CYBORGじいちゃんG
テンプレート:Sidebar with collapsible lists 『CYBORGじいちゃんG』(サイボーグじいちゃんジー)は、土方茂(現・小畑健)による日本の漫画。1987年と1988年の読みきり掲載を経て、1989年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された。全31話。単行本は全4巻、復刻版全2巻、文庫版全2巻。
目次
作品概要
農作業用サイボーグに生まれ変わった主人公・壊造時次郎=サイボーグじいちゃんGが、迫りくるライバル科学者社礼頭毒郎およびその手下と戦うギャグ漫画。ナンセンスと「田舎のじーちゃん」と「サイボーグ」を組み合わせるなどのギャップを武器としたギャグ展開をパターンとする。
ギャグ一辺倒で続いていたが、サイボーグ同士のバトルやところどころにシリアスストーリーが挿入されていった。特に、最終回近辺はGちゃんと社礼頭の戦時中の国家によるサイボーグ開発計画に端を発する因縁やそれに伴うばーちゃんを交えた過去の三角関係など、それまでのギャグ路線からは一変して、シリアスとバトルが所々にギャグを交えながらも展開されていった。
作者はジャンプリミックスでの刊行時のコメントでは「いまみるとサイボーグじいちゃんはまんまデザイン亀仙人でしたね(笑)」と語っていた。また、連載終了から数年後に秋本治は「もっと続いてほしかった」とコメントしており、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』でも両津勘吉が同様の台詞を口にしている。
先行して雑誌『アニメック』1984年8月増刊号『まんがアニメック 3 』にアニメーターの田中達之が「サイボーグおじいちゃん」という短編を「昭島英之」名義で発表しており、田中はこれを元ネタと考えている(ツイッターでの発言)。小畑がこれを読んでいたかどうかは不明。
主な登場人物
壊造一家
- 壊造時次郎(かいぞう ときじろう) / サイボーグじいちゃんG
- 本作品の主人公。農夫にして天才科学者だった。物語開始から農作業用サイボーグになった。趣味は盆栽いじりと改造手術。総入れ歯である。愛用のタバコの銘柄はエコー。エコーには強いこだわりを持ち、マイルドセブンを吸っていた不良学生を『そんなものがタバコといえるかバカ者!エコーを吸え!エコーを!!』と叱責した。
- 敬などには自分を「Gちゃん」と呼ばせる。「じいちゃん」は当人のこだわりにより駄目。表札も「壊造時G郎」に書き換える。
- ボディにはガトリング砲やレーザー砲など、さまざまなカラス撃退用の装備が内蔵されている。因みに脳は臀部に格納されている。
- 主として畑作、畜産、食肉加工も含む農業に相当な拘りがあり、たとえ住宅地の道路であっても畑に変える。非常に人情に弱く、困った人を見過ごせない性格。ただし警官を成敗して悪人を助けたり、ちょっとした怪我でもサイボーグ化するなど、かなり行き過ぎている。
- 大学時代は天才と呼ばれ、卒業後陸軍技術研究所に所属。地方の出身で、社礼頭曰く田舎者。しかし社礼頭毒郎にも匹敵する才能を持ち、その部下として引き立てられ昇進した。改造人間の用途について、社礼頭の「飛行に特化する、双頭である、砲を持つなどといった兵器としての軍事用途」と、時次郎の「農作業や身体の不自由の補助など人を救う用途に使うべき」という意見が衝突。喜由を巡る確執もあり、社礼頭の手引きで構想では全身が装甲され、片手がドリル、片手がクリップアームとなった軍事用改造人間に改造されかけたことから離反する。この際左腕をサイバーアームにされ、事実上隻腕となる。
- 少年期の容貌は丸刈りのごく普通の子供であるが、青年期は非常に美男子であり、孫娘ですらしびれる程。
- 読み切り版では社礼頭の共同研究者であり、欺かれていたことを知って研究所に放火、この時盗み出した資料を元にサイボーグ化を果たしたという設定だった。
- 壊造喜由(かいぞう きゆ) / サイバーメタル・アイアンばあちゃんQ※最終回では「サイボーグばあちゃんQ」と表記。読み切り版では「鉄人バアちゃんβ」
