オサガメ

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オサガメ(長亀、Dermochelys coriacea)は、動物界脊索動物門爬虫綱カメ目オサガメ科オサガメ属に分類されるカメ。現生種では本種のみでオサガメ科オサガメ属を形成する。

分布

インド洋大西洋太平洋地中海[1][2]

繁殖地

インドネシアコスタリカスリナムスリランカマレーシアパナマパプアニューギニア南アフリカ共和国など[1]

形態

甲長120-180センチメートル[1]体重916キログラムと現生するカメ目最大種[3]。皮骨と鱗からなる甲羅は発達せず、皮膚で覆われる[1][2]。英名(leatherback=背中が皮の)の由来になっている。背面には7本、腹面には5本の筋状の盛りあがり(キール)がある[2]。背面や体側面の体色は黒く、腹面は白い[1]。背甲や四肢には白い斑点が入る[1]

上顎の先端は鉤状に尖る[1]。体内に外気温よりも体温を高く維持できる発熱器官があり、これにより比較的低温にも耐性があると考えられている[1][2][3]。前肢は幅広い鰭状[2]

卵は直径5-6センチメートルの球形[1][2]。孵化直後の幼体は甲長5-6cmだが、生後1年で甲長60センチメートルに達すると考えられている[1]

また、頭部や尾、四肢を覆う鱗も孵化直後には存在するが、間もなく失われてしまう。前脚のは特に大きく、差し渡し2.7mに達するという。鰭を構成する指先の爪は失われている。骨格は軽量化されている。前述の様に骨性の甲羅が発達しない他、頭骨は緩く重なりあうだけで縫合せず、四肢を構成する骨も中空のものが多い。生体ではこの内部に大量の油を含んでいる。また、体内の余分な塩分を排泄するための涙腺は大きく発達し、眼球を超える大きさにまで肥大化する。身体も大きく、体積に対する身体の表面積の比率が小さいため、体温の保持には有利である。また、骨の内部に存在する大量の油も体温の保持に関係しているといわれる。これらの特徴は、このカメの特異な生態に由来するものである。孵化後3 - 15年(諸説あり)で甲長150センチを超える成体となる。

生態

ファイル:Ponteluth.jpg
産卵するオサガメ

熱帯から温帯にかけての外洋に生息するが、水温の低い北極海周辺まで回遊することもある[1][2][3]。沿岸部には生息しないが、繁殖期になると沿岸部に集まる[1][3]。潜水能力は高く、水深1,000メートル以上まで潜水すると考えられている[1]

骨格が薄く、弾力があるのは水圧を分散し、脳や内臓へのダメージを避けるための適応であろう。この潜水は、朝方に深く、夕刻には浅くなる傾向がある。これは、餌となるクラゲの生態と関係があるといわれる。ただし、暗い深海においていかなる方法でクラゲを捕らえるのかは判明していない。また、遊泳速度も最高で時速24kmとウミガメとしては最速。その活発な行動故か、性質も荒い。

カナダの都市ハリファクスにオサガメの死体が打ち上げられたことがあり、生物学者シャーマン・ブリークニーは、その死体を調査し、熱帯からオサガメが北上してきたと推定した。[4]

食性は動物食で、主にクラゲを食べるが[1]、甲殻類、貝類なども食べる[2]

クラゲは100gあたり22キロカロリーと栄養価は低く、体重数百キロの大型の個体となると一日の摂取量は100キロ近くなる計算であるという。そのためクラゲを効率よく大量に食べる必要があり、このカメの食道は特異な形態となっている。2メートルを超す食道は一度甲羅の後半部で折り返す形となっている。この内壁には最長5cmに達する、胃の側へと向かって生えたがびっしりと並んでいる。食道に棘があるのは海水とともにクラゲを飲み込んだ後、海水を吐き出す際にクラゲを逃さぬためのものであるという。その際クラゲは棘によって引き裂かれ、消化を容易にする。また、この長い食道は、食べたクラゲを一時的に貯蔵する役割もあると考えられている。

繁殖形態は卵生。マレー半島やニューギニア島では5-9月に卵を産む[1]。1回に50-170個の卵を産む[2]。卵は55-70日で孵化する[1]

産卵のための最適な温度は摂氏29.5度で、この温度であれば雌雄の数は半々になるという。

人間との関係

卵は食用とされることもある。しかし肉はクラゲ由来の毒を含んでいるので食用には適さない。また、インドネシアにおいては体内の油はランプに用いられる。

漁業による混獲、食用の乱獲などにより生息数は激減している[1]

常に遊泳することから壁面に激突してしまい、飼育は難しいとされる[1]

また2009年にカナダ・トロント大学などの研究グループが発表したオサガメの研究(1885-2007年、個体数408匹の解剖結果)で、死亡したオサガメの胃の中からプラスチック製品が見つかる割合は、初めて見つかった1968年以降、1998年には個体数全体の40%。1968年から2007年までの平均も37%と高い割合で推移している。またクラゲと間違えてビニール袋や風船たばこやお菓子の包装、釣り糸などを捕食している個体を多数確認しており、その中にはビニール袋を消化管につまらせて直接の死因と疑われている個体も11例確認されている。日本ではクラゲと間違えやすいビニール袋類の誤飲が直接の死因なのか、明確な因果関係が示されていないが、欧米ではビニール袋や風船のような漂流・漂着ごみもオサガメの生命を脅かすものと見なされている。場所によっては、人工繁殖などの試みも成されている。

飼育と展示

オサガメの水族館などでの飼育は特に難しいことで知られる。クラゲを主食とする他、常に遊泳する習性があるからである。特に骨格が軽量化されているために損傷しやすく、透明な水槽を認識出来ずに衝突した際、大きなダメージを受けやすいためである。様々な対策をほどこした結果、マレーシアや国内では名古屋港水族館(8年間)で飼育に成功している。

剥製の展示

京都府京丹後市網野町の琴引浜鳴き砂文化館には2013年1月に同町の海岸に打ち上げられたオサガメの剥製が展示されている[5]

画像

出典

参考文献

  • 平山廉 『カメのきた道 : 甲羅に秘められた2億年の生命進化』 NHKブックス、ISBN 978-4-14-091095-5。33 - 46頁。

脚注

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関連項目

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外部リンク

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  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 1.15 1.16 1.17 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ5 東南アジアの島々』、講談社2000年、104-105、204-205頁。
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、160頁。
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、320頁。
  4. ナショナルジオグラフィック2009年5月号
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