サモトラケのニケ
「サモトラケのニケ」(テンプレート:Lang-fr, テンプレート:Lang-en, テンプレート:Lang-el)は、ギリシャ共和国のサモトラケ島(現在のサモトラキ島)で発掘され、現在はルーヴル美術館に所蔵されている勝利の女神ニーケーの彫像である。
概要
テンプレート:出典の明記 現存するギリシア文明の彫像の中で、女神ニケを題材にしたものとして貴重な彫像でもある。その題材のみならず、優美でダイナミックな姿や翼を広げた女性という特徴的なモチーフなどが印象的で、各地にレプリカが作られ親しまれている。
大理石製で高さは328cm。
最初の発見は1863年で、フランス領事シャルル・シャンポワゾによって胴体部分が見つけられた。それに続いて断片と化した片翼が見つかった。断片は全部で118片にのぼる。その後復元された像は1884年にルーヴル美術館の『ダリュの階段踊り場』に展示され、現在に至る。
右腕は1950年に発見され、ルーヴル美術館に保管されている。手は大きく広げられている。
年代と作者の推測
この彫像についての古文書はひとつも発見されていないため、様式および傍証から年代を推定することしかできない。まず、デメトリオス1世ポリオルケテスの貨幣がこの像を表しているのではないかと考えられ、デメトリオス1世が海戦の勝利を祝って建造したと推測する説があった。この説によれば彫像は紀元前4世紀終わりから紀元前3世紀初頭の彫刻家の作ということになり、サモトラケ島で活動していたスコパスの弟子などが該当する可能性がある。しかしながら、サモトラケ島は当時デメトリオスと敵対関係にあったリシマクスの支配下にあり、ここにデメトリオスが像を建立したとは考えにくい[1]。
次に、ロードス島のリンドスで発見された船を象った浮き彫りの形態と台座の大理石の由来から、彫像がロードス島のものであり、コス島、シデ島、あるいはミヨニソス島での勝利を祝したものと考える説がある。年代はそれぞれ紀元前261年頃、紀元前190年、おなじく紀元前190年である[1]。
この時期は大プリニウスにも言及されている[2] チモカリスの息子ピトクリトスが彫刻家として活動していた時期に符合する。ピトクリトスはリンドスのアクロポリスの彫像を手がけたことでも知られている。そしてシャンポワゾは1892年、彫像の直近からロードス島ラルトス産の大理石の断片を発見したが、これには「…Σ ΡΟΔΙΟΣ / …S RHODIOS」という表記があり[3]、「ロードスのピトクリトス」に符合する可能性を示すものとして注目された。しかしながら、この断片とニケの彫像が置かれていたエクセドラ(半円状に突出した建築部位)の関係は明らかではなく[4]、とりわけ、この断片の小さな凹部はそれが小像の台座であることを物語っている[5]。
他に、この彫像がアンティゴノス2世ゴナタスの奉納物であるとする説がある。すなわち紀元前250年代のコス島でのプトレマイオス2世に対する勝利の記念物である。アンティゴノス2世はデロス島に彫像を建立していることから、アンティゴノス朝が伝統的に守ってきた聖域であるサモトラケ島にも同様なことを行っていたと考えることは可能である[6]。
他の検討の可能性として、ニケの彫像をペルガモンの大祭壇のフリーズに彫られた人物像と比較する研究者もいた[1]。
日本にあるレプリカ
- 美ヶ原高原美術館(長野県小県郡武石村)
- 奈良市立一条高等学校(奈良県奈良市法華寺町) - かつてはなら・シルクロード博覧会に展示、終了後はJR奈良駅旧駅舎(2代目)のコンコースにあった。
- 鳥取県立米子東高等学校(鳥取県米子市勝田町)
- ルーブル彫刻美術館(三重県津市白山町)
- 武蔵野美術大学(東京都小平市小川町)
- 多摩美術大学(東京都八王子市鑓水)
- 埼玉県立大宮光陵高等学校(埼玉県さいたま市西区)
- 金沢美術工芸大学(石川県金沢市)
- 石川県立金沢辰巳丘高等学校
- 女子美術大学(東京都杉並区和田)
- 鹿児島県立松陽高等学校(鹿児島県鹿児島市福山町)
- 東京都立晴海総合高等学校(東京都中央区)
- 東京女子学院中学校・高等学校(東京都練馬区)
- 玉川大学(東京都町田市)
- 栃木県立栃木女子高等学校(栃木県栃木市)
- 青森市立浦町中学校
- 中村学園大学(福岡県福岡市)
- 道都大学(北海道北広島市)
- 広島経済大学(広島県広島市)
- 大阪芸術大学(大阪府南河内郡河南町)
- 山梨県立甲府南高等学校(山梨県甲府市)
- 住宅型有料老人ホーム太郎と花子(愛知県丹羽郡大口町)
- 聖十字病院(岐阜県土岐市泉町久尻)
- 岩手県立不来方高等学校(岩手県紫波郡矢巾町)
- 近畿大学(大阪府東大阪市)
- 京都外国語大学(京都府京都市右京区)
- 尾道市立大学(広島県尾道市久山田町)
登場するメディア・引用
- マリネッティが未来派宣言の中で凌駕するべき静止した芸術の例として挙げた。
- アメリカ映画『パリの恋人』(1957年)で、ルーブル美術館の階段踊り場に置かれたサモトラケのニケを背景に、ヒロインの写真モデルが階段を降りるシーンを撮影に使っている。
- アメリカ映画『タイタニック』(1997年)で、ヒロインがタイタニック号の甲板先端で両手を広げたポーズを取るのは、船の舳先に立つニケの真似事。
- スポーツウェアメーカーナイキの社名の由来。ナイキのロゴはこの像の翼をイメージしたもの。
- 食玩『コレクト倶楽部』で、サモトラケのニケがフィギュア化されている。またシークレットアイテムとして、完全体予想版も存在する。
- 漫画『デビルマン』で、悪魔(デーモン)の1人として登場。飛鳥了によって倒される。
- ロシアのヴォルゴグラード近く、ママエフ・クルガンにある母なる祖国像のデザイン。
註
参考文献
- Marianne Hamiaux :
- Les sculptures grecques, tome II, Département des antiquités grecques, étrusques et romaines du musée du Louvre, éditions de la Réunion des musées nationaux, Paris, 1998 ISBN 2-7118-3603-7, p. 27-40,
- « La Victoire de Samothrace », feuillets pédagogiques du Louvre, Louvre et Réunion des Musées nationaux, vol. V, n° 3/43, 2000 テンプレート:要出典範囲.
- Bernard Holtzmann et Alain Pasquier, Histoire de l'art antique : l'art grec, Documentation française, coll. « Manuels de l'École du Louvre », Paris, 1998 ISBN 2-11-003866-7, p. 258-259.
- R. R. R. Smith, La Sculpture hellénistique, Thames & Hudson, coll. « L'univers de l'art », 1996 ISBN 2-87811-107-9, p. 77-79.
外部サイト
- 《サモトラケのニケ》についてのマルティメディア特集ルーヴル美術館公式サイト(日本語ページ)
- 《サモトラケのニケ》の解説ルーヴル美術館公式サイト(日本語ページ)