- 時次郎の妻。10年前に一度亡くなっている。家族の誰もが恐れる恐ろしいババアだった。十回忌を期にGちゃんが20歳前後の姿で復活させようとしていたが、ガンテツが手術装置の一部を破壊してしまった為、サイバーメタルとして蘇った。またその際に復活装置がサイバーメタルとヘビーメタルを勘違いしたため、体の各所にトゲ付きリングが付いており、事有るごとに大音量で般若心経をメタル調で歌う。口調は「〜なのら」。後にガンテツの改造手術により、不完全ではあるが若いころの時次郎に負けず劣らずの美女であるヤング・バージョンに変身することができるようになった。なお、結婚後の老化の経過がコミックスの巻末で時次郎、ガンテツとともに描かれている。旧姓は伊集院。完全なヤング・バージョン時は見た目に合った性格・口調になる。若いころには足の病で歩行が不自由だった。
- 夫である時次郎を真摯に愛しており、最後の決戦の際にエネルギー切れを起こしたGちゃんに「あなたが老いたのなら私も老いたままでいい」と告げて自分のエネルギーを分け与えた。また若き日のエピソードでも社礼頭からの求婚を拒み、時次郎と共に農業をしていく事を固く決意している。
- 読み切り版では社礼頭の手によって蘇生改造された。
- 平成ガンテツ号(へいせいガンテツごう)
- Gちゃんが作った、スーパー農作業用サイバードッグ。Gちゃんの武器に変身するだけでなく、ジェットスキー、サブマリン、ガンテツカーやはたまたテーブル胡椒等、どんなメカにも変形できるが、老い先が短いのと視力の老化が弱点である。「シッシッシッ」と鳴き、回想する時は「もわんもわん」という擬音が鳴る。連載後期では完全な二足歩行となる。サイバードッグにはガンテツの嫁として製作された四体が他に存在する。
- 壊造英一(かいぞう えいいち)
- 壊造家の父。時次郎の長男。元々は農業を営んでいたが、上京してサラリーマンになった。美女に弱い性格。最終回で指先からタバコ点火用火炎放射をする機構を備えた「サイボーグ父ちゃんH」に改造される。
- 壊造優(かいぞう ゆう)
- 壊造家の母。主婦。美人だが涙もろい性格。最終回で胸部に調理器具つきのアームを仕込まれた「サイボーグ母ちゃんU」に改造される。読切では名前は「壊造喜由」となっており、ラストで「サイボーグ母ちゃんU」に改造された。
- 壊造哀(かいぞう あい)
- 壊造家の長女。心優しい娘だったがGちゃんのせい(但し半分は社礼頭の孫・否作のせい)でグレてしまい、非常に口が悪い。最終回で尻に痴漢撃退用のトラバサミを内蔵した「サイボーグ姉ちゃんI」に改造される。読切でははじめからグレている。
- 壊造敬(かいぞう けい)
- 壊造家の長男。普通の元気な小学生だったがGちゃんが授業参観にかこつけて余計な介入をしたせいでグレる。最終回でジェット機の飛行する高度にまで上昇できる飛行能力を持った「サイボーグクソガキャK」に改造される。グレる以前からGちゃん及びサイボーグ化には憧れており、改造された事に対しては家族で一番順応が早かった。
- 世界堂絶人(せかいどう ぜっと) / サイボーグハンターZ
- 小学校時代に流行のアニメ番組を見られなかったルサンチマンからサイボーグを憎むようになり、小学校卒業後4年間修行してきたサイボーグハンター。とはいっても、サイボーグをハントした事は一度もない。実績のなさから対Gちゃんの刺客を募った社礼頭には切り捨てられるが、台所用品を改造した武装を駆使した武器の威力や、これらを駆使した戦闘力はそれなりであり、オナベ・ソーサーによって一般人一人に片腕切断の重傷を負わせており、機関砲の弾丸をフライパンで叩き落とすなど驚異的なスピードを持つ。弱点は女性に対する免疫が全く無い事で、女に触れるだけでなく近距離にいるだけで鼻血が出てしまうほど。Gちゃんの弟子になり、壊造家に居候する。この時中学校に通い始める。
- 最終回で念願かなってサイボーグになるが、大きい事と以前の格好そのままに改造されていてカッコ悪いからという理由でサイボーグごっこでは常に悪者の役をやらされることとなる。
社礼頭一家
- 社礼頭毒郎(しゃれこうべ どくろう)
- 軍事兵器用サイボーグを開発しようとしている科学者。かなりボケが進行しており毎回Gちゃんに返り討ちにあうマヌケな敵役である。若い頃は陸軍技術研究所の技師で喜由の許嫁であり、時次郎の上官だった。終盤のシリアス展開では、Gちゃんが誤って捨てた若返り薬「強力若人G」を拾って飲んだことで若返り、過去の能力を取り戻して覚醒する。なお、そのときの彼の姿は黒マントと白抜きのドクロが描かれた黒い服を着用していた。
