エダイン

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エダイン (Edain、単数形:アダンAdan)) は、中つ国を舞台とした小説、『指輪物語』及び『シルマリルの物語』に登場する人間のうち、エルフと親しんだ三支族を表すシンダール語エルフ語)である。

ヴァリノールにおいては、エルフと同じくイルーヴァタールの子らである人間たちがエルダールの後に来るのを知らされていたことから、クウェンヤで「第二の民」を意味する、アタニAtani、単数形:アタンAtan))と呼ばれていた。ベレリアンドにおいてはシンダール語でエダイン(アダン)となり、のちに人間たちのうちエルフの友として戦った、ベオル家、ハレスの族、ハドル家の三支族だけがそう呼ばれるようになった。ハレスの族と住む奇妙な人間、ドルーグたちがオークの宿敵であることが知れると、エルダールはかれらもエルフの友人とみとめ、ドルーエダインDrúedain、単数形:ドルーアダンDrúadan))と呼んだ。

ベオル家

黒や茶色の髪と灰色の目を持ち、人間の中では最もノルドールに似た一族。青の山脈エレド・リンドンのふもと、サロス川の上流でフィンロド・フェラグンドが最初に遭遇した人間であり、かれらは西方に偉大なるヴァラールがいると聞き及んでやってきたのだった。フェラグンドから多くのことを教わり、かれを主君と仰いでフィナルフィン王家に忠誠を尽くした。

かれらはフェラグンドの忠告を受け、ドリアスの東側に移住した。その地は以後「野営地」エストラドと呼ばれるようになった。人数が増えてくると、フィナルフィン王家が統治する北部のドルソニオンに多くが移動した。

一方、エストラドに残留したものたちは(おそらくはモルゴスの姦計で)エルダールに不審を抱くようになり、ベオルの曾孫ベレグ(Bereg)に率いられて南へ姿を消した。

ベオル

一族の始祖。もともとの名はバラン(Balan)といったが、フェラグンドの帰還に際して、族長の職務を長男のバラン(Baran)に任せてついていったため、「家臣」を意味するベオル(Bëor)として知られるようになった。

93歳の生涯のうち、44年間をフェラグンド王に仕えて過ごした。かれの老衰死は、永遠の寿命を持つエルダールに大きな驚きを与えた。

バラヒア

ブレゴールの息子バラヒアは、ベオルの孫ボロンのそのまた曾孫であり、一族の6代目族長にあたる。かれの時代にモルゴスがアングバンドの包囲を破って攻勢に出たため、戦乱に身を投じることになった。

弟のブレゴラスフィナルフィンの息子たちとともに討ち死にする一方で、シリオンの山道近くで戦っていたバラヒアは、犠牲を払いつつもフィンロド・フェラグンドを救出することに成功した。フェラグンドは返礼として、バラヒア一族の危機に際して力を貸すという誓いを立て、その証として自らの指輪を与えた。これが子孫に代々受け継がれていく「バラヒアの指輪」である。

バラヒアはその後もドルソニオンを死守したが、度重なる攻撃の前に一族は全滅寸前になった。かれの妻エメルディアは男勝りで、内心では戦い続けたいと思ってはいたが、婦女子を連れてハレスの族のいるブレシルの森まで脱出した。エメルディアたちはさらに北西のドル=ローミンまで落ち延び、ハドルの息子ガルドールのもとへたどり着いた。しかし残った男たちは次々とたおれ、バラヒアの仲間は最後にはわずか12人になってしまった。その中には、亡きブレゴラスの息子ベレグンドバラグンドもいた。

かれらはドルソニオン東部の湖タルン・アイルイン近辺に潜伏し、抵抗活動を続けたので、モルゴスは配下のサウロンにその隠れ家を突き止めるよう命じた。バラヒアの仲間の1人ゴルリムは、行方不明の妻エイリネルを捜してしばしば空き家となった自宅を訪ねていたが、そこをサウロンの手先に捕らえられた。ゴルリムはサウロンに惑わされて潜伏先を話してしまい、ドルソニオンの男たちは急襲を受けて全滅した。バラヒアの息子ベレンだけは偵察任務中で難を逃れたが、無残に殺されたゴルリムの霊がかれに危機を伝えた。フェラグンドの指輪をはめたバラヒアの片手は、切り取られてオーク隊長のもてあそぶところとなっていたが、そこに突如現れたベレンによって取り返された。

