renault5front.JPG
ルノー 5(ヨーロッパ仕様)

ルノー 5Renault 5 )は、フランスの自動車会社ルノーが製造したハッチバック型の小型乗用車

第一世代

ファイル:R5 Round head lamp 001.JPG
初期に日本へ導入されたモデル

フランス語では「5」と書いてサンクと読む。日本でも「サンク」と呼ばれることが多い。

1972年に発売され、その先進的なデザインと高い実用性から瞬く間にヨーロッパ中でベストセラーとなった小型前輪駆動 (FF) 車である。

ボディサイズは全長3,505×全幅1,525×全高1,400mm、ホイールベース右2,405mm/左2,435mm。

現在の前輪駆動車としては珍しくなったエンジン縦置き配置のレイアウトを持っており、さらに車体前からトランスミッション、デフ、エンジンというあまり例のない配置となっている。エンジン位置とフロントタイヤ位置の関係は、フロントミッドシップと言える。

これはベースとなったルノー・4(キャトル)と同じであるが、それは、4が、その先代であるリアエンジン4CVのエンジン/駆動系をそのままの配置で前に移したことに由来する。

この配置のため室内側にエンジンの一部が食い込んでおり、エンジンの熱が室内に籠もり易く、特に日本の夏季には不快であった。

エンジンは4用に使用されていた800ccと1,000cc(フランス国内向け)のガソリンエンジンであった。後に1,300ccが追加され、アルピーヌ(後述)のベースエンジンとなった。

サスペンションは前輪部がダブルウィッシュボーン、後輪部がトレーリングアームであった。スプリングは前後輪とも、スペース効率と乗り心地に優れるトーションバー(ねじり棒ばね)を用いており、フロントは縦置き、リアは横置きとされた。軸重の軽いリアはばねを柔らかくする(ばね定数を下げる)必要から車幅いっぱいの長さを確保しており、室内スペースを侵食しないよう左右のばねを前後に並べて取り付けてあり、それに伴い左右のトレーリングアームの支点もその分ずれているため、ホイールベースが左右で30mm異なる。これは4から受け継がれたアイデアで、5ではこれに留まらず、既存ルノー各車の部品が多用されている。

デザインは現在の目から見ても魅力的な、前後に世界初となる樹脂バンパーを備えた3ドアのハッチバックである。スタイリングは、ルノー社内デザイナー、ミッシェル・ブエ(Michel Bouë )がほぼ独力で作業したものと言われている。しかし彼は発表寸前にこの世を去った。

フランス内外で数限りない限定仕様車が発売され、1979年に5ドア版を追加し、内装等が大きく変更されるなどして長年ベストセラーの座を保ったものの、1985年を持って本国フランスでの生産が終了し、後継モデルのシュペール5に引き継がれた。またR1229モデルがトヨタ・南アフリカでも生産されていた。その後もイランなどで生産が継続されていたが、まもなくダチア・ロガンに切り替わる予定である。

バリエーション

  • ル・カー - アメリカ合衆国ではル・カー(Le Car )の名でAMCから販売され、このモデルのイメージを追った仕様が、同名でフランスでも限定仕様として発売された。
  • シエテ(7) - スペインなどで4ドアバージョンのシエテ(スペイン語で「7」の意味)も生産された。スペインでの小型ファミリーカー需要の高さから生まれたモデルで、バンパーや内装が異なっていた。
  • アルピーヌ - ルノーが傘下に収めたチューナーでスポーツカーメーカーのアルピーヌがプロデュースし、1976年に登場したスポーツバージョン。5アルピーヌは1,400cc、最大93馬力のエンジンと、より操縦性を高めたサスペンションを備えていた。外観にあしらわれたピンストライプが特徴。但し、イギリスでは、商標上の都合から「ゴルディーニ」と名乗っていた。そのターボ版が5アルピーヌ・ターボで、1979年登場、エンジンは最大110馬力を発生した。
  • 5ターボ - エンジンの位置を車体中心部に移し(ミッドシップ)、WRC(世界ラリー選手権)のグループ4 (Group 4) ホモロゲーションモデルとして製作された5ターボが開発され、それまでのルノー車中最高価格で少量販売された。ミッドシップの後輪駆動で、ベース車とは逆に近いレイアウトとなった。後に、普及版の5ターボ2も登場。

日本における初代5

日本に輸入され始めたのは1976年。それまでの日英自動車に代わり、新たにルノーの代理店になったキャピタル企業がそれまで扱っていたミニの代わりに取り扱い始めた。当初は排ガス対策用の触媒を装備していたことから、北米仕様を販売していた(大型バンパー/丸形ヘッドライト装備)。ところがこの北米仕様は、肝心のその排ガス対策が原因で調子を崩すクルマが多く、またさび止め処理も徹底しておらず、長く残る個体が少なかった。

