マトリックス (映画)
テンプレート:Infobox Film 『マトリックス』(The Matrix)は、1999年のアメリカ映画。もしくは、それ以降のシリ-ズの総称でもあり、この映画を題材にしたアメリカンコミックのこと。1999年9月11日日本公開。
SF作品であるが、従来から人気のカンフーファイトのテイストも含んでいる。ストーリーの各所にメタファーや暗示を置き、全体に哲学や信仰という奥深いテーマも表現している。従来のCGにはない、ワイヤーアクションやバレットタイムなどのVFXを融合した斬新な映像表現は「映像革命」として話題となった。
1999年のアカデミー賞では視覚効果賞、編集賞、音響賞、音響編集賞を受賞。
目次
あらすじ
トーマス・アンダーソンは、大手ソフトウェア会社のメタ・コーテックス[1]に勤めるプログラマである。しかし、トーマスにはあらゆるコンピュータ犯罪を起こす天才クラッカー[2]、ネオという、もう1つの顔があった。平凡な日々を送っていたトーマスは、ここ最近、起きているのに夢を見ているような感覚に悩まされ「今生きているこの世界は、もしかしたら夢なのではないか」という、漠然とした違和感を抱いていたが、それを裏付ける確証も得られず毎日を過ごしていた。
ある日、トーマスは「起きろ、ネオ」「マトリックスが見ている」「白ウサギについて行け」という謎のメールを受け取る。ほどなくしてトリニティと名乗る謎の女性と出会ったトーマスは、トリニティの仲間のモーフィアスを紹介され「貴方が生きているこの世界は、コンピュータによって作られた仮想現実だ」と告げられ、このまま仮想現実で生きるか、現実の世界で目覚めるかの選択を迫られる。日常の違和感に悩まされていたトーマスは現実の世界で目覚める事を選択する。次の瞬間、トーマスは自分が培養槽のようなカプセルの中に閉じ込められ、身動きもできない状態であることに気付く。トリニティ達の言ったことは真実で、現実の世界はコンピュータの反乱[3]によって人間社会が崩壊し、人間の大部分はコンピュータの動力源として培養されているだけという悲惨な世界だった。覚醒してしまったトーマスは不良品として廃棄されるが、待ち構えていたトリニティとモーフィアスに救われた。
トーマスは、モーフィアスが船長を務める工作船「ネブカドネザル号」の仲間として迎えられ、クラッカーとして使っていた名前「ネオ」を名乗ることになった。モーフィアスはネオこそがコンピュータの支配を打ち破る救世主であると信じており、仮想現実空間での身体の使い方や、拳法などの戦闘技術を習得させた。こうして人類の抵抗軍の一員となったネオは、仮想現実と現実を行き来しながら、人類をコンピュータの支配から解放する戦いに身を投じる事になった。
登場人物・キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替え | |
---|---|---|---|
ビデオ・DVD・日本テレビ | フジテレビ・日本テレビ | ||
ネオ(トーマス・アンダーソン) | キアヌ・リーブス | 小山力也 | 森川智之 |
トリニティー | キャリー=アン・モス | 日野由利加 | 戸田恵子 |
モーフィアス | ローレンス・フィッシュバーン | 玄田哲章 | 内海賢二 |
タンク | マーカス・チョン | 坂東尚樹 | 岩崎ひろし |
ドーザー | レイ・パーカー | 宝亀克寿 | |
警部補 | ビル・ヤング | ||
サイファー | ジョー・パントリアーノ | 金尾哲夫 | 樋浦勉 |
ラインハート | デビッド・アストン | ||
エイポック | ジュリアン・アラハンガ | 山野井仁 | 水野龍司 |
マウス | マット・ドーラン | うえだゆうじ | 石田彰 |
スウィッチ | ベリンダ・マクローリー | 紗ゆり | 唐沢潤 |
エージェント・スミス | ヒューゴ・ウィーヴィング | 中多和宏 | 大塚芳忠 |
エージェント・ブラウン | ポール・ゴダード | 安井邦彦 | |
エージェント・ジョーンズ | ロバート・テイラー | 石井康嗣 | |
オラクル | グロリア・フォスター | 此島愛子 | 片岡富枝 |
チョイ | マーク・グレイ | 小形満 | |
宅配便の男 | デヴィッド・オコナー | 川島得愛 | |
ドゥジュール(白いうさぎの女) | エイダ・ニコデモ |
スタッフ
- 監督:ウォシャウスキー兄弟(アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー)
- 製作:ジョエル・シルバー
- VFX:マネックス・ビジュアル・エフェクツ(MVFX)
- 音楽:ドン・デイヴィス
- カンフーアクション指導:ユエン・ウーピン
作品解説
「MATRIX」という語
「Matrix」はラテン語の「母」を意味するmaterから派生した語で、転じて「母体」「基盤」「基質」「そこから何かを生み出す背景」などの概念を表す。
