かながわサイエンスパーク

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テンプレート:Infobox かながわサイエンスパークは、神奈川県川崎市高津区坂戸にある、日本国内初の都市サイエンスパークである。英語表記の場合の各単語の頭文字から"KSP"という略称も用いられている。また、同所を運営する企業は株式会社ケイエスピーを商号としている。

事業概要

  • 総事業費は約650億円。
  • KSPは民間活力活用(民活)事業の一つとして始められ、神奈川県や川崎市などの公共セクターと、民間セクターの各事業者が共同出資して設立された第三セクター株式会社ケイエスピーにより運営され、同社によって管理される施設へ入居した各民間企業の開発部や研究部門による研究開発が推進されている。
    • 株式会社ケイエスピーの現在の社長はJFEスチール出身の大北智良[1]。また、元神奈川県総務部次長の山代節[2]と元川崎市交通局長の菅原久雄[3]が常勤の常務取締役となり、経営面でも公務員出身者と民間企業出身者のバランスが取られている。
  • また、ベンチャー支援であるインキュベート事業にも力を入れ、オフィスの提供や育成セミナーの実施なども行っている。
    • 創業希望者や創業直後の企業には、大部屋を区切って設けられた3年間限定のシェアードオフィス、その後の5年間でのスタートアップルームが提供され、低コストによる創業や研究開発の支援を行っている。また、創業準備のためのデスクを1年間無償提供する夢オフィス制度も用意されている。合計8年間の創業支援プログラムが終了したポストインキュベーション企業は、KSP内のR&Dビジネスパーク・ビルへの継続入所が可能である。
  • 入居企業の一つである財団法人神奈川科学技術アカデミー (KAST) と連携して、産業界にとどまらず、地方自治体などの公共セクターや、大学やその研究所などの学術界の研究者との協力関係による「産学公共同研究」を推進している。
  • 2004年には川崎市川崎区内に"KSP-Think"を開設し、KSPと同様のインキュベート事業に加え、経営指導や専門家による支援、投資事業組合からの投資支援などを行っている。
  • 2006年3月に会見したケイエスピーの社長(当時)によると、同年3月までに253社のベンチャー創業支援を行い、うち175社が既に退去済みで、廃業や事業縮小による支援の失敗例はそのうちの約3分の1となっている[4]
  • この他、年4回のニュース発行や月1-2回のメールマガジン発行(無料)、KSP内各施設の視察・見学(有料)も行っている。

施設

  • KSPの敷地面積は55,362m2、うち建築面積は15,987m2、建物延面積は146,336m2
  • KSPは以下の3棟の建物で成り立っている。また、建物の周囲は緑地帯となっている。
  • R&Dビジネスパーク・ビル - 敷地の南側にある12階建てビル。
    • 主に企業の開発研究施設として使用されている。中央には吹き抜けのアトリウムがあり、結婚式を含めた各種のイベントにも利用され、ここを中心にした十字型のビルになっている。
  • イノベーションセンター・ビル西棟 - 敷地の北西側にある10階建てのビル。
    • インキュベート事業の核であるシェアードオフィスは同棟の中にある。
    • 同棟の3階には460m2のKSPホール[5]やKSPギャラリー、7階には会議室[6]が設置されている。セミナー開催などKSP関連の各イベントで使用される他、一般向けの貸出も行われており、ギャラリーは神奈川県民による文化活動の展示場としても提供されている。
    • 同棟には付属施設も多く、ホテル(ホテルKSP、下記参照)の他、パソコンショップ、コンビニエンスストア郵便局クリニック、歯科医院などもテナントとして入居している。
    • かつてはJR東海の旅行センターも入居していたが[7]、現在は撤退している。
  • イノベーションセンター・ビル東棟 - 敷地の北東側にある6階建てのビル。
    • 重機器にも対応した研究所仕様のビルとなっている。
    • 一部のレストランは同棟の中にある。

ホテルKSP

  • イノベーションセンタービルの西棟ではホテルKSPが営業している。
    • 同ホテルは「宿泊型研修施設」をうたい、運営を受託した会議室や研修室を備えている。KSP入居企業に対してはシングルルームの特別割引予約も受け付けている。
    • 宴会場や婚礼式場などもあり、地域住民などKSP利用者以外に向けた営業活動も行われている。婚礼ではR&Dビジネスパーク・ビルの中心部にあるアトリウムも活用される。夏場には1階のレストランビアガーデンが営業される。
    • 同ホテルを運営する株式会社ホテルケイエスピーは株式会社ケイエスピーの関連会社となっている。