- 過去の能力を取り戻した際には、鼻息や瞬きの風圧で高層ビルを倒壊させ、地団太を踏んだだけで新宿区全体を揺らすなどの凄まじいパワーを手に入れた。更に奥の手として、全身の排気口から暴風を放ち人工的に竜巻を作り出すなどの技も使用可能。
- 過去、悪の天才でもあり、時次郎に負けず劣らずの美男子でもあった。しかし、喜由を時次郎に奪われた際に顎に時次郎のロケットパンチをヒットされたことを契機として、知能が低下してろくな改造人間が作れなくなり(失敗作の被験者一名が説明シーンにて確認される)、ヤケ食いで太り、勉学に励み過ぎて近眼になり、みるみる髪は抜け落ちる、殴られたあとのコブが変形して頭がとんがるといったさまざまな不幸に見舞われた結果、現在の姿となった。回想シーン、ギャグシーンでは開発しているサイボーグのレベルに格段の差がある、Gちゃんの解剖図が幼稚園児の描いた絵風の想像図であるなど時次郎との落差が描かれることが多く、見得を切る際にはズボンのチャックが開いているなどバカであることが強調されているが、現在でも女子大の教授を務められるだけの知能は有しており、自律型ロボット兵器も開発するなど科学者としての能力を完全に失ったわけではない。
- 最終的にGちゃんに倒され、元のバカなジジイに戻った挙句サイバーボディを失い、ゼンマイ動力とゴム動力で動く(このほか食事も摂る)劣悪な性能の「はたらくサイボーグ社礼頭」に成り果て東京の復興に従事することとなる。それなりの財産を有していた描写があるが、破産したのかどうかは不明。口癖は「だべ」(老若共通)。オレンジジュースが好物である模様。
- 社礼頭否作(しゃれこうべ いなさく)
- 毒郎の孫。中学生でありながら、ミニ四駆に夢中になっており、それでいて生徒会長も務めている。選挙に勝利したのは毒郎と共同開発した洗脳メガホンの力によってであり、洗脳から覚めた女生徒たちには露骨に嫌われている。哀のことが好きだが、初めて会った時以来嫌われている。祖父と違ってシリアス展開でもマヌケなままであり、祖父の急変についていけずおろおろしていた。因みに祖父同様、頭がとんがっている。祖父が破滅した後も一緒に暮らし、東京の復興に従事する祖父に弁当を作っている。
改造手術被害者
- 長谷川さんちのタコばあさん
- タコに似た顔の老婆。Gちゃんによって踏みつけられて気絶、改造されてタコの体に人間の頭が付いたような姿にされてしまう。
- 風速ババア
- Gちゃんの改造手術によって風速で走ることが可能になった。
- たかしくん
- 敬の同級生。Gちゃんによって脳を電子頭脳と入れ替えられてしまう。
このほか複数回、Gちゃんが一日に改造手術した人数を自慢するシーンが描かれており、合計すると20人以上が改造されている。
サイボーグ、ロボット
Gちゃんの発明品
- アーマード・トラクター
- Gちゃんが人間時代に村長さんの依頼で製作した武装した農作業用トラクター。パワードスーツに変形し、操縦者の身を守る。
- カカシのカッちゃん
- 人工知能と行動能力、言語能力を与えられたカカシ。人間の少女に恋をしてしまう。
社礼頭が開発したもの
- 殺人兵器安全第一号
- 読切版に登場。社礼頭曰く「工事現場からはいしゃくして改造した」殺人兵器。パワーではGちゃんをも上回る。
- 不良ロボット グレテンダー
- 社礼頭が役に立たない機械から作り出した不良ロボット。連載の翌年には帝拳高校への入学が予定されていた。ガンとばし光線、うんこすわりプレッシャーなどの必殺技を持ち、パワーも強力だが、うんこすわりプレッシャー使用時には本当にウンコまでしてしまう欠点があり、自慢のリーゼントスタイルが乱れるとヘアスタイルを直すため戦闘に集中できなくなるのが弱点。
- 町長さん
- かつて懐造一家が住んでいた村の村長だった。Gちゃんに発注したアーマード・トラクターによって村を完全支配しようとした事件によって村長の地位を追われ、Gちゃんに復讐するために社礼頭の改造手術を受けてサイボーグとなる。ただし、社礼頭には捨て駒と見なされており、麻酔なしで改造された上、その性能はGちゃんを苦戦させる程度に抑えられていた。Gちゃんに倒され廃品回収のトラックの荷台に落下し、以後消息不明。
