ウエイトトレーニング
ウェイトトレーニング(テンプレート:Lang-en-short)は、筋力トレーニングの1種目。バーベル、ダンベル、マシンまたは自重などを使い筋肉に負荷をかけ体を鍛えるトレーニング。主に筋力の増大、またはそれに伴う筋肉の増量などを目的とするトレーニングの総称。
狭義にはバーベルやダンベル、専用のトレーニングマシンを使用したトレーニングであり、広義にはそれに自重を利用したトレーニングも含む。
目次
骨格筋(筋肉)の性質
はたらきと概要
- 骨格筋は体重の40%を占める巨大な器官。
- 基礎代謝のうち約40%が骨格筋で消費される。
- 筋肉量が増えると基礎代謝量が増え太りにくい体質になる。
- 筋肉には速筋(繊維)と遅筋(繊維)がありそれぞれに特徴がある。
- 骨格筋が持っている最大能力のうち、実際に使われているのは40〜90%(動員筋力比率)である(個人差がありトレーニングにより向上する)。
- 筋力のピークは男性30歳代・女性40歳代。
- 年齢に関係なく発達する。
- 自重のみを利用しても発達する(漸進性過負荷の原則も参照)。
速筋と遅筋
- トレーニングにより肥大するのは速筋繊維。
- 身体内には400以上の骨格筋が存在するが、瞬発的に大きな力を発揮する部位には速筋繊維が、持久的な機能が要求されることの多い部位には遅筋繊維が多い(ただし個人差がある)。
- 筋肉繊維の割合は遺伝により胎児のときに決まる。
- 通常、力を発揮する場面では先ず遅筋繊維から動員され随意最大筋力の40%以上の力を発揮する場合には速筋繊維も動員される。
- 瞬発的な動きをしたときに限り、筋出力に関係なく速筋繊維が動員される。
- 速筋繊維は遅筋繊維よりも加齢による衰えが大きいため、俊敏性を要求される動作ほど加齢の影響を受けやすい。
筋肉発達の機序と効果
ウエイトトレーニングの原則
漸進性過負荷の原則
10kgのダンベルを連続して最大10回上げ下げできる人が12kgのダンベルで継続的にトレーニングをしていると、やがて10kgを10回を超えて上げ下げできるようになる。また、筋量や筋力を発達させ続けるためには一定期間ごとに扱う重さを漸増させる必要がある[1]。
継続性の原則
トレーニングは継続しなければ効果がない。トレーニングを辞めてしまうと筋肉は次第に衰える。基本的には筋肉が付くのと同じくらいのペースで落ちると言われている。ただし、長年に亘って継続してトレーニングを続けていた場合はその限りではない。
特異性の原則
筋肉は、その動きの早さや動かした角度、力発揮の仕方など実際にトレーニングした様式に合わせて特異的に成長する。
個別性の原則
人それぞれ個性があり、ある人には効果があるトレーニングでも他の人にも効果があるとは限らない。一人ひとり、個性に合ったプログラムを選択する必要がある。
意識性の原則
トレーニング効果を高めるには、筋肉に対してどういう風に動いて欲しいかをイメージする事が重要。
筋肉の記憶力
例えば、元々50kgしかベンチプレスできない人間が、100kgベンチプレスできるようになるには、普通、年単位のトレーニングが必要であるが、一旦100kgベンチプレスできるまで鍛えた人間がトレーニングを出来ない事情により衰えて50kgしかベンチプレスできなくなったとしても、100kgベンチプレスできるまで回復するのにそれほど時間はかからない。たいていの場合2〜3ヶ月のトレーニングで最大筋量に近い力を取り戻すことが出来る。
ウエイトトレーニングのテクニック
フォースドレップ法
最後のセットで行う。通常のセットを自力での限界までこなしたあと、インターバルを入れずに1〜2回、補助者の力を借りてウエイトを上げ、自分の力のみで下ろす。補助者はトレーニーがウエイトを上げられるようにするための最低限の力だけを加える。補助に入るタイミングが重要で、補助に入るための合図などを決めておくとよい。ベント・オーバー・ローイングやデッドリフトなど補助の難しい種目には適していない。それらの種目では他のテクニックを用いるようにする。
