ルーシエン
ルーシエン・ティヌーヴィエル(Lúthien Tïnúviel)は、J・R・R・トールキンの中つ国を舞台とした小説、『シルマリルの物語』の登場人物。 イルーヴァタールの子らのうち、もっとも美しいといわれるエルフの乙女。 人間であるベレンとの恋の成就のため、かれとともに冥王モルゴスの居城アングバンドに入り込み、シルマリルをひとつ持ち帰った。
別名のティヌーヴィエル(Tïnúviel)は、シンダール語で「小夜啼鳥」、「薄暮の娘」を意味する。
父はシンダールの王シンゴル、母はマイアのメリアン。夫はバラヒアの息子ベレン。息子にディオルがいる。
『指輪物語』にも言及があり、「ルシアン・ティヌヴィエル」と表記されている。
マイアの娘
ルーシエンは、エルフの王シンゴルとマイアのメリアンとの結びつきから生まれた。世界の創造にたずさわったアイヌアのうち、イルーヴァタールの子らと結ばれたのはメリアンだけであり、またどんな結びつきからであれ、アイヌアのうちで子をなしたのもかの女だけである。ルーシエンは母メリアンが持つ神秘の力を受け継ぎ、その歌によってモルゴスの副官サウロンとも渡り合い、冥王モルゴス自身にさえ術をかけることができた。
ただ一人死んだエルフ
メリアンの魔法帯を潜り抜けたベレンは、森で踊るルーシエンと出会い一目ぼれし、二人の間には愛が芽生えた。しかし父シンゴルはベレンとの結婚を認めず、ベレンをシルマリル奪取という無謀な責務に送り出し亡き者にしようとし、後を追わぬようルーシエンを木の上の家に監禁した。
ルーシエンは伸ばした髪で編んだ網を使って脱出し、自身の魔法とヴァリノールの猟犬フアンの力に助けられ、道を阻むフェアノールの息子ケレゴルムとクルフィン、モルゴスの召使サウロン、モルゴス子飼いの狼カルハロス、はてはモルゴス自身と対決しそれらを退け、ベレンの片手を代償にアングバンドの王冠からシルマリルの一つを奪取することに成功した。
シンゴルはその功績を認め二人の結婚を許したが、シルマリルを飲み込んだカルハロスによってベレンは深手を負い、命を落とした。ルーシエンはベレンを追ってマンドスの館に到り、マンドスを説得し、イルーヴァタールに問うたマンウェよりベレンを忘れエルフとして世界が終るまで生き続けるか、ベレンとともに歩み人間として死ぬかの選択を与えられた。
ルーシエンは後者を選び、二人は再び現世によみがえり、そしてルーシエンはエルフでただ一人本当に死んだものとなってベレンとともに世界を去った。
ルーシエンの子孫
ルーシエンはベレンと結ばれて、息子ディオルをなした。ディオルとニムロスの娘がエルウィングであり、かの女とエアレンディルの息子がエルロンドとエルロスである。エルロスは半エルフとして人間の運命を選び、ヌーメノールの王となった。かれからドゥーネダインの王家にマイアールとエルフの血が流れ込んだ。『指輪物語』の登場人物、アラゴルンもその一人である。