フォークリフト
フォークリフト (Forklift)は油圧を利用して上下や傾斜ができる荷受用の腕(フォーク)を前面に備えた荷役自動車[1]。ISOでは、forklift truck と呼称している。
JIS D 6201は、「フォークなどを上下させるマストを備えた動力付き荷役運搬機械の呼称」と規定している。ハンドリフトなど他の産業車両と区分するため
- フォークなどの貨物を保持する装置が装備されている。
- マストを保有する。
- 動力を持って走行、フォークなどの昇降をおこなう。
の3つの構造を満たすものをフォークリフトと定義する事が多い。
目次
歴史
1920年代にアメリカ合衆国で開発される。日本では1939年に日本輸送機製作所(現 : 日本輸送機)が「腕昇降傾斜型運搬車」として開発したが、普及はしなかった。第二次大戦後に進駐軍が持ち込んだことにより注目を集め、以後国内の様々なメーカーによって開発されるようになり、現在に至る[2]。また、東洋運搬機株式会社(現ユニキャリア)が実質的に国内初であるとの見方もある。
フォークリフトの種類
JISが規定しているフォークリフトの種類
JIS D 6201は、次の種類で分類している。
- 外観形状による分類
- カウンターバランスフォークリフト
- ストラドルフォークリフト
- パレットスタッキングトラック
- サイドフォークリフト
- リーチフォークリフト
- ウォーキーフォークリフト
- ラテラルスタッキングトラック
- 三方向スタッキングトラック
- オーダーピッキングトラック
- ラフテレーンフォークリフト
- マルチディレクションフォークリフト
- プラットフォームスタッキングフォークリフト
- 動力による分類
- 内燃機関(エンジン)式フォークリフト
- ガソリン車
- LPG車
- LPG・ガソリン併用車
- ディーゼル車
- 電気式フォークリフト
- 外部電源式バッテリ車
- エンジン・電気併用車
- 内燃機関(エンジン)式フォークリフト
- 車輪タイプによる分類
- ニューマチック車
- クッション車
- 操縦方式による分類
- 乗車式
- 座席式
- 前向座席式
- 横向座席式
- 立席式
- 前向立席式
- 横向立席式
- 歩行式
- 無人式
- 乗車式
日本産業車両協会の統計上のフォークリフトの種類
一般社団法人 日本産業車両協会は、次の区分で統計を発表している。
- エンジン式
- ガソリンエンジン
- ディーゼルエンジン
- バッテリー式
ITAのフォークリフトの区分
Industrial Truck Associationは、フォークリフトを次の種類に分類している。世界のフォークリフトの統計は全て下記の分類でおこなわれている。
- Class 1 Electric Motor Rider Rruck - Counter balanceed
- Class 2 Electric Motor Narrow isle Trucks
- Class 3 Electric Pedestrian Trucks
- Class 4 & 5 Interal Combustion Truck, Cushin and Pneumatic Tires
車両の特徴
- 前方にフォーク(つめ)があり、その「つめ」を荷物の下部やパレットに差し込んで、持ち上げて移動する。
- フォークを一定以上の高さにするとマスト(支柱)が伸び、高所の荷物も扱うことができる。マストは2段伸縮が多い。なお、マストは前後に傾けること(チルト)もできる。
- タイヤはチューブ付のものが使われるが、最近は小型機種でノーパンクタイヤの採用が増えている。リーチリフトはソリッドタイヤ(むく)である。色は黒が多いが、食品倉庫ではタイヤ跡が付かないよう白または緑のカラータイヤが使われる。
- 一般的に後輪操舵であるため、ハンドルの旋回方向と車両の挙動が普通の自動車とは異なり、運転には慣れが必要。
- 一部車種では4輪の向きを変えられる物もあり、真横への走行(カニ走り)も可能。
- ホイールベースが短く、最大舵角が大きいので小回りが効く。
- 短距離の荷役を主な目的としているため、最高速度は低く、一般的なフォークリフトで 20km/h 程度、最大荷重が10tを超えるような大型のフォークリフトでも 35km/h 程度であることが多い(小型特殊自動車の公道での法定速度は 15km/h 以下と 35km/h 未満)。
- ブレーキ時の慣性によって荷物が前方へ転落する(あるいは車両ごと転倒する)事故を防ぐため、荷役時は後退走行が基本である。荷物が小さく視界が確保できる場合は前進走行でもよいが、事業所によっては「前進禁止」の規則を定めていることもある。