ベレン

ドルソニオンでただ1人生き残ったベレンは、放浪の末にルーシエン姫と出逢い、やがてモルゴスからシルマリルの宝玉を奪還する冒険に出ることになる。 テンプレート:Main

ハレスの族

ハラディンの族(やから)とも呼ばれる。かれらの言葉からベオル一族の言葉が分かれ出ている。他の氏族より背が低く、知識の吸収にもあまり熱心ではなかった。ゲリオン川東岸の北部、サルゲリオンに移住し、指導者の下に寄り集まるのではなく、それぞれの農場や屋敷に散在して、自給自足の生活を送ることを好んだ。

かれらはしばらく平穏に暮らしていたが、エルダールとの離間策がうまくいかないことに業を煮やしたモルゴスが、直接被害を与えようとオークの軍勢を送り込んだため、ハルダドの指揮のもと、アスカール川とゲリオン川の間の三角地帯に立てこもった。ハルダドと息子のハルダールは討ち死にしたが、娘のハレスが後を継ぎ、カランシアの援軍が来るまで持ちこたえた。

その後かれらは、他の氏族に遅れてエストラドに至ったが、ハレスはさらなる西への移動を強硬に主張した。シリオンとテイグリン川を越えた先のタラス・ディアネンでようやく安住の地が見つかったが、ハレスとかの女に従う一部の者は、両河川にはさまれたブレシルの森にまで入り込んだ。この森はドリアスのシンゴル王の領土だったが、フェラグンドの口利きにより、オークの侵入を防ぐことを条件に居住が許された。

ハレス

ハレス(Haleth)はハルダドの娘で、ハルダールの双子の姉。誇り高く勇敢な人物で、もともと人間に関心を持っていなかったカランシアも、かの女には敬意を表した。しかしハレスは支配や統治を受けることを好まず、エルダールからの保護の申し出を断っている。

エストラドの逗留に甘んじず、反対を押し切って移動を続けるなど強引な面もあるが、一族の中にはかの女を堅く支持するものも大勢いた。ハレスはブレシルの森で生涯を終え、森の丘の「姫塚」トゥーア・ハレサに葬られた。生涯独身だったため子はおらず、族長の地位は亡き弟の子ハルダンが継いだ。

ハルミア

ベオル家のドルソニオンやハドル家のドル=ローミンに比べて南方に位置するブレシルの森は、モルゴスが攻めに転じた時代においても当初は攻撃を受けていなかった。だがシリオンの山道が突破され、オークの群れが南下してくると、ハラディンの王ハルミアはシンゴルに急使を送った。派遣されてきたドリアス国境警備長、強弓のベレグ(Beleg)とともに、ハルミアは不意打ちを仕掛けてオーク軍を壊滅させた。

この戦争が始まる前、ハルミアの娘ハレス(Hareth)は金髪王ハドルの息子ガルドールと結婚していた。そのため2人の間の子であるフーリンとフオルもブレシルで暮らしており、若くしてオークの迎撃に向かっている。

ハルディア

ハルミアの息子。姉ハレス(Hareth)と同時期に、金髪王ハドルの娘グローレゼルと結婚した。当時の習慣により、甥のフーリンとフオルを養育したのはかれである。

「涙尽きざる合戦」ニアナイス・アルノイディアドの開戦前にハルミアが死去したため、族長として参戦。退却するフィンゴン軍のしんがりを守って討ち死にした。かれの跡は息子のハンディアが継いだ。

ブランディア

父ハンディアがオークとの戦いで討ち死にして後、族長となった。幼少のころから足が不自由なのと、おとなしい性格だったために戦闘は好まず、アモン・オベル山頂にエフェル・ブランディアという囲みを築き、そこに隠れ棲んでいた。癒しの術が得意。

傷ついたトゥーリンを救ったことで、かれと知り合う。後にトゥーリンが助けた記憶喪失の乙女ニーニエルに恋し、かの女をトゥーリンから引き離そうとするが、それは嫉妬のためではなく説明のつかない不安のためだった。竜グラウルングの討伐に向かうトゥーリンの手助けができないことを同族のドルラスに罵倒され、面目を失った。このときは身内のフンソールが代わりに出陣することになったが、さらにニーニエルまでがトゥーリンの後を追ってエフェルを出て行ってしまったため、族長の地位を棄てて悪い脚で必死に追いかけた。

