ジェイムズ・ブリッシュ
ジェイムズ・ベンジャミン・ブリッシュ(James Benjamin Blish、1921年3月23日 - 1975年7月29日)はアメリカのSF作家である。ウィリアム・アセリング・ジュニア ( William Atheling Jr. ) の名でSF評論家としても活動した。
オリジナル作品では、「宇宙都市」 ( Cities in Flight ) シリーズが代表作である他、『悪魔の星』が1959年のヒューゴー賞を受賞している。
1968年には代表作の一つ『黒い復活祭』(未訳)が出版された。1970年にはその続編『審判の翌日』(未訳)を書いている。
生涯
ニュージャージー州イーストオレンジ生まれ。1930年代末から1940年代初めにかけては、フューチャリアンズに属していた。
ラトガース大学とコロンビア大学で生物学を学ぶ。1939年からSF小説を発表。徴兵により1942年から1944年まで陸軍医学研究所で働くことになるが軍隊生活が合わず、掃除の命令に従わなかったことで問題になり、除隊。その後はSFだけでなく詩や評論等の執筆をおこなう。また、製薬会社のファイザー社宣伝部のサイエンス・エディタとなって収入を得たが、経済的には苦しい日が続いた。
木星型惑星を "gas giant" と命名したのはブリッシュであり、ジュディス・メリルのアンソロジー Beyond Human Ken に掲載された「太陽神経叢」でのことである。なお、この作品が最初に発表されたのは1941年のことだが、その際にはこの用語は使っておらず、1952年のアンソロジー向けに書き換えた際に初めて使っている。
ブリッシュは1947年から1963年まで、版権代理人のヴァージニア・キッドと結婚していた。
1962年から1968年、ブリッシュはたばこ協会(たばこ業者の業界団体)で働いていた[1]。
1967年から肺癌で亡くなる1975年まで、SFテレビドラマ「宇宙大作戦」のノベライゼーションを多数手がけ、それまでより多くの人気やファンレターを得た。亡くなるまでに11巻の短編集を出版している。12巻目を執筆中に亡くなり、妻の J. A. Lawrence が完成させた。1970年にはシリーズ初の大人向けオリジナル小説『二重人間スポック!』を書いた。
1960年代中ごろまでマサチューセッツ州ミルフォードにある Arrowhead と呼ばれる有名な家に住んでいた。1968年にはイングランドに移住し、1975年にヘンリー・オン・テムズで亡くなるまでオックスフォードに住んだ。オックスフォードにある墓は、ケネス・グレアムの墓の近くにある。
《宇宙都市》シリーズ
ブリッシュの最も有名な作品が《宇宙都市》シリーズで、アスタウンディング誌に連載された。4つの長編小説の1作目『宇宙零年』でシリーズの基本的枠組みが示されており、シリーズの根幹となる2つのアイデアが登場している。1つは抗老化薬アスコマイシンで、それを開発したフィッツナー社は明らかにブリッシュが働いていたファイザー社を意味している。2つめは「スピンディジー」という反重力機関の開発である。この機関は浮上させる対象が大きいほど効率がよくなるため、都市全体が地球から去って宇宙へと旅立ち、テクノロジーの比較的発達していない星で仕事を捜しつつ旅をすることになる。星間旅行は非常に時間がかかるため、寿命を延ばすアスコマイシンは必須だった。
『宇宙零年』はマッカーシズム時代によく見られたディストピア小説である。2作目の『星屑のかなたへ』は浮遊都市における少年の成長物語である。3作目の『地球人よ、故郷に還れ』は浮遊都市となったニューヨーク市の冒険を描いたもので、後にアメリカSFファンタジー作家協会によりネビュラ賞開始以前のベスト中長編の1つに選ばれた。
シリーズ最後を飾る4作目の『時の凱歌』で、ブリッシュは宇宙の終わりを紀元4004年に設定した[2](なお、初版では設定が異なっていた)。《宇宙都市》シリーズは1979年に映画化が進行していたが、結局実現しなかった[3]。
なお、執筆順は上述した物語の順序とは異なり、『地球人よ、故郷に還れ』が最初である。
邦訳作品
長編
- A Case of Conscience (1958) 悪魔の星
- VOR (1958) 宇宙の放浪怪物
- The Star Dwellers (1961) 宇宙の天使たち
- The Night Shapes (1962) 暗黒大陸の怪異
短編集
- The Seedling Stars (1956) 宇宙播種計画
- Surface Tension (1942) 表面張力
- The Thing in the Attic (1954) 屋根裏の物
- Watershed (1955) 分水界
- Seeding Program(A Time to Survive) (1956) 播種計画
宇宙大作戦
- Star Trek 1 (1967) 見えざる破壊者
- Star Trek 2 (1968) 謎の精神寄生体
- Star Trek 3 (1969) 地球上陸命令
- Spock Must Die! (1970) 二重人間スポック!
- Star Trek 4 (1971) 暗闇の悪魔
- Star Trek 5 (1972) メトセラへの鎮魂歌
- Star Trek 6 (1972) 禁断のパラダイス
- Star Trek 7 (1972) 小惑星回避作戦
- Star Trek 8 (1972) パイリスの魔術師
- Star Trek 9 (1973) 明日への帰還
- Star Trek 10 (1974) 最後(オメガ)の栄光
- Star Trek 11 (1975) 惑星ゴトスの妨害者
- Star Trek 12 (1977) 上陸休暇中止!
宇宙都市シリーズ
- They Shall Have Stars(別題Year 2018!) (1956) 宇宙零年
- A Life for the Stars (1962) 星屑のかなたへ
- Earthmnan, Come Home (1955) 地球人よ、故郷に還れ
- The Triumph of Time (1958) 時の凱歌
脚注・出典
参考文献
関連項目
外部リンク
- ↑ http://www.blish.org/gens/1380I.html James Benjamin Blish, B.Sc., Ed. genealogy page
- ↑ 紀元4004年という設定は、「アッシャーの年表」で天地創造を紀元前4004年としていることへの風刺である。
- ↑ テンプレート:Cite journal