プライベート・バンキング
プライベート・バンキングとは、金融機関によって提供される、富裕層を対象に総合的な資産管理を行う金融サービスである。
概要
プライベート・バンキング・ビジネスは富裕層の様々な事情に対応するため、多様なサービスを提供している。
- 資産管理
- 資産全般のアドバイス、資産管理会社の設立支援など
- 資産運用
- 一任勘定を使用した資産運用など
- 事業継承・資産継承
- 顧客の次の世代への事業や資産の継承をより円滑に行うために、顧客へ助言を行う
- 税務・法律相談
- コンシェルジュサービス
- 顧客の人生をサポートするために、顧客の要望に応じ、様々なサービスを提供する。弁護士などの専門家の紹介、慈善事業や財団設立支援、美術品に関するコンサルティング、子供の教育への助言、専門医の紹介など
プライベート・バンキング・ビジネスは、金融機関の所属する金融グループ内で連携して総合的な金融サービスを提供している(銀行・信託・証券・不動産部門の連携など)。また、顧客の多くが企業オーナーであるため、顧客の事業展開のためのファイナンスや事業継承対策も重要な業務となっている。
口座開設に必要な金額があり、金融機関によりその金額は異なっている。日本で事業を行っている金融機関では三菱UFJメリルリンチPB証券で1億円以上[1]、UBSで2億円以上[2]、三井住友銀行で5億円以上[3]、クレディ・スイスでは10億円以上[4]となっている。
プライベート・バンキングはヨーロッパで古くから発達し、現在でもヨーロッパにはプライベート・バンキングを専門に業務を行う銀行が数多く存在する(詳細はPrivate bankを参照)。その中には、王侯貴族の資産を預かる銀行もあり、リヒテンシュタイン公国の公室の資産を預かるLGT Bank(1920年創業)、オランダ王室の資産を預かるMeesPierson(1720年創業)、イギリス王室の資産を預かるCoutts(1692年創業)などがある。
プライベート・バンキングの伝統が長いヨーロッパと、近年になってプライベート・バンキングが発達したアメリカでは、顧客利益に対する金融機関の立ち位置が根本的に異なっている。ヨーロッパのプライベート・バンキングは資産の保全・運用をカバーする“富裕層の総合的な財務コンサルタント”の性格が強く、資産運用の考え方も保守的で、元本を減らさない“保全”に力点をおいている。また、守秘義務など倫理観がしっかりしており、子供の教育相談など顧客の個人的な相談にものる、いわば“執事"に近い存在である。一方、アメリカのプライベート・バンキングは、ハイパフォーマンスの資産運用を重視するのが主流であり、いわば“投資顧問”に近い存在である。[5]。
世界のプライベート・バンキングを行う金融機関
世界のプライベート・バンキングは、プライベートバンクで有名なスイスや、世界の経済の中心であるアメリカにおいて、発達している。ヨーロッパではたびたび戦争が起きてきたが、スイスは古くから中立を保ってきたため、安全な資産の逃避先として、古くからプライベートバンキングが発達してきた。周辺のヨーロッパ諸国だけでなく、国情の不安定な中東などの遠い国々からも顧客を集めている[6]。米ボストン・コンサルティング・グループの推計によると、世界のオフショア資産の27%(2兆ドル)がスイスで運用されている[7](オフショア資産とは投資家の法的な住居がない国で運用されている資産)。また、米メリルリンチと仏キャップジェミニの調査によると、世界の富裕層の3分の1がアメリカに住んでおり[8]、多くの資産がアメリカの金融機関によって運用されている。
- スイスのプライベートバンク(スイス・プライベートバンカー協会 加盟行)[9]
- Bordier & Cie(ボーディエ)1844年設立
- E. Gutzwiller & Cie.(グッツウイラー)1886年設立
- Gonet & Cie(ゴネ)1845年設立
- Bank La Roche & Co(ラ・ロッシュ)1787年設立
- Bank Lombard Odier & Co(ロンバー・オディエ)1796年設立
- Mirabaud & Cie(ミラボー)1819年設立
- Mourgue d'Algue & Cie(モルギュアルギュ)1869年設立
- Banque Pictet & Cie(ピクテ)1805年設立
- Rahn & Bodmer Co.(ラン・アンド・ボドマー)1750年設立
- Reichmuth & Co.(ライヒムース)1995年設立
運用資産残高 上位25機関 2014[10]
順位 | 会社 | 国 | 運用資産残高 |
---|---|---|---|
1 | UBS | テンプレート:Flag | 19,669億ドル |
2 | バンク・オブ・アメリカ | テンプレート:Flag | 18,666億ドル |
3 | モルガン・スタンレー | テンプレート:Flag | 14,540億ドル |
4 | クレディ・スイス | テンプレート:Flag | 8,882億ドル |
5 | カナダ・ロイヤル銀行 | テンプレート:Flag | 6,732億ドル |
6 | BNPパリバ | テンプレート:Flag | 3,951億ドル |
7 | ドイツ銀行 | テンプレート:Flag | 3,841億ドル |
8 | HSBC | テンプレート:Flag | 3,820億ドル |
9 | JPモルガン・チェース | テンプレート:Flag | 3,610億ドル |
10 | ピクテ | テンプレート:Flag | 3,381億ドル |
11 | ゴールドマン・サックス | テンプレート:Flag | 3,300億ドル |
12 | ジュリアス・ベア | テンプレート:Flag | 2,825億ドル |
13 | バークレイズ | テンプレート:Flag | 2,332億ドル |
14 | ABN・アムロ | テンプレート:Flag | 2,317億ドル |
15 | ノーザン・トラスト | テンプレート:Flag | 2,218億ドル |
16 | ウェルズ・ファーゴ | テンプレート:Flag | 2,180億ドル |
17 | ロンバー・オディエ | テンプレート:Flag | 1,980億ドル |
18 | サンタンデール | テンプレート:Flag | 1,965億ドル |
19 | バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | テンプレート:Flag | 1,850億ドル |
20 | クレディ・アグリコル | テンプレート:Flag | 1,820億ドル |
日本でプライベート・バンキングを行う金融機関
日本においてもプライベート・バンキングが行われており、以下に代表的な金融機関を示す。
- 日本の金融機関