イロクォイ級ミサイル駆逐艦
テンプレート:Infobox navyshipclass2 イロクォイ級ミサイル駆逐艦(イロクォイきゅうミサイルくちくかん、Iroquois-class destroyers)はカナダ海軍の駆逐艦。トライバル級(Tribal-class)とも通称される。[1]
当初計画ではターター艦対空ミサイルを搭載する防空艦8隻を整備するとされたが予算の都合により断念、代わって本級が整備されることとなり1972年から1973年にかけて4隻が就役した。建造当初はヘリコプター搭載の対潜艦だったが、1980年代後半より大規模な改修を受けて、防空艦となった。
概要
本級は、カナダ海軍として初めてヘリコプターを2機搭載しているほか、世界で初めてCOGOG方式の機関を搭載しており、卓越した対潜戦プラットフォームとして完成した。
当時、5,000トン級の艦艇でシーキング級の大型哨戒ヘリコプターを2機搭載した例はほかになく、カナダが開発したベア・トラップ着艦拘束装置導入に拠るものである。同装置は海上自衛隊にも導入され、はるな型ヘリコプター護衛艦を始めとするヘリコプター搭載艦に装備された。
また、カナダ海軍として初めてオート・メラーラ 127 mm 砲とシースパロー個艦防空ミサイルを装備し、より幅広い任務への対応が期待された。シースパロー艦対空ミサイル発射機は、アメリカ合衆国やNATO諸国などで運用されている8連装の箱型発射機Mk.25やテンプレート:仮リンクではなく、カナダ独自に開発された4連装発射機2基で、レール式の発射機は普段構造物に格納され、発射時に外部に露出されるようになっていた。
1980年代後半より、本級はTRUMP(Tribal Class Update and Modernization Project)改修により、防空艦として生まれ変わった。これは主機・武装・電子機器の換装・強化を含む、極めて大規模な改修であった。艦首に搭載されていたオート・メラーラ 127 mm 砲は撤去され、ここにスタンダードSM-2MR用として、29セルのMk 41 Mod T VLSが収容された。一方、艦橋前方に設置されていたシースパロー個艦防空ミサイルの発射機も撤去され、跡にはオート・メラーラ 76 mm 砲が設置された。また、レーダーもより新型で強力なものに変更されたが、防空艦が通常搭載する3次元レーダーについては、コストの問題から搭載されなかった。この際、ソナーも新型に換装され、リンボー対潜臼砲は艦前部の装備換装に伴うスペース捻出の為撤去されたが、航空設備と対潜魚雷発射管は維持され、本級の対潜戦闘能力は保持されたと言える。機関に関しても、巡航用ガスタービンが換装され、併せて新造時2本あった煙突も大型の1本煙突に換装された。
本級は、2010年代初頭には全艦が退役する計画となっている。2005年には、海軍の縮小によって運用人員を確保できなくなったことから、2番艦「ヒューロン」(HMCS Huron)が退役した。現在、本級と、あるいはハリファックス級フリゲートの一部艦を代替するため、カナダ単一艦級水上戦闘艦計画(Canadian Single Class Surface Combatant)の策定が進められている。
諸元表
ヘリコプター駆逐艦(新規建造時) | ミサイル駆逐艦(TRUMP改修後) | |
---|---|---|
排水量 | 満載: 4,700 t | 満載: 5,300 t |
全長 | 128.9m | |
全幅 | 15.2m | |
吃水 | 4.42m | |
機関 | COGOG方式、2軸推進 | |
P&WFT12-AH3 ガスタービン×2基 (7,400 shp; 巡航用) |
アリソン 570-KF ガスタービン×2基 (12,788 shp; 巡航用) | |
P&W FT4A ガスタービン×2基 (51,000 shp; 加速用) | ||
最大速力 | 29 kt | |
航続距離 | 4,500 nmi | |
乗員 | 285名 | |
武装 | 127mm単装速射砲×1基 | 76mm単装速射砲×1基 |
Mk.10 リンボー対潜臼砲 ×1基 | ファランクス 20mm CIWS×1基 | |
シースパロー短SAM4連装発射機×2基 | Mk.41 Mod.T VLS (29セル; SM-2MR SAM用)×1基 | |
Mk.32 3連装短魚雷発射管×2基 | ||
艦載機 | CH-124 シーキング 哨戒ヘリコプター×2機 | |
C4I | CCS-280 戦闘情報システム (SHINPADS + リンク 11 / 14) | |
レーダー | SPS-501 (LW-03) 2次元対空捜索 | SPQ-502 (LW-08) 2次元対空捜索 |
SPQ-2D 低空警戒/対水上捜索 | SPQ-501 (DA-08) 低空警戒/対水上捜索 | |
FCS | WM-22 射撃指揮レーダー×2基 | SPG-501 STIR 1.8 射撃指揮レーダー×2基 |
Mk.60 砲FCS×1基 | LIROD 砲FCS×1基 | |
ソナー | SQS-505 艦首装備+可変深度 | SQS-510 艦首装備+可変深度 |
電子戦 | AN/WLR-1 ESM | SLQ-501 ESM |
AN/ULQ-6 ECM | SLQ-503 ECM | |
コンバス チャフ・フレア発射機 | プレッシー SHIELD チャフ・フレア発射機 | |
- | Mk 53 Nulka 囮展開装置 |
同型艦
艦番号 | 艦名 | 起工 | 進水 | 就役 | 退役 |
---|---|---|---|---|---|
DDH-280 DDG-280 |
イロクォイ HMCS Iroquois |
1969年1月15日 | 1970年11月28日 | 1972年7月29日 | 2010年代初頭(予定) |
DDH-281 DDG-281 |
ヒューロン HMCS Huron |
1969年6月1日 | 1971年4月9日 | 1972年12月16日 | 2005年3月31日 |
DDH-282 DDG-282 |
アサバスカン HMCS Athabaskan |
1969年6月1日 | 1970年11月27日 | 1972年9月30日 | 2010年代初頭(予定) |
DDH-283 DDG-283 |
アルゴンキン HMCS Algonquin |
1969年9月1日 | 1971年4月23日 | 1973年11月3日 | 2010年代初頭(予定) |
脚注
- ↑ www.hazegray.orgでは、TRUMP改修以前をトライバル級、TRUMP改修以後をイロクォイ級として区別している。