グラウルングはついに討たれたが、その過程でフンソールは死に、トゥーリンも昏倒した。なんとかニーニエルに追いついたブランディアは、トゥーリンは死んだものと考えてかの女を連れ戻そうとするが、ニーニエルはあくまで愛するトゥーリンを求めた。ところが、グラウルングが最期の言葉で、ニーニエルの正体がトゥーリンの妹ニエノールであることを明かしたため、かの女はテイグリン川に身を投げてしまった。一部始終を目の当たりにして希望を失ったブランディアも身投げを考えたが、濁流の恐ろしさにためらって引き返した。その途中で、敵前逃亡していたドルラスに出会い、かれを斬り捨てた。ブランディアがその生涯で奪った命はこれだけである。

ニーニエルを護衛してきた人々のもとへ帰り着いたブランディアが事の次第を説明しているところに、実は生きていたトゥーリンも戻ってきた。すかさずドルラスの妻がブランディアを讒言したため、それを真に受けたトゥーリンはかれの行動が悪意に基づいたものと思い、激しく罵倒した。ブランディアは真相を語って反論したが、激昂したトゥーリンに斬り殺されてしまった。

ハドル家

背が高く好戦的な氏族。黄色い髪と青い目を持つ。西方への大移動では先行していたのだが、人数が多いにもかかわらずただ1人の族長マラハ(Marach)が統率していたために遅れ、追い抜かれた。ベオル一族とは非常に友好的で、エストラドの東南に入植した。

マラハ(Marach)は生涯エストラドに残ったが、ノルドールからアラダンの名を与えられた息子のマラハ(Malach)や、孫のマゴルたちはさらに西へ進み、シリオンを渡ってエレド・ウェスリン南側山腹の谷間に至った。しかしまた別の孫であるアムラハは、ベオル一族のベレグ(Bereg)同様にエストラドで不満分子を率いていた。アムラハ自身は、モルゴスの手先がかれの偽者を送り込んできた一件で考えを変え、北のマイズロスに仕えるようになったが、残りは青の山脈を越えて東のエリアドールに戻っていった。

ハドル・ローリンドル

「金の頭髪」ローリンドルと称されるハドル(Hador)は、マゴルの子ハソルの、そのまた子に当たる。かれは若いころにフィンゴルフィンに仕え、ベレリアンド地方北西のドル=ローミンを領地として授かった。ハドルは一族のほとんどをその地に呼び集めたので、エダインの族長中で最も強大な力を持つに至った。

シリオンの源流に建つエイセル・シリオンの防壁にて、モルゴス軍の強襲からフィンゴルフィンの後衛を守って死亡。66歳だった。かれの次男グンドールも多くの矢に射抜かれてたおれた。

しかしハドルの長男ガルドールの血統からは数々の英雄が生まれ出た。

フオル

ガルドールの息子にして、フーリンの弟。わずか13歳で兄とともに戦いにおもむき、本隊からはぐれて川辺で追い詰められたところを、水の王ウルモの加護で霧が発生して助かった。兄弟は大鷲の導きで隠れ王国ゴンドリンに連れてこられ、王トゥアゴンの歓待を受けた。2人は一年後にドル=ローミンに帰還した。

「涙尽きざる合戦」ニアナイス・アルノイディアドにもやはり兄弟で出陣し、味方の敗色が濃くなった後もシリオンの山道を死守し続けた。フオルは希望を失いかけたトゥアゴンを励ましてゴンドリンへ撤退させ、じりじりと後退しながら抵抗を続けたが、セレヒの沼地で毒矢に眼を射抜かれて死亡した。

合戦の2か月前に結婚したフオルの妻のリーアンは、夫が遺した息子トゥオルを産んで灰色エルフに預けると、戦死者たちの塚山ハウズ=エン=ヌデンギンまでおもむいて、そこに身を横たえて死んだ。

