ウインダリア
テンプレート:Infobox Film 『ウインダリア』は、1986年7月19日に公開されたアニメ映画。カナメプロダクションが、テレビアニメ『プラレス3四郎』やOVA『幻夢戦記レダ』などに続いて制作した作品である。原作・脚本は藤川桂介、監督は湯山邦彦。
目次
概要
テレビアニメ『プラレス3四郎』でも藤川桂介と組んだカナメプロダクションが、藤川へ全面的にストーリーを委託。藤川は『雨月物語』の浅茅が宿を下敷きにしてオリジナルストーリーを構成し、「約束」をテーマに架空の世界を舞台として戦争に翻弄された2組の男女の愛をファンタジックに描いた[1][2]。
本作は前年の『幻夢戦記レダ』とは異なり、より幅広い層の人間に見てもらうことを目指して制作された[3]。当初は全3話から構成されるオムニバス形式の予定で、藤川の用意した3つの物語にそれぞれ異なるスタッフを配し、競合させるという企画だった。ちなみに、タイトルはテーマでもあった『約束』で、本作はその中の3つ目の話を大きくしたものである。
タイトルの変更は「『約束』の英訳が消費者金融プロミスと同じ名前になるから」というのが理由らしいが、小説版のタイトル『ウィンダリア 童話めいた戦史』や、それと同じ出版社のアニメ誌の記事では「ウィンダリア」と「イ」が小さくなっており、タイトルは当初から統一性がなかった[4]。
小説版の出版は劇場公開に先駆けた1986年3月だったが、その理由について藤川は「より多くの人に関心を持ってもらいたかったため」と小説版のあとがきの中で述べている。その後、本作はよみうりテレビの『アニメだいすき!』で何度か放送され、「OLたちの選ぶアニメ」で1位になった[2]。劇中に登場する巨木ウインダリアは、オーストラリアの小村にあるという幸福の木の名をもじったものだという[2]。
なお、本作の後年もアニメ音楽で長く活躍することになる歌手、新居昭乃のデビュー曲は本作の主題歌『約束』であった。また、音楽担当の門倉聡がこの仕事を引き受けるきっかけとなったのは、デビュー前に新居が制作したエンディング曲(クレジット上は挿入歌)の「美しい星」のデモテープであったとのこと[5]。
あらすじ
テンプレート:不十分なあらすじ 南方の海の国・イサと北方の山の国・パロは古くから不可侵条約を結び、長年平穏な関係を築いてきた。しかしパロの王ランスロは美しいイサを欲しがり、イサの水没を試みた。この企てはサキの村の青年イズーによって阻止されたが、イサとパロはこの事件をきっかけに互いに不信を募らせていく。
登場人物
「声」は映画版の声優。
- イズー
- 声 - 古谷徹
- サキの村の青年。マーリンの夫。根は明るく陽気で商売上手だが、その分お調子者で考えなし。マーリンを心から愛し、もっと良い生活をさせたいと思っているが、同時に自分の力が認められない歯痒さがあり、立身出世を熱望していた。イサを水没の危機から救ったにもかかわらず、評価されなかったため、厚遇を期待しパロに身を投じる。以降は堕落したパロの気風と欲望のために性格が激変し、かつて自らが救った街・イサを水没させ、財宝・栄華を手にする。しかしやがて命を狙われ、守り刀だけを手に命からがら脱出する。
- マーリン
- 声 - 神田和佳
- イズーの愛妻であり、良き理解者。信仰篤く、祈りを欠かさない。ペットのポリポリを肩に乗せている。今のままのささやかな生活が一番だと思っており、イズーの変化に不安を感じている。約束を固く守り続け、自らが死した後もひたすら夫の帰還を待ち続けていた。イズーと再会し約束を果たした喜びと共に、赤い鳥となって天へ昇っていった。
- アーナス
- 声 - 松井菜桜子
- イサの王女。女王ギネビアとハロールの娘。開放的で気が強く、おてんば。パロの王子ジルと恋仲であり、伝書鳩のクックウを使って連絡を取っていた。戦争回避のため自らの結婚も申し出るが却下されてしまう。ジルの出陣を聞き、彼女も最前線へ出陣する。ジルと相対し、迷いの森で対話の時間を持つが、破られた約束と出口のない状況に絶望し、ジルを射殺、自らも命を絶つ。