- パレット用フォーク以外にも様々なアタッチメント(作業用の機械)があり、それらを装着することで様々な作業に対応できる。
カウンターバランス式フォークリフト
後部にカウンターウエイトを備える一般的な形状のフォークリフト。エンジンまたはバッテリーは座席の下にある。積載量は0.5t〜40tクラスまで存在する。トランスミッションはマニュアル式またはトルコン式が選択可能。世界第2位の生産台数を誇るLinde MHはハイドロ・スタティク・トランスミッション (HST) を採用しているものもある。基本的に4輪(タイヤ4本)であるが、小型の機種には後輪を1個とした3輪タイプもある。横幅が広い荷物を扱う場合、荷物を高く持ち上げる場合など、左右安定度で許容荷重が制限される用途では前輪をダブルタイヤとして左右安定度を確保し、許容荷重を増加させることもある。また、横幅が広く、高積みが行われる海上コンテナを扱う車両には前輪トリプルタイヤのものもある。
カウンターバランス式の長所はリーチ式より走行速度やフォークの上昇速度が速く作業効率が高いことを上げることができる。反面、他のフォークリフトに比べて回転半径が大きく狭所作業性が劣る面がある。
リーチリフト
マストが前後に移動できることを大きな特徴とする、フォークリフトの種類の1つである。最小回転半径が小さく、倉庫など狭隘な作業場所において広く用いられている。国内では、最大積載荷重は0.5t〜2tクラスが販売されているカウンターバランス式と違い、基本的には立ち乗りであるが、なかには座って操作する製品も存在する(海外では座って運転するモデルが主流で座乗式ともいわれる)。
リーチ式の長所としては、先述のようにカウンターウエイト式より小回りが効く、動力方式がバッテリー式の為、周囲環境に優しい点が挙げられるが、短所としては、連続稼働時間が内燃機関式より短い、大きさやレイアウトの都合上、内燃機関式への対応が難しい、バッテリーには定期的な補水が必要、初期導入コストが高価であるなど、電気代が燃料より安くすむので、ライフサイクルコストはエンジン式より安くなる。なお、「プラッター」と呼ばれることもあるが、これは日本で最初にリーチ式バッテリーフォークリフトを開発した日本輸送機製品の商標である。
リーチ式の変種としてオーダーピッカーがある。フォークではなく運転席が昇降する構造になっていて、運転者が手作業で小さな貨物を扱うものである。
- Reach-lifttruck-1.jpg
ツメを伸ばした状態
- Reach-lifttruck-2.jpg
ツメを畳んだ状態
バッテリー式の普及
乗用車やトラックで電気自動車がなかなか普及しないのとは対照的に、フォークリフトでは以前からバッテリー車があり、現在ではフォークリフト需要の50%以上がバッテリー車である。(日本産業車両協会調べ)
- 倉庫、工場内など屋内で使用されることが多いため、排気による製品への影響や健康被害を防ぐ必要性が、野外で使用される自動車より高い。
- 事業所の一定の範囲だけで使用されることが多いので、充電ステーションのようなインフラを必要としない。長距離を走るわけではないので、万一バッテリー切れになっても、救援が簡単である。
- 前車軸より前方に積む荷物の重量と釣り合いをとるための錘(おもり = カウンターウエイト)を車両後部に装備するほどなので、バッテリーによる重量増が問題になりにくい。
- 深夜電力を使って夜間充電ができるため、経済性、環境性が高い。
- バッテリーの改良により、エンジン車に迫るパワーを得られるようになった。
- 常時燃料を消費するエンジン車に比べ、バッテリー車は初期費用こそ割高だが、ライフサイクルコストの面で有利になっている。
操作系
操作レバーは長いものが数本並んでいるのが一般的だが、最近は運転者が手元で操作できるジョイスティックタイプも登場している。前者が制御バルブを直接操作するのに対し、後者は電気的に遠隔制御する。
- ニチユとトヨタでは、操作レバーの配置が異なる(前・後進レバーと、1・2速レバー配置が左右逆)。ニチユ式を採用しているメーカーが多いが、後発メーカーであるトヨタは独自の配列を標準仕様として開発した。
- 神鋼電機が製造していたモデルでも独自のレバー配列を採用しており、「神鋼式」といわれた。
- 日産のフォークリフトにはフォークの上下とチルトを1本のレバーにし、X字に操作するモデルがあった。
- 従って違うメーカーのフォークリフトに乗りかえると、操作を間違うことがあるので注意が必要。事業所によっては改造して操作方法を変更している場合もあるので、乗り慣れたメーカーのものでも油断はできない。