パーシャルレップ法
最後のセットで行う。通常のセットを行い、最後のセットで全可動範囲での動作が続けられなくなったら、インターバルを入れずに動かせる範囲だけさらに数回を行う。例えばサイド・レイズの場合、最後までウエイトを上げられなくなったところから可動範囲の3分の1、2分の1など出来る限り大きな範囲で回数を重ねていく。動かせる範囲は徐々に小さくなり、やがて全く動かせなくなる。
レストポーズ法
最後のセットで行う。通常のセットを行い最後のセットを限界まで行ったあと一旦ウエイトを置き、5〜6秒間または10秒間のインターバルを置いてすぐにまた回数を重ねていく。
ディセンディングセット法
最後のセットで行う。通常のセットを限界まで行ったあと、インターバルを入れずに60〜70%くらいの重さでさらに限界まで行う。
筋優先法
特に発達させたい部位からトレーニングする方法。その部位については全く疲れのないフレッシュな状態で鍛えられるため、力を発揮しやすく効果が上がりやすい。
スポーツにおける利用
多くのスポーツドクターやアスレティックトレーナーらによるスポーツ医学(スポーツ医科学)の発展に伴い、各競技種目に合った科学的なウエイトトレーニングのメニューが考えだされており[3]、オリンピックをはじめとする国際大会において好成績を収めるためには非常に重要なものとされ多くの選手がこれに取り組み、国家レベルでも大規模な科学的トレーニング施設が整備されトップアスリートなどに利用されている[4]。しかし過去には誤った認識の下に行われてきた歴史もあり[1]、一部の研究者・スポーツ指導者・選手の間では、ウエイトトレーニングに対しいくつかの誤解や懐疑的な意見もある。
ウエイトトレーニングに対する誤解
- ウエイトトレーニングでつくられた筋肉は実際の競技では役に立たない。
- 一定方向にしか動かないためスポーツ競技者には不向き。
- 筋肉の柔軟性が失われる。
- 関節が固くなる。
- 身体の抗体能力が落ち、病気になりやすい(練習後、著しく体力が低下する為)。
- 無意味な体重増加を招き、膝などの関節を痛めやすくなる。
- 持久力が衰え、バテやすくなる(体重が増加する為)
その競技に合った適切なトレーニングを行わないと上記のような問題が起きることがあり[1]、以下にその理由を記す。 テンプレート:See also
- 例えば野球選手などが初動作に力を発揮することを追求したり、過度な慣性モーメントの増大(過度な筋肥大)を伴わず神経発達に伴う動員筋力比率を高めるようなトレーニングを行えば競技力の向上が期待できる。しかしボディビルのように、筋量の増加や可動域全域にわたり力を発揮できるような事を主眼としたトレーニングを行うと筋量・筋力は発達するが、スピードは失われる。このような方法を野球選手が採用すれば競技力が低下する可能性がある[5]。しかし柔道選手や力士など、比較的長時間筋出力を発揮し続ける場合がある競技においては、ボディビル的なトレーニングのみによっても競技力の向上に寄与する[1]。
- 関節付近の筋量が増えその可動域が縮小した場合や、競技時におけるスピードの低下が見られたときに時として筋肉そのものが硬くなったと錯覚することがある。これらは不適切なトレーニングを行った結果であったり、ストレッチなどを怠った場合に起こるものであるし、適切なトレーニングは逆に柔軟性を増進させる[5]。
- ウエイトトレーニングに限らず、競技における直接的な練習であっても練習期間中に十分な休養を取らなければ病気になりやすい[5]。