- ジル
- 声 - 井上和彦
- パロの王子。国王ランスロとクンドリーの子。アーナスとは密かに交際する間柄。戦争に反対であったが、軍指揮官に任ぜられ、父王にイサ侵攻をやめるよう進言するが揉み合いとなり、誤って殺害してしまう。父王殺害の責任を取って戦争に挑むよう母后と臣下に求められ、結局自ら陣頭指揮を執る。
イサ
- ギネビア
- 声 - 斉藤昌
- イサの女王でアーナスの母。パロから攻撃に対し、軍事力の差も顧みず、戦争回避ではなく対決姿勢を示す。自国軍の出陣を見送りながら、病に倒れる。
- ハロール
- 声 - 徳丸完
- ギネビアの夫だが、実権はほとんどない模様。
- ピラール
- 声 - 永井一郎
- イサの水門の番をしている老人。潮の満ち引きのさい、水門の開け閉めをしているが、それ以外のときは居眠りしている。
パロ
- カイル
- 声 - 若本紀昭
- 筆頭大臣。イズーにパロへの協力を巧みに要請する。策略家。
- ランスロ
- 声 - 柴田秀勝
- パロの国王でジルの父。イサを得る欲望にかられ、自国の現状を把握できていない。ジルに侵攻中止を勧められると激高し、逆に剣で切り掛かろうとして揉み合ううちに死亡する。
- クンドリー
- 声 - 吉田理保子
- 王妃。
- シャレム
- 声 - 木下由美
- 戦勝の褒美として、財宝や邸宅とともにイズーに与えられた女性。しかし実際はイズーが邪魔になったさいにいつでも始末できるようにカイルが用意した刺客。
サキの村
- ドルイド
- 声 - 高島雅羅
- バンボウの恋人。豪奢な生活を夢見て、バンボウに幽霊船の船長になるよう説得した。しかし富を得ながらもバンボウのいない生活に耐えられなくなり、半ば狂人のように幽霊船を追ってはバンボウに戻ってきて欲しいと呼びかけている。イズーは彼女とも再会するが、「いつまでも待つ」と誓う彼女もまた、すでにこの世の人ではなかった。
- バンボウ
- 恋人のドルイドが豊かな生活を求めたために幽霊船の船長となった。劇場版では直接描かれない。
- トレル
- 声 - 矢尾一樹
- マーリンを気にかけ、避難を勧める。
その他のキャスト
設定
イサ、パロはともにユーロ大陸に古くから繁栄する大国である。ただし両国の国の歩みは全く対照的。基本的には都市国家なので、中心から離れた地域には独立を保つ村落も少なくないようである。サキの村もその1つ。パロの南に迷いの森があり、迷いの森を抜けるとサキ、さらに南にイサがある。文明はかなり発展(飛行機・水上バイクなどがある)しているが、地域によって普及度に差がある。人々の宗教形態、神々などはほとんど明らかではない。しかしマーリンのように信仰に熱い人間は常に祈りを欠かさないようである。死後、人々の魂は肉体を離れて幽霊船に赴き、そこで永遠に暮らすとされる。詳細は以下に説明。
- イサ
- 太陽と海と風に恵まれた国。ユーロ大陸最南端に位置する都市国家で、古くに戦争を捨て平和路線のみで繁栄してきた。イパ河河口に位置し、大規模な水門により水害を防いでいる。宮殿の向かいにある大聖堂は人々の信仰の中心。人々はみな陽気で楽天的だが、悪く言えば平和ボケ。長年の平和で形式的な兵しかおらず、軍備も航空機と原始的兵器(ボウガン・槍)のみでパロとは雲泥の差がある。
- パロ
- 産業を発展させた軍事大国。ユーロ大陸の内陸部に位置し、古くから近隣諸国や村々を武力で併呑してきた。王都は山頂に築かれている。力と富は人々の生活も心もすっかり堕落させ、兵の訓練、統率さえままならず、よそ者には職もない有様。かつての栄光は過去のものとなっているが、プライドの高い指導者層はそのことを認めたがらない。
- サキの村
- イサとパロに挟まれた農村地帯にある小村の1つで、両国の交通路にあたる。人々は素朴で、イサあるいはパロで農作物を売って生計を立てている。村の北の丘にそびえる巨木ウインダリアを宝とし、信仰している。
- ウインダリアの木
