オーガスト・ダーレス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Infobox 作家 オーガスト・ダーレスAugust William Derleth1909年2月24日 - 1971年7月4日)は、アメリカ合衆国ウィスコンシン州ソーク・シティ生まれの小説家SF作家推理作家、ホラー作家、編集者ウィスコンシン大学英米文学科卒。

概要

1926年、『ウィアード・テールズ』誌に短編「蝙蝠鐘楼」(Bat's Belfry)を発表してデビュー。

1939年、ドナルド・ワンドレイとともに出版社「アーカム・ハウス」を設立。 自らが師匠と慕い、生前は不遇であったハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品集の出版が主目的とされるが、ロバート・ブロックレイ・ブラッドベリなど多くの著名作家がここから単行本デビューを果たした。

また、「ラヴクラフトの残した作品群を『クトゥルフ神話』として体系化する」「ラヴクラフトの残したメモから新作を書きあげ、それをラヴクラフトとの共著として発表する」等の活動で知られている。

これらラヴクラフトにまつわる活動については、功罪2つの側面があるとされる。「埋もれてしまう可能性もあったラヴクラフトの作品群を『クトゥルフ神話』として世に知らしめた点」や「新たな作家たちの神話世界への参入を容易にした点」は、ダーレスの功績として評価されている。一方で、「様々な作家の神話体系への参加にあたり、自らの権限において制限を設けようとしていた点」については、批判を浴びることも多い。

かつては、「『クトゥルフ神話』を体系化する際、ダーレスの個人的な解釈から善悪二元論四大元素などの要素を付与した結果、ラヴクラフト作品の持つ本質的な要素(例えば宇宙的恐怖など)が歪曲化された」あるいは「『旧支配者と旧神の対立構図』についてラヴクラフト自身が提唱した事であるかのような記事を捏造した」として糾弾されることもあった。しかし今日では、「旧支配者と旧神という二元論的対立」の根拠となるものとして、ハロルド・ファーネイジがラヴクラフトからの書簡に「私の作品は『かつて世界を支配していた種族は黒魔術を実践したために追放されたが、外世界から再び地球を支配することを目論んでいる』という伝承に基づいている」という言葉があったとダーレスに紹介していたことが分かっている[1]。ただし、実際にラヴクラフトがそう述べていたかどうかは明らかにはなっていない。また、旧神についてもラヴクラフトがその存在を認めていたどころか設定に一枚噛んでいた事も判明[2]している。

ラヴクラフト自身やその作品群への強い傾倒を示したダーレスだが、生前のラヴクラフトには一度も会っておらず、文通のみの関係だった。

ホラー作品の執筆や編纂活動は有名だが、著名なシャーロキアンでもあり、シャーロック・ホームズパスティーシュである「ソーラー・ポンズ」シリーズの作者としても知られている。これは数多いホームズ・パスティーシュの中でも規模の大きなシリーズ作品であり、大きな評価を得ている。

英国幻想文学協会は、幻想文学の分野におけるダーレスの功績を記念して、彼の死の翌年である1972年にオーガスト・ダーレス賞を制定した。

作品リスト

長編

  • 暗黒の儀式 - The Lurker at the Threshold

連作短編・シュルズベリイ博士(Shrewsbury)シリーズ

  • アンドルー・フェランの手記 - The Trail of Cthulhu(The House on Curwen Street)
  • インスマスの追跡 - The Watcher from the Sky
  • クレイボーン・ボイドの遺書 - The Testament of Claiborne Boyd - The Gorge beyond Salapunco
  • ネイランド・コラムの記録 - The Keeper at the Sky
  • ホーヴァス・ブレインの物語 - The Black Island

ソーラー・ポンズ(Solar Pons)シリーズ

  • "In Re: Sherlock Holmes"--The Adventures of Solar Pons
  • The Memoirs of Solar Pons
  • Three Problems for Solar Pons
  • The Return of Solar Pons
  • The Reminiscences of Solar Pons
  • The Casebook of Solar Pons 吉田誠一訳『ソーラー・ポンズの事件簿』創元推理文庫、1979年
  • A Praed Street Dossier
  • The Adventure of the Unique Dickensians
  • Mr. Fairlie's Final Journey

その他の中短編

  • 蝙蝠鐘楼 - Bat's Belfry
  • イーモラの晩餐 - A Dinner at Imora
  • ライラックの茂み - The Lilac Bush
  • 邪神の足音 - The Pacer
  • 求める者 - Those Who Seek
  • 潜伏するもの - Lair of Star Spawn
  • 風に乗りて歩むもの - The Thing that Walked on the Wind
  • 戻ってきたアーノルド・ベントレー - The Return of Andrew Bentley
  • 甦った毒牙 - Colonel Markesan
  • 吹雪の夜 - The Drifting Snow
  • ハスターの帰還 - The Return of Hastur
  • モスケンの大渦巻き - Spawn of the Maelstrom
  • 湖底の恐怖 - The Horror from the Depths (The Evil Ones)
  • サンドウィン館の怪 - The Sandwin Compact
  • イタカ - Ithaqua
  • 戸口の彼方へ - Beyond the Threshold
  • 闇に潜みつくもの - The Dweller in Darkness
  • 空白の夢魔 - The Lost Day
  • パイクマンの墓 - Pikeman
  • 納骨堂綺譚 - The Occupant of the Crypt
  • 淋しい場所 - The Lonesome Place
  • 謎の浅浮彫り - Something in Wood
  • 丘の夜鷹 - The Whippoorwills in the Hills
  • エジプトから来た猫 - Balu
  • キングスリッジ214番 - Kingsridge 214
  • 図書館の殺人鬼 - The Slayers and the Slain
  • 黄昏に遊ぶ - Twilight Play
  • B17鉄橋の男 - The Man On B-17
  • 閉まる扉 - The Closing Door
  • 暗い部屋 - A Room in a House
  • ポッツの勝利 - Potts' Triumph
  • もうひとりの子供 - The Extra Child
  • ある家のある部屋 - A Room in a House
  • ヘクター - Hector
  • 仮面舞踏会 - "Who Shall I Say is Calling?"
  • シデムシの歌 - "Sexton, Sexton, on the Wall"
  • 谷間の家 - The House in the Valley
  • 黒檀の杖 - The Ebony Stick
  • レコード録音機 - The Disc Recorder
  • 森の空地 - The Place in the Woods
  • 生きながらえるもの - The Survivor
  • 黒い髪の少年 - The Dark Boy
  • 破風の窓 - The Gable Window
  • ルルイエの印 - The Seal of R'lyer
  • アルハザードのランプ - The Lamp of Alhazred
  • ピーバディ家の遺産 - The Peabody Heritage
  • 異次元の影 - The Shadow Out of Space
  • 閉ざされた部屋 - The Shuttered Room
  • ファルコン岬の漁師 - The Fisherman of Falcon Point
  • フォークナー氏のハローウィン - Hallowe'en for Mr.Faulkner
  • 魔女の谷 - Witches' Hollow
  • 幽霊屋敷 - House - With Ghost
  • 屋根裏部屋の影 - The Shadow in the Attic
  • ポーの末裔 - The Dark Brotherhood
  • 幽霊 - The Ghost
  • 恐怖の巣食う橋 - The Horror from the Middle Span
  • 黒の詩人 - The House in the Oaks
  • インスマスの彫像 - Innsmouth Clay

脚注

  1. 『暗黒神話体系シリーズ クトゥルー13』 p.353(青心社) ISBN 978-4878923081 参照。
  2. 『クトゥルフの呼び声(クラシックCOMIC)』(PHP研究所)

テンプレート:クトゥルフ神話