アニサキス

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テンプレート:生物分類表 アニサキス(学名:Anisakis)は、線形動物門双腺綱桿線虫亜綱カイチュウ(回虫)目アニサキス科アニサキス属に属する動物の総称で、海産動物に寄生する寄生虫である。ヒトにアニサキス症を発症させる原因寄生虫だが、ヒトへ感染するときには主にサケサバアジイカタラなどの魚介類から感染する。

アニサキスは、通常アニサキス属の種を指す。アニサキス属以外に近縁のシュードテラノバ属なども、アニサキス症と同様の症状(シュードテラノバ症)を起こすが、これもまとめてアニサキス症と呼ぶ場合もある。アニサキス症を引き起こす種は主に Anisakis physeterisAnisakis simplex 及び Pseudoterranova decipiens の3種である。シュードテラノバ属は海洋性鰭脚類に寄生する Pseudoterranova decipiens の幼虫である。

生活環

ファイル:Anisakiasis 01.png
アニサキスの生活環(英文)

クジライルカなどの海産哺乳類が最終宿主で、アニサキスの成体はこれらの動物の腸管に寄生している。産卵された卵は糞便とともに海中に放出され、オキアミなどの甲殻類に捕食されその体内で感染性を持つ第3期幼虫まで発育する。甲殻類が捕食され、更に食物連鎖上位の中間宿主である魚類やイカの体内(筋肉や体腔内など)で更に成長する。中間宿主は、アニサキスの種類ごとに異なっている。寄生された魚類やイカがクジラやイルカに食べられると成虫になる。

アニサキスに寄生された魚類やイカをヒトが食べても、ヒトの体内では成体になることはできない[1]ので、産卵もされない。また、魚類などの中間宿主の体内では、アニサキスが内臓だけに寄生する訳ではないため、内臓を避けて食べても感染を完全には防げない。

終宿主

ファイル:Anisakis simplex in common minke whale.jpg
ミンククジラ腺胃に寄生するアニサキス(Anisakis simplex)。国立科学博物館の展示。

アニサキス症

ファイル:Anisakis.jpg
取り出したアニサキス

刺身による寄生虫被害の多くはこのアニサキスの第3期幼虫(体長は11mm~37mm位)の経口摂取が原因である。厚生労働省の資料[2]によると、日本におけるアニサキス症の発生数は、1年間に少なくとも2,000 - 3,000名以上と推定する報告「日本におけるAnisakidosisの発生状況の解析(石倉肇、臨床と研究、72巻5号、1995)」もある。

アニサキスは加熱だけでなく、冷凍することで死滅させることもできる。したがって「生きの良いネタ」ほど経口摂取の可能性が高くなる。厚生労働省では、寄生のおそれのあるものは-20℃以下で24時間以上冷凍することを指導している。また薬味としてショウガワサビニンニクなど含有成分による殺虫効果を期待し使用されているが、薬味程度の濃度では殺虫効果はない[3]

食品衛生法での取り扱い
1999年12月28日に食品衛生法施行規則の一部改正(厚生省令第105号)が行われ、食中毒事件票の一部が改正された。これに伴ってアニサキスも食中毒原因物質として具体的に例示された。従って、アニサキスによる食中毒が疑われる場合は、24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることが必要である[4]

症状

寄生部位(穿孔部位)により、胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症に分けられる。多くは消化管壁を貫通出来ないが、貫通した場合は穿孔性腹膜炎や寄生虫性肉芽腫を発症することもある。

  • 胃アニサキス症の症状は、食後数時間のうちに始まる激しい腹痛嘔吐である。嘔吐に際しての吐瀉物は胃液のみで、下痢も一切認められないことが一般的な食中毒と異なる特徴でもある。これはアニサキスの虫体が寄生のために胃壁や腸壁を食い破ろうとするために生ずる症状である。激痛のため診断の確定を待たず緊急開腹せざるを得ないこともある。
  • 腸アニサキス症例としては腸重積症[5]
  • 腸管外アニサキス症では、膵アニサキス症[6]。寄生虫性肉芽腫。

治療

胃内寄生の場合、感染の初期段階での一般的な治療は、開腹手術あるいは上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)を用いて、消化管粘膜上の虫体を確認し、生検にもちいるのと同じ鉗子を用いて虫体を摘んで取り除く方法がある。虫体を取り除くとすみやかに症状が消失することが多い。特異的な治療薬(特効薬)は存在していないとされている。ただ抗アレルギー剤であるデカドロン®や強力ネオミノファーゲンシーセレスタミン®やプレドニゾロンを投与すると軽快する症例があることが報告されている[7]

アレルギー

アルサス型のアレルギー反応であり、初回感染時は無症状で再感染により発症する。イカサバハマチ等を摂取した際、発疹及びじんま疹等のアレルギー症状を示すが、検査において魚介類では陽性反応を示さない場合、アニサキスによるアレルギーが原因の場合がある。

本アレルギーの原因物質は、冷凍または加熱をしても残存するので、魚介類加工品を摂取した時も症状が現れる場合がある。ただし、鮮度の低下した魚介類の摂食によるヒスタミン型の食中毒を誤認している場合もある。

脚注

  1. 下記外部リンク 寄生虫ミニ辞典 - アニサキス
  2. 食品媒介の寄生虫疾患対策について 蠕虫類 - 生鮮魚介類により感染するもの
  3. テンプレート:PDFlink東京都健康安全研究センター
  4. 国立感染症研究所寄生動物部
  5. 腸重積を伴った腸アニサキス症の1例日本消化器外科学会雑誌 第28巻 第10号 1995年10月
  6. テンプレート:PDFlink
  7. 日経メディカル2010年5月号「トレンドビュー」

関連項目

外部リンク

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