輸入初期には、排ガス規制のために取り付けた触媒が高熱を発し、塗装にヒビが入る、ボンネットに触ると火傷するなどの問題が起きた。

その後フランス本国仕様をベースに変更し、外観も本国と変わらなくなり、徹底した改善により品質を安定させ、魅力を増した。

後に右ハンドルのAT仕様やアルピーヌ仕様(後にターボ付きになる)、さらに5ドアも輸入され、5ターボ2も少数輸入された。

欧州仕様モデル一覧。

モデル 製造期間 モデルコード 排気量
最大出力
DIN
最大トルク
DIN
最高速度
パワーウェイト
レシオ
前進
ギア数
ブレーキ 前/後
5L 1972年-1976年 R1220 782cc 36ps/5,200rpm 120km/h 20.28kg/ps 4MT ドラム
ドラム
5L 1977年-1984年 R1221 845cc 37ps/5,500rpm 5.9kgm/2,500rpm 126km/h 19.73kg/ps 4MT ドラム
ドラム
5Lauréate L 1985年 R1222 956cc 44ps/5,500rpm 6.5kgm/3,500rpm 136km/h 17.61kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5TL 1972年-1979年 R1222
R1392
956cc 47ps/5,500rpm 6.5kgm/3,000rpm 135km/h 16.7kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5TL 1980年-1984年 R1227
R1397
1,108cc 45ps/4,400rpm 8.7kgm/2,000rpm 137km/h 16.71kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5Lauréate TL 1985年 R1397 1,108cc 45ps/4,400rpm 8.7kgm/2,000rpm 137km/h 16.56kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5GTL 1976年-1979年 R1225
R1395
1,289cc 42ps/5,000rpm 8.6kgm/2,000rpm 136km/h 17.74kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5GTL 1980年-1984年 R1227
R1397
1,108cc 45ps/4,400rpm 8.7kgm/2,000rpm 137km/h 16.71kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5Lauréate GTL 1985年 R1397 1,108cc 45ps/4,400rpm 8.7kgm/2,000rpm 137km/h 17.44kg/ps 5MT ディスク
ドラム
5LS 1974年-1975年 R1224 1,289cc 64ps/6,000rpm 9.6kgm/3,500rpm 155km/h 12.03kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5TS 1975年-1981年 R1224 1,289cc 64ps/6,000rpm 9.6kgm/3,500rpm 151km/h 12.5kg/ps 4MT ディスク
ドラム
5TS
5TX
1982年-1984年 R1229 1,397cc 63ps/5,250rpm 10.5kgm/3,000rpm 154km/h 13.02kg/ps 5MT ディスク
ドラム
5アルピーヌ 1976年-1981年 R1223 1,397cc 93ps/6,400rpm 11.8kgm/4,000rpm 175km/h 9.14kg/ps 5MT ディスク
ドラム
5アルピーヌターボ 1982年-1985年 R122B 1,397cc 110ps/6,000rpm 15.2kgm/4,000rpm 186km/h 7.91kg/ps 5MT ディスク
ディスク
5オートマチック 1978年-1981年 R1225
R1395
1,289cc 55ps/5,750rpm 9.6kgm/2,500rpm 140km/h 14.73kg/ps 3AT ディスク
ドラム
5オートマチック
5TXオート
1982年-1984年 R1229
R1399
1,397cc 58.5ps/5,250rpm 10.3kgm/3,000rpm 142km/h 14.02kg/ps 3AT ディスク
ドラム

第二世代(シュペール5)

ファイル:Renault superfive.jpg
シュペール5 リヤビュー

シュペール5Super 5 )は、5(サンク)の後継車種にあたるFFでハッチバック式の小型乗用車。

当時のルノーはモデルチェンジとともに車名を変更するのが通例だったが、この5に限っては大ヒット作であるため踏襲した。正式には旧モデルと変わらず単に5(サンク)という名であったが、区別をするためシュペールサンクと呼ばれた。

ボディは3ドアハッチバックと5ドアハッチバック。ボディサイズは3ドアが全長3,590×全幅1,590×全高1,365mm、ホイールベース2,410mm。5ドアが全長3,650×全幅1,590×全高1,370mm、ホイールベース2,465mm。世界的な潮流から軽量化が推し進められたが、旧型の5に見られたしっかり感はやや薄らいだ。内外装ともイタリアのデザイナーであるマルチェロ・ガンディーニが担当した。

エンジンは、956cc、1,108cc、1,397ccとそのターボ付き、1,721ccのガソリンエンジン、1,596ccのディーゼルエンジン。駆動系は大きく変更され、横置きとなった。

サスペンションはフロントがストラット、リアがトレーリングアームであった。スプリングは、前輪部がコイルで後輪部がトーションバーとなった。

  • 1984年10月 - 発表され、旧モデルに続きベストセラーとなり約400万台が生産された。
  • 1987年 - マイナーチェンジが実施され、前後バンパー、フロントグリルなどが変更され、真ん中にあったルノーのバッジが左側に寄せて装着された。
  • 1990年 - クリオが発表されその座を譲ったが、シュペール5の製造はスロベニア1996年頃まで続けられた。

バリエーション

  • バカラBaccara ) - シュペール5の豪華装備車。レザーシートや革巻きのハンドルが標準で用意され、荷室のトレイはそのままレザー製のジャケットケースとなっている。高級ベーシックカーの元祖となった。
  • GTターボ - 旧型の5ターボとは全く関係がなく、単にシュペール5のスポーツモデル。5アルピーヌターボの後継車にあたる。外観はオーバーフェンダーサイドスカートスポイラー付きバンパーなどで差別化され、馬力も115PS(後期型は120PS/5750rpm)(『80年代輸入車のすべて』三栄書房、12頁参照)まで上げられた。キャブレター冷却用に専用の電動ファンを装備していた。ボディサイズは全長3,600×全幅1,600×全高1,360mm、ホイールベース2,405mm、車重850kg。
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エクスプレス(フェイズ1)
  • エクスプレスExpress ) - 1986年発表のシュペール5をベースにしたモデル。商用がメインだが、貨客兼用や乗用もある。ホイールベースを延長し、Bピラーから後半部を箱状の荷室にしたフルゴネットで、4(キャトル)フルゴネットの後継車。シュペール5の生産終了後はスペインブラジルアルゼンチン台湾で生産が継続され、マイナーチェンジでエンジンの変更や跳ね上げ式バックドアが加わるなど、カングーの登場までその役割を果たした。

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関連項目

登場するメディア作品

小説

外部リンク

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