デジタル・デビル物語 女神転生II
テンプレート:Infobox 『デジタル・デビル物語 女神転生II』(デジタル・デビル・ストーリー めがみてんせい2)は、1990年4月6日にナムコ(現・バンダイナムコゲームス)か発売されたファミリーコンピュータ用ソフト。ジャンルはロールプレイングゲーム。「ナムコット ファミリーコンピュータゲームシリーズ」第67弾。1995年に『旧約・女神転生』のタイトルでスーパーファミコン用ソフトとしてリメイクされた。また、2006年には携帯電話アプリとして配信されている。
概要
新型爆弾によって崩壊した近未来の東京が舞台。小説やOVAを原作とした前作とは違い、完全にゲームオリジナルである。シリーズ初のフィールドマップとマルチエンディングを採用しており、その後の「女神転生シリーズ」の方向性を決定付けたと言える作品。キャラクターデザイン、悪魔デザインを初めて金子一魔(現・金子一馬)が担当した。悪魔の総数も大幅に増え、会話のパターンも増えた。ゲーム中に悪魔から発せられる「あくまを ころして へーきなの?」という台詞はそれまでのRPGにおけるモンスターとは一線を画し、プレイヤーに疑問を投げかけた。
ストーリー
2036年、20世紀末に発生した最終戦争によって崩壊してしまった東京。地上には狂人や次元の裂け目から現れた悪魔が跋扈し、生き残った人々は明日をも知れぬ日々を送っていた。
一方、平和な京浜第3シェルターに住む主人公と親友は、ある日「デビルバスター」という体感RPGを手に入れる。二人が夢中になってそれを攻略し終えたとき、コンピュータの画面内にパズスと名乗る悪魔が現れた。パズスは自らを神の使いと名乗り、二人が神に選ばれた救世主だと告げる。パズスは東京がバエルという魔王に支配されていることを説明し、主人公には「悪魔召喚プログラム」を、友人には魔法の力を与える。
折しもネットワークを通じて、ついにデジタル・デビルが第3シェルターの内部にも侵入し始める。覚悟を決めた二人は武器庫に保管されていた銃を手にし、30年以上も閉ざされていたエアロックを開いて荒れ果てた地上へと踏み出していった。
主要登場人物
3人ともデフォルト名はないが、名前入力画面で空欄のまま決定すると、主人公=「ワタシ?????(旧約・女神転生では、ヒーロー)」、少女=「ショウジョ!!(しょうじょ)」、親友=「トモダチ...(あいぼう)」と設定される。FC版の説明書などでは、主人公=「ヒデト」、少女=「ロザンナ」、親友=「センダ」となっている。ヒデト、ロザンナは出門英とロザンナ・ザンボンとのユニット「ヒデとロザンナ」のパロディ。センダは「せんだみつお」が元ネタ。また、双葉文庫のゲームブック『デシタル・デビル物語 女神転生II メシアプロジェクト2036』では、主人公=「タクマ」、少女=「アスカ」、親友=「リュウ」となっている。
- 主人公(プレイヤー)
- 京浜第3シェルターで生まれ育った少年。「悪魔召喚プログラム」により、悪魔と会話し、仲魔にすることができるようになる。
- 親友
- 主人公の親友。ヒロコというガールフレンドがいる。
- 少女
- 東京タワーに住んでいる謎の少女で「魔女」と呼ばれる。不思議な力を持つ。
- パズス
- 主人公と親友を救世主にさせるが・・・。
- バエル
- 東京での魔王。
- ルシファー
- 創造主Y・H・V・Hの意に逆らい、悪魔となった天使長。キリスト教等の根源悪。ある場所で氷漬けされている。
- サタン
- 作中登場する悪魔はサタンの影響を受けており、悪魔との交渉時にもそれが判る。
- Y・H・V・H
- ユダヤ教やキリスト教等で信仰される、世界を創った唯一絶対の創造主。
- イザナギ
- 日本神話における男神。とある世界の何処かに囚われている。
- イザナミ
- 日本神話における女神でイザナギの妻。とある世界の何処かにイザナギと囚われているが・・・。
- モーラ
- 荒廃した東京では普通に渡れない水辺の渡を担う魔界の巨獣。対応アイテムがあれば対岸の地点へと渡してくれる。
- カロン
- 冥府の川の渡し守。ゲームオーバー時に出会える。
キーワード
- メシア教
- 2011年に発生したとされる新興宗教。救世主(きゅうせいしゅ)の降臨を説いている。中野にメシア教会がある。
- ディーバ教
- 2013年に発生したとされる、ガイア教の派生型ともいえる新興宗教。ガイア教と同様に悪魔との共存を説いており、かつてガイア教の総本山があった上野に総本山がある。
- デビルバスター
- 物語の冒頭で主人公と親友がプレイしていたゲームであり、序章となるダンジョン。真のエンディングを迎えた際には途中で壊れたはずのデビルバスターがエンディングを迎えており、スタッフロールには『A.NAKAZIMA』の名前が記載されている。
