ショウブ
ショウブ(菖蒲、Acorus calamus)は、池、川などに生える単子葉植物の一種。クロンキスト体系ではショウブ科(新エングラー体系などではサトイモ科)のショウブ属に属する。ユーラシア大陸に広く分布し、日本を含め東アジアのものは変種 A. calamus var. angustatusとされる。薬草、漢方薬としても用いられている。
特徴
茎は湿地の泥の中を短く横に這い、多数の葉をのばす。葉は左右から扁平になっている。花は目立たない黄緑色の肉穂花序で5月ごろ咲く。花茎は葉と同じ形で、花序の基部には包が一枚つくが、これも花茎の延長のように伸びるので、葉の途中から穂が出たような姿になる。
用途
中国では古来より、ショウブの形が刀に似ていること、邪気を祓うような爽やかな香りを持つことから、男子にとって縁起の良い植物とされ、家屋の外壁から張り出した軒(のき)に吊るしたり、枕の下に置いて寝たりしていた。日本でも、奈良時代の聖武天皇の頃より端午の節句に使われ始め、武士が台頭してからは「しょうぶ」の音に通じるので「尚武」という字が当てられるようになる(勝負にも通じる)。また、芳香のある根茎を風呂に入れ、菖蒲湯として用いたりする。漢方薬(白菖、菖蒲根)にもなっている。
同じ「しょうぶ」の名前をもち花の咲くハナショウブと混同されることもあるが、両者は全く別の植物である。古くは現在のアヤメ科のアヤメではなく、この植物ショウブを指して「あやめ」と呼んでいた。
近縁のセキショウ(石菖)はやや小柄な、深緑色の草で、渓流ぞいにはえる。根茎は、昔から薬草として珍重されており、神経痛や痛風の治療に使用した。蒸し風呂(湿式サウナ)では、床に敷いて高温で蒸す状態にしてテルペン(鎮痛効果がある)を成分とする芳香を放出させて皮膚や呼吸器から体内に吸収するようにして利用する。