本作では、コンピュータの作り出した仮想現実を「MATRIX」と呼んでいる。
撮影
ロケーション撮影はシドニー(オーストラリア連邦)で主に行われた。
影響
作品はウィリアム・ギブスンから日本のアニメまで様々なものに影響を受けた上で、特にジャン・ボードリヤールの哲学を基調としたとウォシャウスキー兄弟は語っている。
実際「MATRIX」という単語自体が、ボードリヤールの著書『シミュラークルとシミュレーション』の中に掲げられており、これが出所となったという見方もある。作中ではハードカバーのボードリヤールの本が映るシーンも見られる。2作目からボードリヤール本人をアドバイザーに迎える計画があったが、断られたという。
ウォシャウスキー兄弟曰く、脚本の大部分はレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの『Wake Up』を聴きながら書き上げたとのこと。映画でもエンディング・テーマに起用されており、そのバンド名やその活動自体が正にマトリックスの世界そのものとされている。
影響を受けた作品
テンプレート:独自研究 本作は、日本のアニメーション作品や香港のアクション映画などの影響や類似点を指摘されている[4]。また人間が生活する空間を「仮想現実」とする設定も過去の作品や哲学に多く見られた設定である。
- シミュラークルとシミュレーション
- 1981年出版のジャン・ボードリヤールの著書。監督のウォシャウスキー兄弟は『シミュラークルとシミュレーション』からストーリーのヒントを得たという。[5]
- ニューロマンサー
- 1984年出版のウィリアム・ギブスンの小説。当初、監督のウォシャウスキー兄弟は『ニューロマンサー』の映画化を目指したがスポンサーがつかず、企画が変更された。共通点は「マトリックス」という電脳空間、人工知能が自我を持つ聖域の「ザイオン」、人体に埋め込んだジャックにプラグを挿して電脳空間へ移動、などである。なお下記の『攻殻機動隊』も、『ニューロマンサー』の影響を受けたとされる。
- ゼイリブ
- 1988年公開のジョン・カーペンター監督による映画。人間に変装した宇宙人たちによって知らぬ間に支配されている世界が舞台であり、主人公はふとしたことから入手した特殊なサングラスを通して宇宙人の変装を見破れるようになり、その状況を暴露するために奔走するという内容。人類がなにものかに知らぬまま支配されているという点、サングラスをかけると真実が見えるという点は[6]ゼイリブからのテンプレート:要出典範囲。
- GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊
- 1995年公開。原作:士郎正宗、監督;押井守による劇場用アニメ映画。『アニマトリックス』の中で、製作のジョエル・シルバー自身が、「監督のウォシャウスキー兄弟に『攻殻機動隊』を見せて、俳優による実写版で映像化したいと言った」と明言しているように、このアニメ作品からインスパイアされたことは広く知られている。共通点はオープニングの黒い画面にグリーンの文字が流れる通称「マトリックスコード」[7]、後頭部にプラグを挿す、ビルの屋上に着地した際に地面のコンクリートがめくれ上がる、ロビーでの銃撃戦で柱が粉砕される、市場での銃撃シーンでスイカが被弾して割れる、全裸で水溶液に浸かる人間などである。このほかにも日本のアニメ特有のカット割りなどを多用している。
- AKIRA
- 1988年公開。原作・監督:大友克洋によるアニメ映画。マトリックスに影響を与えたとされ[8]、銃弾を目の前で止めるシーンなどに似ている点が見られる。
- 獣兵衛忍風帖
- 1993年公開。原作・監督:川尻善昭によるアニメ映画。アクションシーンの表現に影響を受けたとされる[9]。『攻殻機動隊』『AKIRA』と共にウォシャウスキー兄弟とマトリックスのスタッフが好きなアニメの一つとして知られ[8]、ウォシャウスキー兄弟が製作で参加した『ニンジャ・アサシン』にも本作からの影響が見られる[10]。
- ジョン・ウー
- 映画監督。サングラスと黒いロングコートに二丁拳銃というスタイル、スローモーションを多用した銃撃戦、銃を複数用意して弾が切れたら再装填せずに捨てて次を抜く、激しい銃撃にコンクリートの壁が崩れるなどの描写は、ウー監督が得意とするガンアクションの演出と酷似している。
- ブルース・リー
- 映画俳優。カンフーアクションの際の手足の動きや顔の表情などに、リーの影響がある。「考えるな。感じるんだ」という台詞に至っては、リーの代表作『燃えよドラゴン』で使われた言葉そのもの。
- ジェット・リー