沿革

  • 1937年 - 池貝鉄工所が川崎市坂戸に溝の口工場を新設し、工作機械を生産。
  • 1954年 - 溝の口工場内で日本初の放電加工機が製造。
  • 1985年 - 池貝鉄工[8]茨城県玉造町(現在の行方市)にツクバ工場を新設し、溝の口工場の業務を移転。
  • 1985年7月 - 神奈川県を中心としたサイエンスパーク構想調査研究会が設置。池貝鉄工の溝の口工場跡地の利用を検討。
  • 1986年5月 - 第2次中曽根内閣により「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」(民活法)成立。
  • 1986年12月19日 - 同法の適用第1号案件として株式会社ケイエスピーが設立。
  • 1987年10月 - インキュベート事業開始。
  • 1989年7月26日 - 建物が竣工し、かながわサイエンスパークが開場。
  • 1997年1月 - KSP1号投資事業組合設立。
  • 1990年10月 - 第1回KSP国際フォーラム開催。
  • 1992年5月 - 第1回KSP新事業マネジメントスクール開催。
  • 2003年9月 - KSPのインキュベート事業を経験した企業の中から株式公開の第1号として、株式会社テクノメディカジャスダックに上場[9]
  • 2003年12月 - KSP夢オフィス開設。
  • 2004年3月 - KSP2号投資事業有限責任組合設立。
  • 2004年10月 - KSP-Thinkを開設。
  • 2005年11月10日 - アジアサイエンスパーク協会(ASPA)第9回大会開催(11日まで)[10]
  • 2006年3月 - KSPのインキュベート事業で入居中の株式会社メディアグローバルリンクスがジャスダックに上場。インキュベート事業社としては4社目、入居中の企業としては初の上場[4]
  • 2006年6月 - 日本マクダーミッド横浜市青葉区桜台から移転[11]
  • 2006年7月 - KSP3号投資事業有限責任組合設立。
  • 2006年12月19日 - 株式会社ケイエスピー設立20周年記念事業として、敷地内に置かれた記念碑「放電加工機誕生の地」の除幕式を実施。
  • 2007年4月 - かわさき新産業創造センター(KBIC)[12]へのインキュベート事業受託を開始。
  • 2010年5月 - 民活法が廃止。
  • 2011年7月19日 - 飛島建設千代田区三番町から移転[13]

交通機関

ファイル:Tokyutransses TA631-KSP.jpg
KSPと溝の口駅を結ぶ無料シャトルバス
  • 鉄道
    • JR南武線武蔵溝ノ口駅もしくは東急田園都市線溝の口駅から
      • 徒歩15分。
      • 北口バスターミナルから東急バスによる無料循環バス5分。ただし、無料循環バスは平日の始発から10時まではKSP会員専用となり、一般の利用客は利用できない。KSP内ではR&Dビジネスパークビルとイノベーションセンタービル西棟の前に停車する。
      • 同ターミナルから川崎市営バスの第三京浜入口行き・井田営業所行き・新城駅経由小杉駅行き、または東急バス溝22・蟹ヶ谷行きで、高津中学校入口下車徒歩3分。
    • 新横浜駅から溝の口駅行きバスで約20-30分の「高津中学校入口(KSP前)」バス停から徒歩3分。同バス停には「KSP前」の副名称が付けられている。
  • 道路

関連項目

脚注

  1. 大北はJFEスチールのスチール研究所研究技監を務めていた。出典:スターティア「企業経営者インタビューメルマガ」ゴーズパーティvol.94 [1]
  2. 県退職者等に係る再就職状況の公表、再就職状況の公表について(平成19年6月29日)。神奈川県庁ホームページより [2]
  3. 平成20年度退職者再就職先一覧(2009年8月7日付)。川崎市ホームページより [3]
  4. 4.0 4.1 川崎市長記者会見2006年3月14日、川崎市ホームページより [4]
  5. 着席時は280人、立席時は500人収容可能。
  6. 全11室で、現在はホテルケイエスピーに業務が委託されている。
  7. JR東海の在来線路線網がない地域では唯一の例だった(JR東海が運営する東海道新幹線の新横浜駅からは近隣までバスが運行されている(「交通機関」参照))。
  8. 1949年に会社名を変更。現在の社名は「池貝」。
  9. 現在の同社本社所在地は横浜市都筑区で、現在東京証券取引所1部に上場している。
  10. KSPでは1997年の第1回大会以来の開催。
  11. 出典:日本マクダーミッド公式サイト "沿革".
  12. 川崎市が同市幸区新川崎駅周辺地域に施設を整備し、川崎市産業振興財団が運営するインキュベーション施設。隣接するK2タウンキャンパスに進出した慶應義塾大学との連携が図られている。
  13. 飛島建設はKSPの設計・建設を行った建設業者でもあった。出典:飛島建設公式サイト 「本社、首都圏土木・建築支店および国際支店事務所の移転について(2011年7月11日)」「会社沿革 飛島建設129年の歩み」

外部リンク