- サキの北の丘にそびえる巨木。樹齢は不明。サキの村の集会の場。幸運を呼ぶ木とされ、人々に良い思い出を授けてくれるとして、村人から信仰されている。
- 迷いの森
- イサとパロの間に広がる幻惑の森。人々の心を映し惑わせる。アーナスとジルの逢瀬の場所。後に戦場となる。
- イパ河
- 源流をパロに発し、迷いの森を通過してイサに流れる川で、河口付近では天井川となっている。河口の水門の扱いを間違えると、水害を引き起こしてしまう。
- 幽霊船
- 人が死ぬと現れて、魂を集めて回る飛行船。常に天空を飛び続けているが、10年に一度、船長が交代する時のみ地上に降りてくる。一度船長になると任期が終わるまで戻れないので、船長のなリ手がない。そのためイサとパロの呼びかけで志望者には莫大な報酬が払われる。行動範囲はユーロ大陸全域に及ぶという。
- 魂
- 赤い鳥の姿をしている。人が死ぬと肉体から離れて天を舞い、幽霊船へと飛び立つ。
由来
テンプレート:出典の明記 地名や人名の多くはケルト神話やアーサー王伝説等に由来している。イズー(イゾルデ)、マーリン、ランスロ、ギネビア、ドルイドなどがそうである。パロ(ファラオ)、イシスはエジプトから。大樹ウインダリアは上記のとおり。
小説版との違い
上映時間の都合上、藤川の原作が簡略化されていることは否めない。しかしその分イズーとマーリン、アーナスとジルの悲劇に焦点が絞られている。マーリンがイズーに渡したお守りは小説版ではウインダリアの葉を入れた守り袋だが、劇場版では短剣に変更されている。困ったときイズーを助けてくれるという言葉を生かすとともに、夫を戦争に送りだす妻の悲痛な決意を象徴した演出となっている。
スタッフ
- 企画・制作 - 小野寺脩一、長尾聡浩
- 原作・脚本 - 藤川桂介
- 監督 - 湯山邦彦
- レイアウト - 林隆文、毛利和昭
- 演出助手 - 政木伸一
- キャラクターデザイン・作画監督 - いのまたむつみ
- メカニックデザイン・イメージ設定 - 小原渉平、豊増隆寛
- サブメカニックデザイン - 佐藤智彦
- アニメーションコーディネーター - 影山楙倫
- メインアニメーター - 毛利和昭、林隆文、村中博美、田中保、いのまたむつみ、兵頭敬、影山楙倫、荒木英樹、知吹愛弓、戸倉紀元、池上裕之、小林利充、宇都宮智、和田卓也、戸澤稔、山本泰一郎、合田浩章、市川吉幸、中沢数宣、磯野智、小林智、小泉たかし、小原渉平、豊増隆寛
- 動画チェック - 石田敦子
- 美術監督 - 勝又激
- 背景 - スタジオコスモス
- 撮影監督 - 枝光弘明
- 撮影 - スタジオぎゃろっぷ
- 編集 - 掛須秀一
- 音楽 - 門倉聡
- 音響監督 - 松浦典良
- 音響助手 - 渡辺淳
- プロデューサー - 長尾聡浩
- 製作 - あいどる、カナメプロダクション
主題歌・挿入歌
関連商品
- VHS・β・VHD - ビクター音楽産業
- LD - ポリドール(再発盤はマイカルハミングバード)
- DVD - ビクターエンタテインメントから2000年(再発盤はアトラス、2005年)
- 原作小説 藤川桂介『ウィンダリア 童話めいた戦史』 (ISBN 4041653010 角川文庫 1986年3月)
- ガイドブック 『ウィンダリア 童話めいた戦史』(角川書店 1986年8月)
- ゲーム『ダンジョン オブ ウインダリア』(コンパイルハート 2008年5月)
- その他
脚注
- ↑ 藤川桂介『アニメ・特撮ヒーロー誕生のとき』ネスコ、1998年、pp.213-214
- ↑ 2.0 2.1 2.2 藤川桂介「観る世界 Faile 9 『ウインダリア』と『ウイリンダリア』」 藤川桂介の世界内
- ↑ 小黒祐一郎「アニメ様365日 第295回『ウインダリア』」 2010年1月28日
- ↑ 小黒祐一郎「編集長のコラム 第2回 『黄金戦士ゴールドライタン』と『Gライタン』」 WEBアニメスタイル
- ↑ サウンドトラックCDの封入ブックレットにおける、門倉の解説文より。