- これも上記1.と同様な理由により誤った方法を採用したことによるもので、無意味なトレーニングは無意味な体重増加を招く。だだしボデイビルダーなどがトレーニングの一環としてランニングを頻繁に行う事実[6]は、筋量アップにより体重が増えたとしても下半身のトレーニングを適切に行えば膝関節などを補強することができることの一つの証明であり、関節への単純な負担増加論にはあたらない。また、陸上競技の走力を競う種目の選手にとって大腿四頭筋やハムストリングスは重要な筋肉であり、短距離走の選手などはこれらがよく発達しているが、それらをウエートトレーニングにより機能的かつ理想的な形状に発達させるためには高度なテクニックが要求される。膝周辺のそれらを上部と同様に著しく発達させた選手は、疾走時において膝に掛かる負担が大きくなり膝関節の故障を誘引することがある[1]。
- オリンピック選手などがウエイトトレーニングによって専門的持久力の向上に全てを依存しているわけでないが、ウエイトトレーニングが心肺機能をはじめとする生理学的持久力の向上に寄与することは日本スケート連盟などの実験により確かめられている[1]。ただし、長距離走の選手が短距離走の選手と同様に速筋繊維を肥大させた場合には、体重の増加により競技タイムが低下する可能性はある[7]。
以上のように、適切に行われるウエートトレーニングにおいては筋力の向上・神経発達に伴う動員筋力比率の増加・柔軟性の増進などにより競技力の向上が期待できる反面、種目・目的に合致しないトレーニングを行った場合においては、結果的に扱えるウエートが増加したにもかかわらず競技成績には反映されなかったり、逆に成績低下を招くことにもつながるため、ウエイトトレーニング導入にあたっては十分な専門知識と計画性を持った上で慎重に採用・実施をする必要がある。
日本スポーツ界におけるウエイトトレーニング
20世紀の日本では、アンチドーピングの立場から、スポーツ選手が筋肉だけを鍛えるというトレーニングを控えてきた歴史があった。
そんな風潮の中、日本のアスリートとして初めて本格的ウエイトトレーニングを取り入れたのは柔道家の木村政彦である。木村は柔道の練習も含め、ウエイトトレーニングを入れると1日10時間の練習量を誇った。ベンチプレスで250kg、ストレートアームプルオーバーで90kgを上げたという。立ったまま両腕を前に伸ばし、そこに100kgのバーベルを乗せて肩から手首にかけて何度も転がすことができた[8]。
野球の場合、「野球の筋肉は野球でつくられる」という考え方が主流の時期が長かった[9]。現在も、中日ドラゴンズの落合博満監督(当時)は、「野球の筋肉は野球で作られる」という考え方である。また、シアトルマリナーズのイチロー選手は、沢山のトレーニングマシンを持ち使用しているが、筋肥大を目的として使用していない。彼の使うマシンの機能は、柔軟性の増進やスピードの向上あるいは神経発達に伴う動員筋力比率の向上を目的としたものである。イチローは、「ただ筋肉を太らせるだけでは、神経の行き渡った筋肉でないと、意味がない」と語っている[10]。
大相撲界では「しこ」や「てっぽう」などの自重を利用したウエイトトレーニングの要素を含む稽古が伝統的に行われている。千代の富士、隆の里、霧島などは従来の稽古に加え、器具を使ったウエイトトレーニングを積極的に取り入れた。
冨田洋之選手のように「体操の筋肉は体操でつくられる」と考える選手もいる[11]。
ウエイトトレーニングの種目
数が多いため、伸縮型のメニューとして掲載する[12][13][14]。 テンプレート:Navbox
参考文献
- 窪田登『ウイダー・トレーニング・バイブル』 森永製菓株式会社健康事業部
- 『ドリアン・イエーツのすべて』 森永製菓株式会社健康事業部
- 山本義徳『体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング』 永岡書店
- 『かっこいいカラダ the best』 ベースボールマガジン社
- 厚生労働省作成『健康作りのための運動指針2006』
- 財団法人健康・体力づくり事業団作成『健康づくり教本テキスト』 2005年2月。