アタッチメント
- ISOコンテナを扱う業種(海運会社やJR貨物など)ではコンテナを吊り上げるスプレッダー付の機種が使われる。スプレッダーには空コンテナ用のサイドスプレッダー(片側2か所を固定)と実入りコンテナ用のトップリフター(両側4か所を固定)がある。
- 円筒形や角型の荷物を扱う業種(材木店など)ではフォークが上下にダンプするヒンジドフォークが使われる。メーカー純正オプションのバケットを装着し、おがくず等を運搬することもある。
- ドラム缶の運搬にはドラム缶用アタッチメント(ドラムクリッパー)を使用する。クリップ部がドラム缶の縁を引っ掛けるように持ち上げ、下ろした際にはクリップ部から外れるような仕掛けになっている。
- クランプの装着により、丸いもの(新聞の印刷用紙など)をそのままつかむことができたり、持ち上げた荷物を反転させたりできるものもある。
- トラックに積み付けを行う場合に少しだけ左右に動かせるもの(サイドシフト)もある。
- 特に長い「つめ」が必要な場合、「つめ」に「サヤ」(鞘)を取り付けることがある。
- 本来の荷役作業ではないが、積雪地ではメーカーオプションや部品メーカー製品・ユーザが個別発注などしたバケット・除雪ブレードを取付けて、会社敷地内などで除雪車代わりにも用いられる。
車両の登録・課税関係
日本では、構内だけで作業するフォークリフトにはナンバープレートがない場合があるが、必ずしも不要とは言い切れない。構内作業車を市区町村に登録せず軽自動車税を支払わないと、固定資産税の償却資産として課税される。小型特殊の軽自動車税の方が安い場合があるので、構内だけを走るフォークリフトでもナンバーを取得することがある。小型特殊自動車を含む軽自動車税は、公共用途等の免除あるいは一部の減免規定を除き、公道走行の有無を問わずに課税対象となり、軽自動車税を納付した証票としてナンバープレートが交付されるからである。詳細は、各市区町村の軽自動車税担当部署に問い合わせのこと。なお、大型特殊の場合は、運輸局運輸支局などでの登録が必要。この場合、自動車重量税の対象となり、車検が必要で、固定資産税の償却資産の対象となる。構内作業車でナンバーがなければ償却資産で課税される。
操作に必要な資格
- 全ての現場に要求される資格
- 最大積載荷重 1t以上のフォークリフトは、「フォークリフト運転技能講習」の修了が法令で義務づけられている。最大積載荷重1t未満のフォークリフトは、事業者のおこなう「特別教育」の受講が義務付けられている。
- 公道を走行する資格
- 車体寸法や最高速度によって「大型特殊自動車」と「新小型特殊自動車」と「小型特殊自動車」に分類され、それぞれ必要な免許が異なる。区分については特殊自動車の項を参照。
大型特殊自動車と新小型特殊自動車は「大型特殊免許」が、小型特殊自動車は「小型特殊免許」が必要である。なお、該当免許証を持っていても、貨物を積載しての公道走行および荷役は禁止されている。
自主検査
労働安全衛生規則第151条の21に基づき、1年を超えない期間ごとに「特定自主検査」(法定検査)が義務付られている。特定自主検査は、法定の検査資格を有する自主検査者が行う必要がある。
また、1か月を超えない範囲での定期自主検査および運転前の始業前点検も義務付られている。定期自主検査および始業前点検を行うのは自主検査者でなくてもよい。
メーカー
- 日本
- 豊田自動織機(トヨタL&F、TOYOTA)
- コマツ (KOMATSU)
- ユニキャリア (UNICARRIERS)
- ニチユ三菱フォークリフト 2013年4月に統合
- 三菱重工業(三菱重工フォークリフト、MITSUBISHI)
- 日本輸送機(ニチユ、NICHIYU)
- 三菱とニチユはニチユMHIフォークリフトとして2009年より日本国内の販売網を共有
- 住友ナコ マテリアル ハンドリング
- 住友フォークリフト (SUMITOMO)
- コレック (KOLEC)
- 杉国工業 (Sugico)
- をくだ屋技研
- 海外主要メーカー
- KION グループ(独)
- Linde MH(独)
- Still(独)
- Still OM(伊)
- Jungheinrich(独)
- Hyster-Yale Material Handling(米)
- Crown Equipment Corp.(米)
- Mitsubishi Catapler Forklift(日)
- Cargo Tec
- 安徽合力(中)
- 杭叉集团(中)
- Clark Material handling(韓)
- KION グループ(独)