ホームスクーリング
ホームスクーリング(テンプレート:Lang-en)は、学校に通学せず、家庭に拠点を置いて学習を行うことをいう。オルタナティブ教育の形式のひとつであり、ホームスクール(テンプレート:Lang-en)、ホームエデュケーション(テンプレート:Lang-en)などともいう。
またホームスクーリングが盛んな米国などでは、家庭を拠点としながら大部分の時間を戸外の教育機関で過ごすケースが多々あるため、在宅教育(ホームスクーリング)とともに、自宅ベース教育(Home-based education ホーム・ベイスド・エデュケーション)と言う表現が使われる。
目次
概要
ホームスクーリングを教育形態で分類すると、教科書などを使い保護者等が教師役をつとめる、あるいは保護者監督のもとインターネットで在宅講座を受けるラーニング・アット・ホーム、他のホームスクール生徒とともに講義を受けるアンブレラ・スクール、子どもの自主性に任せて本人の学習する意欲・興味に従って教育を進めるアンスクーリング(ナチュラル・ラーニング)等がある。
交通機関が未発達だった近代以前は裕福層でも子供を一流の教育が受けられる学校に通わせることが難しく、そのような学校は寄宿舎制が大半であったため、子供を学校に通わせずに家庭教師を付けて自宅で教育する裕福層が多かった。
日本のホームスクーリング
日本の文部科学省は学校教育法[1]の規定により「義務教育を家庭で行うことを認めていない」としており[2]、従って、日本国内でこれを行う保護者は学校教育法に抵触する事になる。なお、率先して、この違法行為をしようとする動きが、日本の福音派のキリスト教会で散見される。東京都武蔵野市にある三鷹福音教会がその代表例である。
一方で、法令上、児童・生徒が授業に出席する義務、授業を受ける義務、考査や試験を受ける義務を負う旨を定めた明文の規定はないとする裁判所の判例が出ている[3]。誤解されがちであるが、「教育の義務」とは、教育を受ける権利者である子どもたちに対し、保護者がその機会を奪ってはいけないと言う意味である。
米国のホームスクーリング
2008年現在、米国では常に論争の的となってはいるが、ホームスクーリングは全州において合法とされている。ホームスクーリングをおこなう家庭を法的に支援するための民間団体として設立されたホームスクール法律擁護協会(HSLDA)の働きがみられる他、各地の草の根ネットワーク活動が活発である。ホームスクーリング関連のウェブサイト、ホームスクーラー向けの参考書や教科書、またそれを専門に販売する業者や店舗、インターネットスクールも多数存在する。また、主な大学のほとんどが、ホームスクーリング出身者の入学を受け入れている。ホームスクーリングで教育を受けたのちGEDを取得し大学に入学する学生がいる他、コミュニティ・カレッジではGED対策のためのクラスを設けている所も多い。
ドイツのホームスクーリング
ドイツでは教育を受ける権利と共に、既成の教育を受ける義務が「義務教育法」で定められており、親子共ホームスクーリングを受けるのは処罰対象となる。これにより、ホームスクーリング受講者・フリースクール通学者一家が国外脱出を迫られる例が増加しているという。義務教育#ドイツでの状況を参照。
イスラム社会のホームスクーリング
イスラム社会では女性が教育を受ける権利が著しく制限されている国があり、タリバン政権下のアフガニスタンのように女性が学校に通うこと自体を禁止した事例もある。このような国では女性の教育はホームスクーリングに頼っている。
ホームスクーリング選択の理由
ホームスクーリングを選ぶ理由は各家庭によって様々であるが、比較的多い理由は次のようなものである。
- 家が学校から遠い(デンマーク、オーストラリア、米国の農村部に多い)
- 宗教的・思想的な理由で、子どもや保護者が学校での学習内容に満足できない
- 宗教・思想・学習内容が合うオルタナティブ教育機関が通学範囲にない
- 宗教・思想・学習内容が合う私立校へ通う金銭的余裕がない
- 健康面等に問題がある
- いじめなど学校における問題のため、子どもが不登校になっているテンプレート:要出典
- 保護者が英才教育を希望している
- 芸能活動を行っており学校に通う時間がない
- イスラム教国の一部では国の政策により教育を受ける権利が制限されているため
日本ではいじめや不登校、健康上の問題など子どもの事情で在宅学習を進めるケースと、早期英才教育・ギフテッド教育・イマージョン教育を望んだり、教授言語を英語にして海外の大学等へ進学させたい保護者が導入するケースがある。
一方、アメリカ合衆国では宗教的な理由が上位に挙がるのが日本との大きな違いである。宗教的理由とは、大衆文化・進化論・早期性教育・セーフセックス・同性愛といった「世俗的」価値観から子どもの精神を守るためにホームスクールを行うことである。このような家庭では、キリスト教的観点から書かれた教科書(創造論も含む)や性教育副読本を用いたカリキュラムを利用し、アンブレラ・スクールに所属することが多い。思春期に当たる小学校高学年から中学校までなど、期間限定でホームスクーリングを行うケースもある。ただし、日本においても、一部のアメリカ人宣教師が開拓した教会においては、アメリカ合衆国と同じように宗教的な理由でこれを行っているケースが最近多くなってきた。千葉県千葉市内にあるおゆみ野キリスト教会のスタッフらはそのような理由でホームスクーリングを行っており、礼拝説教の中でも奨励している。
もう一つの特徴として、教科書や机に拘束される学校環境を嫌う家庭、あるいはアナーキストや反体制主義者で学校組織に組み込まれるのを嫌う家庭の子どもも学校に通わない。前者は学校環境にしばられない興味本位の学習手段アンスクーリング、後者は反組織主義を念頭に置いた脱学校(デスクーリング)と呼ばれる。
上記に挙げられた理由により、学校に入学する以前からホームスクーリングを選択する場合と、入学したが学校になじめず家庭で学習を継続する場合がある。そのほか期間限定あるいは毎年交互にホームスクーリングと私立校への通学を行うケースもある。また義務教育すべてを自宅やアンブレラ・スクールで行う方針の家庭もあれば、軽度の学習障害やパニック障害を持つ子どもを家庭で時間をかけて学習環境に慣らせていき、最終的に一般校に入ることを目標にする家庭もある。子どもの性格に合わせ、兄弟であっても一般校へ通学する子どもとホームスクーリングを受ける子どもがいる家庭もある。このようにホームスクーリングといっても様々な背景・動機による異なった形態がある。
脚注
参考文献
- 東京シューレ編『子どもは家庭でじゅうぶん育つ』東京シューレ出版、2006年。ISBN 4903192024
- 東京シューレ編『ホームエデュケーションのすすめ』教育史料出版会、1996年。ISBN 4876523053
- 東京シューレ編『ホームエデュケーション始めませんか』2008年
関連項目
テンプレート:Navbox- ↑ 学校教育法第17条・第18条では保護者は学齢児童・学齢生徒に対し、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由を除いて学校就学義務を規定しており、第114条でやむを得ない事由なく学校就学義務を履行しない保護者は罰金の対象となる。現在まで、罰金刑の適応例はない。
- ↑ 各国の義務教育制度の概要 文部科学省 HP
- ↑ 東京地方裁判所 平成9年 (行ウ) 第92号 平成13年12月6日判決