- デビルバスター2
- 渋谷インテリジェントビルの一室に置かれたコンピューターでプレイできるゲームであり、デビルバスターの続編。敵がストーリー進行上相応に強くなっている一方で主人公達はデビルバスター終了時の装備で戦うのであっさりやられてしまう可能性が高く作中屈指の難所となっている。なおこのデビルバスター2の特定ポイントでは『ある人の命で半世紀近くも主人公が訪れるのを待っていた』悪魔が仲魔になりたいと志願するイベントがある。ストーリー進行上必須となるダンジョンではない。
前作からの変更点など
- ステイタス
- パラメータの最大値が前作の20から35に、レベルの最大値が61から83に。また、「つよさ」が「たいりょく」に。前作ではレベル最大時に全パラメータは最大になったが、本作ではそれは不可能。またこの作品からレベルアップ以外でも能力を高める事ができる「インセンス(香)」が登場した。
- 悪魔
- 悪魔合体では従来の2身合体だけでなく、3体の悪魔を合体させる3身合体が初登場。天使、怪獣、狂人、マシン、など新種族が登場し、悪魔の総数も大幅に増加。
- 魔法
- 魔法の名前を大きくリニューアル。火炎魔法アギ、氷結魔法ブフ、電撃魔法ジオ、衝撃魔法ザン、呪殺魔法ムド、補助魔法タルカジャ、ラクンダなど、現在まで使われる魔法体系の基礎が出来上がった(参考:女神転生の魔法体系)。
- 装備品
- 装備品の種類が大幅に増加。装備部位は後の真・女神転生シリーズより多く、以下の7種類となっている。
- ・剣 ・ガン ・スーツ ・ヘルメット ・グローブ ・ブーツ ・ゴーグル ・マント
- 前作では武器の種類は剣のみだったが、今作からガン系が加わり、こうげき(ATTACK)時にどちらかを選択して攻撃できるようになった。ガン系は攻撃力が高い反面、霊体などには効果が薄い。また、今作では武器屋で購入できるのは銃のみで、剣は宝箱やイベントで入手するか、敵を倒したときに低確率で落とすドロップに頼るしかない。なお、防具の中でもゴーグルは宝箱からしか入手できず、マントはカジノのコードブレイカーの景品としてしか入手できない。
- ロスト
- 回復の泉で死亡した仲魔の蘇生を図ると約64分の1の確率で失敗してその仲間が削除される。その時には回復の泉にいる老人は「しっぱいじゃ すまんな」と話す。
- セーブ
- 前作はパスワードコンティニューだったが、今作ではバッテリーバックアップを搭載し、コンピュータルームや各地のチェックマンでセーブが可能に。携帯電話版はどこでもセーブが可能になっている。
- オートパイロット
- セットしておいたポイントに自動的に戻ることができる機能。3Dダンジョンが苦手なユーザーのために採用されたものの、オートパイロットで移動中、中断すると敵が出現しなくなる、特定条件下でハングアップするなどバグが多かった。本作で初めて採用されたが、後の作品には採用されず、SFC版「旧約・女神転生」および携帯電話版でもオートマッピングが搭載されたことで削除されている。
- オニ・マーク
- 本作では表示される敵悪魔は1体のみだが、画面上部に敵の数が人型のマークで表示されるようになった。このマークの状態でどの悪魔のHPが減っているか、あるいは状態異常にかかっているかが分かるようになった。このマークは「ソウルハッカーズ」では「オニ・マーク」という名前で呼ばれている。携帯電話版は味方の状態もオニ・マークで表現される。
- ゲームオーバー
- 主人公とパートナーの両者がDEAD状態になると(まだ仲魔が生き残っていたとしても)ゲームオーバー。冥府の川の渡し守カロンが現れて魂を迎えにくるが、マッカを半分払えば生き返ることができる(前作のコンティニューに相当)。
- マルチエンディング
- バエルを倒した後に出てくるカエルを殺すかにより、後に戦うラスボスが変化する。蛙を殺すとラスボスがサタンとなり、蛙を殺さず仲間にし、ゲームを進め、ルシファーを仲間にするとラスボスがY・H・V・Hとなる。真のエンディングを見るには蛙を殺さずゲームを進めなくてはならない。
2036年の東京
終末戦争から30年あまり。新型爆弾によって、地形は大きく変化している。20世紀末に存在した鉄道や高速道路などの交通機関は存在せず、徒歩による移動が主なものとなる。地割れなどによって移動は大きく制限される。かつての地下鉄跡が地下通路の役割を果たしている。
- 京浜第3シェルター - 地上の混乱とは隔絶された地下シェルター。武器庫やクリニック、バーなどがあり生活に必要なものは一通り揃っている。悪魔の侵入をずっと退けてきた。住所は東京都大田区矢口2-1-21(現在のナムコ本社の地番)。
- 羽田 - かつて国際空港があった地区。現在は僅かな人々が住んでいるだけになっている。
