家屋
家屋(かおく)は、人が居住する建築物のこと。家(いえ)、住宅(じゅうたく)。
概要
生物学的な表現をすると、ヒトが作る巣といえ、一般に固定された場所に頑丈な素材で建設される。ただし、人が定住生活を送るようになったのは最近の話であり、それまでは移動式の住居を用いていた。現在でもモンゴル人のゲル、中国の水上居住者や東南アジアなどのハウスボート、欧米諸国に多く見られるようなトレーラーハウスのような移動家屋が存在する。しかし、テントのような仮設の物は家屋とは呼ばれない。また、固定された場所であっても、洞窟内にそのまま住むような場合は一般に家屋とは呼ばれない。
最低限、人が風雨をしのぎ、そこで安心して寝起きすることが出来るものが家であり、またそこで居住を共にするものが、家の仲間であり、家族となる。家屋はいわばそうした家族のための器と考えることが出来る。
豪華な庭園、プールなどを供えた豪邸と呼ばれるものや、客家の土楼のように100を超える家庭が居住する大型の家屋もある。逆に貧弱で慎ましい家屋としては、ホームレスの段ボール箱やブルーシートを固定した空間などが挙げられる。
日本では1881年に奈良県河合町佐味田の4世紀後半の前方後円墳(佐味田宝塚古墳・国の史跡)から出土した「家屋文鏡」の家屋の図像が最古のものとして知られている。
日本の税務、不動産登記実務上では、以下の3要件をみたすものを不動産登記や固定資産税の対象となる家屋としている。
- 土地定着性 : 土地に永続的に定着していること
- 外気遮断性 : 屋根および三方以上の壁があり、風雨をしのぐことができること
- 用途性 : 目的とする用途に供し得る状態にあること
なお、長期間居住者のいない家屋は空き家(空家)といい、居住者がおらず荒廃した家屋は廃屋、あばら家などと呼ばれる。日本では住宅を撤去して更地にすると固定資産税の軽減措置が受けられなくなるため、相続した住宅をそのまま空き家にしているケースが増えていることが2014年に確認されている[1]。
家屋を生息域とする異種生物
家屋内には、人以外にも多くの生物が出現し、さまざまな生活を行っている。その出現の理由も家屋の利用の方法もさまざまなものがある。例えばダニ目では家屋内で発見された種が五亜目にまたがって総計149種知られ、日本国内でも100種以上が記録されている[2]。もちろんこの中には外部から一時的に侵入したもの、偶発的なものも含まれる。ある程度常在的に棲息するものには以下のようなものがある。
- 無気門亜目のチリダニ類は、室内のほこりの中に棲息し、チリや人間のふけ、毛髪などのタンパク質を摂取する。この類にはアレルゲンとなるものがある。陰気門類ではイエササラダニが、中気門類ではホソゲチトゲダニ等がやはりホコリの中に棲息する。
- コナダニ類はホコリの中にもいるが、小麦粉や砂糖などの保存食品などを食べ、時に大発生する。
- 前気門類のツメダニ類はチリダニやコナダニの捕食者で、彼らと共に出現する。時に人間に噛みついて炎症を起こす。
- 中気門類のイエダニは家に住むネズミに寄生し、時にヒトからも吸血する。
家屋に生息する動物には、しばしばその地域では家屋でしか見られないものがある。またそのような種は、往々にして世界的な分布を持つ。これは人間の移動に伴って運ばれるためと考えられる。
たとえばクモの場合、野外にも見られるものから家屋内でしか見られないものまであり、純家屋性の種は世界的に広く見られる例が多い。これにはアシダカグモ・チリグモ・ユカタヤマシログモ・オオヒメグモ・チャスジハエトリ等が挙げられる[3]。
屋敷
家屋の立っている敷地、または家屋などを含めた敷地全体を屋敷(屋敷地)という。なお、大きな邸宅のことを「お屋敷」・「御殿(ごてん)」ということもある。
出典
参考文献
- 八木沼健夫 『クモの話 : よみもの動物記』 北隆館、1969年。
- 江原昭三編著、『ダニのはなし 1』、(1990)、技報堂出版