- 映画俳優。キアヌ・リーブスはマトリックスに出るための準備として見た『マスター・オブ・リアル・カンフー 大地無限』『フィスト・オブ・レジェンド 怒りの鉄拳』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』によりジェット・リーを知りスタイルのヒントになったという[11]。またマトリックスでカンフーアクションの指導を行ったユエン・ウーピンは上記の3作に関わった人物でもある。
DVD
2000年に発売されたDVDは、3種類のパターンのDVDが順番に発売された。3種類ともジャケットのパターンが異なる。コメンタリーはケン・ウィルバーとコーネル・ウェストが担当、コーネル・ウェストは劇中に出演もしている。
DVDが普及する前であったので、今作のDVDは同時期に発売されたPS2の売り上げに大きく貢献、DVDプレーヤー普及となるキラーコンテンツの一つとなった。
ちなみに本作以前のDVDはメインメニュー画面が4:3だったが、この映画のDVD発売を境にメニュー画面も16:9となり、完全にワイドテレビ対応になった。これらのうち2種類を購入した人を対象として、抽選で2,000名に「特製ケース付きオリジナルICテレホンカード(全3種類のうち1種類)」が当たるキャンペーンが行われた。
- マトリックス コレクターズ・ボックス完全英語版
- 特製ボックスにオリジナル台本や特大ポスターなどのグッズが封入された豪華版。本編DVDは日本語吹替え、日本語字幕なしの完全英語版。
- マトリックス 特別版
- 本編に加え、映像特典を追加した特別版。
- マトリックス ROM対応特別版
- 特別版の内容にROM特典を追加した内容。主にPC向けの特典。日本語吹替えが未収録の代わりにコレクターズ・ボックス完全英語版に収録されていたサウンドトラックを収録。
関連作品
- オリジナルビデオ
- アニマトリックス (The Animatrix)
- 劇場映画
- マトリックス リローデッド (The Matrix Reloaded)
- マトリックス レボリューションズ (The Matrix Revolutions)
- ゲーム
- 2003年5月20日には映画をモチーフとしたゲーム『ENTER THE MATRIX』が発売された。『マトリックス リローデッド』の内容と密接に関連している。
- 米国ワーナー・ブラザーズ社は、『マトリックス レボリューションズ』後の世界をモチーフにしたネットゲーム『The Matrix Online』のサービスを展開している。
豆知識
プログラミングの場面では、縦書きの裏返った半角カナや注音符号が登場する。これは ウォシャウスキー兄弟に日本のPCでは縦書きでプログラミングしていると、日本人のスーパーバイザーが吹き込んだのが原因(映画パンフより)。誰が吹き込んだのかは秘密だという。
脚注
外部リンク
- テンプレート:Official
- マトリックス - 金曜ロードショー(2011年6月24日放送分)
- テンプレート:Movielink
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- マトリックス - Movie Walker
- マトリックス - 映画.com
- テンプレート:Movielink
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テンプレート:マトリックス テンプレート:ウォシャウスキー兄弟 テンプレート:MTVムービー・アワード 作品賞 テンプレート:オリコン年間DVD総合チャート第1位 テンプレート:Asboxテンプレート:Link GA
テンプレート:Link GA- ↑ 同名の企業が実在する。
- ↑ ただし、劇中では『攻殻機動隊』などと同じように「ハッカー」と誤用されている。
- ↑ このコンピュータの反乱については、『アニマトリックス』を参照。
- ↑ マトリックスが影響を受けた作品、影響を与えた作品(英語版Wikipedia)
- ↑ 『マトリックス』でネオがチョイに渡したディスクを隠していた本がこれである。
- ↑ 「マトリックス」でのサングラスはあくまで真実を知る者のアイテムという記号的な存在としてである。
- ↑ もっとも、攻殻機動隊はアラビア数字が横方向に流れるが、マトリックスは仮名が縦方向に流れるという相違もある。
- ↑ 8.0 8.1 テンプレート:Cite web
- ↑ アニマトリックス 特典映像 Scrolls to Screen: The History and Culture of Anime
- ↑ Interview With Ninja Assassin Director James McTeigue /Film(英語)[1]
- ↑ Cyber Keanu by J.A. Bondy - Keanu Reeves on Matrix - interview, making-of article[2]