- 品川 - 防具屋やガンショップなどもありそれなりに人口が多い街。地下道は有明方面に繋がっている。
- 有明 - 闘技場やギャンブル店などが立ち並ぶ東京屈指の歓楽街。
- 芝 - 東京タワーがある地域。エレベーターは現在でも作動している。
- 渋谷 - ディーバ教が支配する街。ハチ公像やインテリジェントビルもある。インテリジェントビルはロボットによって警備されているが、コンピュータが暴走しており、中に侵入することは困難。
- 銀座 - 東京最大の街。地下街には多数のショップがある。爆心地に程近く、地形の変化により孤島となっている。
- 池袋 - サンシャイン60がなおも建つ街。サンシャイン60内にはローマの真実の口にも似た「悪魔の口」がある。
- 新宿 - 復活したパズズがいる街。最初は結界で阻まれており、マンモンから入手するバエルの爪で結界を破り進入することができる。店はストーリーを進めることで利用可能になる。
- 後楽園 - かつての東京ドーム近辺。こちらも歓楽街となっている。
- 上野 - ディーバ教の本拠地。また東京唯一の3身合体のできる邪教の館や、首無しの西郷隆盛像がある。
- 中野 - メシア教の教会がある。渋谷のインテリジェントビルに侵入するためのパスワードを教えてもらえる。
- 夢の島 - ゴミを埋め立てた島。腐敗したゴミにより有毒物質の溜まった毒沼となっている。
BGM
増子司が作曲した本作のBGMはロックを基調として構成されている。当時の家庭用ハードで発売のRPGタイトル群ではクラシック調のBGMが最も多く使われていたが、そういう中で本作は珍しい存在であった。更にファミコン版では標準搭載のPSGに加え、カートリッジ側に特殊音源チップ「N106(波形メモリ音源)」を搭載しており、これによって同時発音数が増え、前作のみならず他社製品と比較しても格段に音響面で広がりが生まれた。またROMの容量も前作の倍の4Mビット(512KB)に増加したことで、収録曲数も前作の2倍近くに増加している。
以下の曲名はサウンドトラック裏面のボックスアート表記に倣ったもので、原曲(オリジナル)はほぼ英名か和名の単独で、米光亮編曲のアレンジ版は「原曲名 〜 新規和名」(Explorer 〜 閉ざされた街、Hallucination 〜 魔界幻想、OMEGA 〜 聖戦、等)のような文体になっている点で異なるが、今日ではアレンジ版の曲名で原曲を言い表している誤用・混同も少なくない。
曲名 | 使用場面 | 備考 | |
---|---|---|---|
Prediction | タイトル | 携帯電話版では削除。 | |
Jump Up! | ステータス面 | 『I』の「Step Up」(本作サントラ召喚盤31曲目)のアレンジ。 | |
MICOM(D.B.) | ミコンの街 | D.B.とはDevil Bustersの略。携帯電話版では「Explorer」に差し替え。 | |
窓明り(D.B.) | 辺境の店 | ||
曲名不明 | D.B.内の回復の泉 | サントラ未収録曲。『I』の「Spirit of Fountain」(本作サントラ召喚盤37曲目)のアレンジ。 | |
曲名不明 | D.B.内の邪教の館 | サントラ未収録曲。『I』の邪教BGM「祈り」(本作サントラ召喚盤41曲目)のアレンジのため、ファン同士・二次資料・CD取扱店などでは「祈り(D.B.)」などと表記ないし周知されている場合が多い。 | |
DAEDALUS(D.B.) | ダイダロスの塔 | 携帯電話版では「Explorer」に差し替え。 | |
Battlefield(D.B.) | D.B.内の戦闘曲 | 携帯電話版では「Death Match」に差し替え。 | |
Omen | パズス、メッセージ面 | 携帯電話版では「Spirit's Power」に差し替え。 | |
Explorer | 地下シェルター、東京タワー等 | ||
Lady's Shop | レディースショップ・メッセージ等 | 女性キャラとの会話シーンなどでもかかる。 | |
TOKIO Adventurer | 東京2D | 2DフィールドのBGM。本来の英語ならAdventureだが、原文〔ママ〕なので誤記ではない。 | |
Messenger | モーラ、メッセージ等 | 携帯電話版では削除。 | |
I ♡ Money | ギャンブル場 | 携帯電話版では削除。厳密にはハートの約物は線画(中ヌキ)が正しく、白や♥など一色(塗り潰し)のものは誤用。 | |
Dash Under the Ground | 地下道 | ||
Spirit's Power | 回復の泉 | ||
Ex-convict | メンズショップ | ||
Checkman | チェックマン | ||
