カマス
カマス(魳)は、スズキ目サバ亜目カマス科(学名:テンプレート:Sname)に分類される魚類の総称。カマス科はカマス属のみ1属で構成され、オニカマスなど少なくとも21種が記載される[1]。バラクーダ(Barracuda)という英名でも知られている。
分布・生態
カマス科の魚類はすべて海水魚で、太平洋・インド洋・大西洋の熱帯・亜熱帯域に幅広く分布する[1]。主に沿岸域に生息し、サンゴ礁や岩礁の周囲で群れを形成し、活発に泳ぎ回る。食性は魚食性で、イワシなど他の魚類を貪欲に捕食する[2]。ヒトに対して攻撃性を示す魚類の一つであり、一部の地域ではサメよりも危険な存在と捉えられている[1][3]。
ほとんどの種類が釣魚あるいは食用魚として利用され、定置網・延縄などで漁獲される。肉は白身で淡白だが、生では水っぽく柔らかいため、刺身で食べられることは少ない。ほとんどが干物・塩焼き・から揚げなどに加工される。
形態
カマス科の仲間は細長い円筒形の体型をもち、全長は20-30cmほどの種類から2mに達することもあるオニカマスまでさまざまである[2]。口は大きく、やや突き出た下顎には鋭く強靭な歯を備える[1]。側線がよく発達する一方、鰓耙はないか退化的[1]。
背鰭は2つあり、互いの間隔は広く離れている[1]。前方の背鰭は5本の棘条からなり、後方は1棘9軟条[1]。胸鰭は体側のやや低い位置にある[1]。近縁のタチウオ科とは異なり、小離鰭をもたない[1]。椎骨は24個[1]。
分類
カマス科にはNelson(2006)の体系において1属21種が認められている[1]。本体系はカマス科をサバ亜目で最も原始的なグループとして位置付けているが、本科をサバ亜目から除外する見解も多い[4][5]。本稿では、FishBaseに記載される1属26種についてリストする[2]。
- カマス属 Sphyraena
- アカカマス Sphyraena pinguis
- イブリカマス[7] Sphyraena iburiensis
- オオカマス Sphyraena putnamae
- オオメカマス Sphyraena forsteri
- オオヤマトカマス Sphyraena acutipinnis
- オニカマス Sphyraena barracuda
- タイワンカマス Sphyraena flavicauda
- ダルマカマス Sphyraena obtusata
- ホソカマス Sphyraena novaehollandiae
- ヤマトカマス Sphyraena japonica
- Sphyraena afra
- Sphyraena argentea
- Sphyraena borealis
- Sphyraena chrysotaenia
- Sphyraena ensis
- Sphyraena guachancho
- Sphyraena helleri
- Sphyraena idiastes
- Sphyraena jello
- Sphyraena lucasana
- Sphyraena picudilla
- Sphyraena qenie
- Sphyraena sphyraena
- Sphyraena tome
- Sphyraena viridensis
- Sphyraena waitii
主な種類
- アカカマス Sphyraena pinguis (英:Red barracuda)
- ヤマトカマス Sphyraena japonica (英:Japanese barracuda)
- 全長35cm。アカカマスに比べて小型で、体色は青味がかり、体側の縦帯を欠く。腹鰭は背鰭と同じか、やや後方に位置する。鱗は小さく剥がれやすい。アカカマスに対して「ミズカマス」とよばれることもある。西日本から南シナ海まで分布する。タチウオの仕掛けに掛かることがある。
- オニカマス Sphyraena barracuda (英:Great barracuda)
- 全長180cmに達する大型種。世界中の熱帯海域に広く分布する。食用にされていたが、産地によってはシガテラ毒(シガトキシン)を持つため、バラムツ、アブラソコムツ、イシナギと並び、食品衛生法により販売禁止となっている。
出典・脚注
参考文献
- Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fourth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2006年 ISBN 0-471-25031-7
- Gene S. Helfman, Bruce B. Collette, Douglas E. Facey, Brian W. Bowen 『The Diversity of Fishes Second Edition』 Wiley-Blackwell 2009年 ISBN 978-1-4051-2494-2
- Andrew Campbell, John Dawes編、松浦啓一監訳 『海の動物百科3 魚類 II』 朝倉書店 2007年(原著2004年) ISBN 978-4-254-17697-1
- 岩井保 『魚学入門』 恒星社厚生閣 2005年 ISBN 978-4-7699-1012-1
- 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2