ラーテ
テンプレート:Infobox Weapon ラーテ(独:Ratte)は、第二次世界大戦中にドイツで計画された超巨大戦車、Landkreuzer P1000(陸上巡洋艦 P1000)に与えられた秘匿名称である。
より原語の発音に近いであろうカタカナ表記ではラッテとなる。ラッテとはドイツ語でハツカネズミ属よりも大型の鼠であるクマネズミ属のもの、主にドブネズミ及びクマネズミを意味する[1][2]。
概要
ドイツの開発・製造した超重戦車としては重量188 t のマウスや140 tのE-100が知られているが、ラーテの規模はこれらの超重戦車をはるかに凌ぐ、重量約1,000トン、全長35m、全幅14m、高さ11mという桁違いのもので、「陸上戦艦」の異名を持ち、シャルンホルスト級戦艦の主砲塔である28cm 3連装砲から中砲を廃止した[3]2連装砲塔を搭載する予定であった。
装甲性能は主砲塔転用予定のシャルンホルスト級戦艦に準じていると考えられ、砲塔及び車体上面装甲は最低でも180㎜に達し、側面及び正面装甲も同様に350㎜以上を想定していたとされ、エレファント重駆逐戦車を超える装甲を持つラーテに対しては、重砲の直接照準射撃や航空攻撃などの通常攻撃手段による無力化は事実上不可能である、とされていた。
このように「妄想」としか表現しようのない存在が計画された要因として、ドイツ陸軍は実際に80cm列車砲「ドーラ」という口径80センチの巨大列車砲を実用化しており、技術的にも実用面からも充分に可能である、と考えられていた。
80cm列車砲には軌道上を移動する列車砲ではなく陸上を移動できる「自走砲」化の計画があり、ラーテはこの延長線上で計画されたものであろうと考えられている。ドイツでは本車を更に凌ぐ重量1500t級の超巨大戦車、“Landkreuzer P1500 Monster(陸上巡洋艦 P1500 モンスター)”すら構想されていた。
しかし、現実問題として50トン程度の重戦車ですらその自重のために橋が渡れないことを想定してシュノーケル装備による潜水渡河を考慮しており、軟弱地盤にはまって行動不能になる。また、機械故障や戦闘損傷で走行不能になった際の回収作業に相当の困難を生じたことを考えれば、1000トン・1500トン級の超巨大戦車が完成したとしても、道路や橋がその重量を支えられるはずもなく、故障・損傷が生じた際の対処は事実上不可能に近いものがあったと推察される。
ティーガーI重戦車の実戦での運用結果から上記のような問題が現実の事項として認識されるようになり、軍需大臣アルベルト・シュペーアにより1944年にはラーテはP1500と共に計画中止とされ、構想のみに終わった。
スペック
※計画値
- 全長=39.00 m(※砲身先端まで)
- 車体長= 35.00 m
- 全幅= 14.00 m
- 全高= 11.00 m
- 最低地上高= 2 m
- 重量= 1000トン
- 装甲= 360 - 150 mm
- 武装
- 主武装= 2x 280 mm 54.5 SK C/34
- 副武装= 1x 128 mm KwK 44 L/55
8x 20 mm Flak38
2x 15 mm MG 151/15
- 機関= 8x ダイムラー・ベンツ MB501 20気筒 船舶用ディーゼルエンジン
もしくは 2x MAN V12Z32/44 24気筒 船舶用ディーゼルエンジン- 機関出力= 16,000 or テンプレート:Convert
- 速度= 40 km/h
- 航続距離= 約テンプレート:Convert
- 乗員= 20名以上、最大で40名程度
脚注
- ↑ 日本では「ラッテ」(英語ではラット(Rat)とは主に実験動物として飼育されるドブネズミの飼育変種(和名としては「ダイコクネズミ」の名でも呼ばれる)を指すことが多い。
- ↑ このようにドイツ軍は超重戦車を「ネズミ」に喩え、小型の無人無線操縦戦車に聖書神話の巨人の「ゴリアテ」の名を与えていた。これは実際とは逆のイメージを与える単語を選ぶことにより、実際の存在を秘匿することが目的であったとされている。
- ↑ 中砲を廃したのは重量軽減の意図があったと言われている。
関連項目
外部リンク
- ラーテの想像図[1]