Hurry Up To Exit | ザラタン内部等 | ||
An Encounter | 敵出現 | 携帯版では削除されており、即座に「Death Match」が流れる。 | |
Death Match | 戦闘時 | ||
Another World | 氷漬けルシファー、将門の首、他イベント | ||
Hallucination | 魔界2D | ||
Devil Speak | 邪教の館 | D.B.内ではない現実世界でのBGM。携帯電話版では「Spirit's Power」に差し替え。 | |
魔獣合成 | 悪魔合体 | 携帯電話版では削除。 | |
Dark Night | 洞窟等 | ||
Fall'n Gods | 対ボス戦闘 | ||
Dimensional Trip | ワープ、メッセージ等 | 携帯電話版では削除。 | |
Labyrinth | 城内等 | ||
OMEGA | ラストボス(サタン、Y・H・V・H戦) | 携帯電話版では「Fall'n Gods」に差し替え。 | |
Epilogue | カエル生存ルートのエピローグ | ||
Dawn Of The Human Being | エンディング |
その他
- 株式会社ロボット製作のテレビCMは、悪魔たちが次々と出現する地下迷宮を主観視点で歩いていき、廃墟の東京に悪魔マンモンが登場するというゲームの内容に即したモノクロのアニメーション。最後に悪魔合体シーンのゲーム画面が表示される。前作とはうって変わって緊張感のあるものになっている。プロデューサー、井上邦彦。ディレクター、野村辰寿。アニメーション、白組。
- 同時期に発売されたファミコンのRPGにドラゴンクエストIV 導かれし者たち(1990年2月11日発売)、ウィザードリィIII(1990年3月9日)、ファイナルファンタジーIII(1990年4月27日)があるが、いずれもクォリティは高く、ゲーム雑誌では女神転生IIを含めて「4大RPG」と呼ばれた。
- 本作の開発中に開発チームが様々な災難に遭ったらしい。サントラのブックレットでは「祟り」として書かれ、後にメガテンチームは開発時に御参りに行くことが恒例行事になったという。
- 本作が発売される前に、ゲーム雑誌「ファミコン通信(現ファミ通)」に、「『女神転生II』にも弓子は登場するが、しわしわの婆さんになって、魔法も大半は忘れてしまっている」という記事が載った。これは実際に発売されたゲーム内容とは全く異なる。
携帯電話版
2006年9月1日からNTTドコモ用のiアプリが、同年12月1日からソフトバンクモバイル用のS!アプリが、同年12月7日からはau(KDDI)のEZアプリ(BREW)がアトラスモバイルコンテンツとしてそれぞれ配信開始された。
携帯電話版は主に以下の点がファミコン版と異なっている。
- テキストに漢字が加わり、漢字かな混じり文に。
- どこでもセーブが可能に。
- オートマッピング機能が追加され、かわりにオートパイロットが削除。
- グラフィックのリニューアル。
- 容量の関係上デビルバスターで流れるものなどBGMが10曲以上削除され、他のBGMで代用。
- 戦闘画面で、入力したコマンドが非表示。
- ダークゾーン内でもマッパラーが有効。
参考文献
- 『女神転生IIのすべて』 JICC出版局、ISBN 4880639257
- 成沢大輔著の攻略本。単なる攻略データ集ではなく、世界観の解説がされていたり、金子一魔(巻末のスタッフ一覧では、Kazuhiro Kanekoと表記)による悪魔イラストが大きく掲載されている。
- 『デジタル・デビル物語 女神転生II 必勝攻略法』 双葉社、ISBN 4575151610
- ファイティングスタジオ編の攻略本。全ての悪魔合体の組み合わせが表になっているが、文字が小さくて活用するのは難しい。金子一魔の悪魔イラストは小さいが、ボス魔王のイラストは比較的大きく掲載されている。
- 2枚組のサウンドトラックCD。ブックレットには開発者コメント、金子一魔や成沢大輔らの対談やゲーム業界人のメッセージ、御祗島千明の漫画等を収録。
- 「召喚盤」とはゲーム本篇(以下ゲーム版)で流れた原曲=オリジナルを指し、「合体盤」とは米光亮が編曲を担当したアレンジ曲のこと。なお、召喚盤では8台のファミコンを同時接続して一音源ずつ録音しているため、ゲーム版よりも音が豪華になっている。
外部リンク
- 「カルト的人気を博した名作『女神転生II』がiモードに光臨! - ファミ通.com」 ファミ通.com、2006年8月31日
- 「『女神転生II』や『ストラデウス』などの名作がYahoo!ケータイ向けに一挙に配信! - ファミ通.com」 ファミ通.com、2006年12月1日