その他
- 光源次郎(ひかる げんじろう)
- 6歳の頃、「チビッコ歌まねのど自慢」でデビュー。大変に女癖が悪く、ヤングバージョンになった喜由をナンパするが、最終的にGちゃんに成敗される。
- 相川舞子(あいかわ まいこ)
- 人気アイドル歌手。Gちゃんによれば、若い頃の喜由に似ているとのこと。
- もうろく怪獣ジジラ
- 66年に一度現れる巨大怪獣。名前はゴジラのもじりで、身長57m・体重550tと『超電磁ロボ コン・バトラーV』のパロディ。腹部の吸い取り袋により、吸い込んだ人間の若さを吸収して老人にし、ジジラ自身が若返って「凶悪怪獣ジジラ」となる。自分の身長の6倍近い高さ(333メートル)の東京タワーを引っこ抜いて杖にして平然と歩く不条理な行動をし、前回出現時の1923年には関東大震災をおこした張本人という設定。
- にわのまこと
- 漫画家、ゲスト出演。
- 茨木政彦
- 集英社の正社員で、後の『週刊少年ジャンプ』8代目編集長。ゲスト出演。
サイボーグじいちゃんGの秘密
性能
- ボディ
- 機械の体だが、脳と血は生身の人間の頃から残っている。体の中にある血を熱く滾らせると、ストロンガーGに形体変身し、形状記憶合金のボディになる。また、ストロンガーGには応用編が存在する。ちなみに、冷水を浴びるとパワーダウンしてしまう。
- 動力源
- メタン・エネルギーを動力源とする。メタン源には鶏糞等が使用されエコロジー。
- 読み切り時は原子炉。放射能漏れを度々引き起こす。
- 腕
- 厚さ40センチの鉄板も突き破ることができる。なお、40.1センチでは不可能らしい。
- 脚
- マッハ2で走る。走っただけで強烈なソニックブームが発生し、アスファルトはめくり上がり、電柱は傾き、ガラス窓は粉砕される。
コミックス第4巻表紙にもボディスペックと思しき内容が書かれているが、劇中に登場する設定とは一致していない。
特殊能力
ヤング・バージョンにより若い頃の姿に変身できるが、多量のエネルギーを消耗するため、30秒間しかもたない。また、最終回で描かれた、力みすぎて若返りすぎたクソガキャ・バージョンも存在する。
必殺技
- Gメガトン
- メタン・エネルギーを爆発させる。最も多く使う必殺技。
- 火の玉じいちゃんGエンブレム烈風アタック
- 頭部、胴体、右腕、左腕、右肩、左肩、右太もも、左太もも、右すね足、左すね足、10のパーツに分離し、敵にめがけてGの字を作りながら突撃し、貫通する。
- 猛烈もうろくキック
- 通常のキック力に加え、もうろくした手足の震えをプラスし、キックの破壊力を数十倍ものパワーに増幅して、相手に大きなダメージを与える。
- 入れ歯カミカミ
- 爆弾入りの入れ歯。噛み付いて離れない。
- ガンとばし鉄砲
- 目玉をマシンガンのように連射して飛ばす。
- 田植え式早苗爆弾
- 田植えの苗にそっくりな爆弾を、相手の頭に植え付ける。
- エコーメガトン
- 巨大なタバコ(エコー)の先端にメタン・エネルギーを集中させ、熱を10万度まで上げる。
- Gギガトン
- 最終回でのみ使われた、Gメガトンの1000倍の威力を誇る必殺技。
単行本
単行本(全4巻)は長らく絶版だったが、2001年に小畑健による新規描き下ろし表紙の21世紀版(復刻版全2巻)が、集英社のジャンプ・コミックスとして刊行された。なお、初版の単行本に収録されていた読切は、21世紀版では未収録となっている。さらに10年半後、集英社文庫コミック版としても刊行された(全2巻)。
- CYBORGじいちゃんG 1号 - 2001年1月6日初版発行 ISBN 4-08-873068-2
- CYBORGじいちゃんG 2号 - 2001年2月2日初版発行 ISBN 4-08-873081-X
関連項目
- 『サガ フロンティア』 - 登場するメカの名前に必ず「G」が付くのは河津秋敏によるリスペクト。
- 『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』 - 和月伸宏の漫画作品。登場人物の一人、柏崎念至のデザインは懐造時次郎が原型。和月は「師匠(小畑)には一発でばれた」とコメントしている。