フーリン

ガルドールの息子であり、「不動」サリオンの異名を持つ。弟フオルとともに、若いころゴンドリンを訪れた経験がある。

ニアナイス・アルノイディアドでは、兵力を過少に見せかけるモルゴスの戦略を見抜くなど、鋭いところを披露したフーリンだったが、負け戦を覆すことはできなかった。トゥアゴンとの戦場での再会を喜びつつ、かれが撤退できるように死力を尽くし、セレヒの沼地でただ1人になるまで戦い続けた。フーリンはトロルを70体まで倒したが、ついにバルログの首領ゴスモグに生きながら捕らえられた。

フーリンはアングバンドまで連行されると、サンゴドリムの山上に呪縛され、モルゴスによって妻子や同胞が苦しめられる様を延々と見せつけられた。28年の虜囚の末にかれは解放されたが、容貌がすっかり恐ろしげに変化していたのと、モルゴスのしもべが敢えてかれを丁重に扱ったために悪の手先のように見えたので、かつての仲間から迎えられることはなかった。

孤独と恨みを抱えたフーリンは、隠れ王国ゴンドリンを求めて山々に呼ばわったが、トゥアゴンが対応に迷っているうちに去ってしまった。しかしこのときの呼びかけで、ゴンドリンの位置がモルゴスに露呈してしまったのだった。フーリンは放浪を続け、同じく荒野をさまよっていた妻モルウェンを見出し、その最期を看取った後、ナルゴスロンドの廃墟にやってきた。そこでは小ドワーフのミームが竜の遺した宝物に囲まれていたが、かれが息子トゥーリンを裏切ったことを知るフーリンはこれを殺害。宝の山からフィンロド・フェラグンドの首飾りナウグラミーアだけを持ち出して、今度はドリアスを訪れた。シンゴル王が、かつてはトゥーリンやモルウェンを庇護しておきながら、結局みな死に至ったことを逆恨みし、フーリンは首飾りを「世話になった礼」として王へ皮肉交じりに投げつけた。

だが、王妃メリアンの呼びかけで正気に戻ったフーリンは、自分の一連の行動がモルゴスの悪意の影響下にあったことを悟った。かれは改めて礼儀正しく首飾りを王に渡すと、ドリアスを辞し、やがて西の海に身を投げた。

モルウェン

バラグンドの娘にしてフーリンの妻。「エルフの輝き」エレズウィンとも呼ばれる。バラヒアの妻エメルディアとともにドルソニオンから脱出した1人。

かの女自身はベオル家の生まれだが、夫フーリンがモルゴスに捕らえられたあともハドル家の一員としてドル=ローミンにとどまり続けた。周辺を好き放題に荒らしまわる東夷たちも、この「ドル=ローミンの奥方」のことは恐れ、近づこうとしなかった。しかし実際のモルウェンの暮らしは貧しいものであり、フーリンの親戚で東夷ブロッダの妻になったアイリンの援助をひそかに受けていた。

息子トゥーリンをドリアスのシンゴル王に預けたモルウェンは、その後フーリンが遺していった次女のニエノールを産んだ(長女ラライスは3歳で病死している)。母娘はドル=ローミンでしばらく貧困に耐えていたが、周辺がいくらか安全になると、ドリアスを訪れてシンゴルの庇護下に入った。しかしトゥーリンはすでに成長して旅に出ており、親子の対面はかなわなかった。

やがて名高い剣士モルメギルの正体がトゥーリンであることが知れると、モルウェンはなかば狂乱したようにって、息子を求めて飛び出してしまった。シンゴルの配下マブルングは、衛士たちを連れてかの女を追ったが、その衛士の中に変装したニエノールまでが紛れていた。やむなくマブルングは2人を護衛しながら行動することにしたが、竜グラウルングの襲撃で母娘は行方不明になってしまった。マブルングはモルウェンを探し続けたが、何の手がかりも得られなかった。

後になって、モルゴスのもとから解放されたフーリンが、娘ニエノールの身投げした崖カベド・ナイラマルスを訪れると、すっかり年老いたモルウェンがその場所でかれを待っていた。日没とともにかの女は息絶え、フーリンは妻のために墓を作って去った。

ブレシルの予言者グリアフインの歌には「不運なる者たちの墓石は、海が陸地を飲み込もうと、覆されることはない」とある。そして、ベレリアンドの地が引き裂かれて海に沈んだ後も、かの女の墓はトル・モルウェンの小島となって残ったのだった。

トゥーリン

フーリンとモルウェンの息子。竜殺しの英雄にして、破滅を呼ぶ男。 テンプレート:Main

系譜

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