第7族元素
第7族元素(だいななぞくげんそ)は、周期表において第7族に属するマンガン・テクネチウム・レニウム・ボーリウムのこと。マンガン族元素と呼ばれることもある
最外殻のs軌道と、一つ内側のd軌道を占有する電子の和が7個になる。従って、最大の原子価は、7価である。通常は、2価、3価の場合が多い。
閉殻していないd軌道を持ち、遷移元素として取り扱われる。
性質
第7族元素では、価電子および内殻電子の電子構造はd5s2構造をとる。
マンガン 25Mn |
テクネチウム 43Tc |
レニウム 75Re | |
---|---|---|---|
電子配置 | [Ar]3d54s1 | [Kr]4d55s1 | [Xe]4f145d46s2 |
第1イオン化エネルギー (kJ mol-1) |
719.1 | 702 | 749 |
第2イオン化エネルギー (kJ mol-1) |
1,509.1 | 1,472 | |
第3イオン化エネルギー (kJ mol-1) |
3,248.4 | 2,850 | |
第4イオン化エネルギー (kJ mol-1) |
4,940 | ||
第5イオン化エネルギー (kJ mol-1) |
6,990 | ||
第6イオン化エネルギー (kJ mol-1 |
9,200 | ||
第7イオン化エネルギー (kJ mol-1) |
11,508 | ||
電子親和力 (電子ボルト) |
0.666 | 0.746 | 0.815 |
電気陰性度 (Allred-Rochow) |
1.60 | 1.46 | |
イオン半径 (pm; M4+) |
67(6配位) | 79(6配位) | |
イオン半径 (pm; M7+) |
39(4配位) | 52 (4配位) 67 (6配位) | |
金属結合半径 (pm) |
112 | 135 | 137 |
融点 (K) |
1,517 | 2,430 | 3,459 |
沸点 (K) |
2,235 | 4,538 | 5,869 |
酸化還元電位 E0 (V) | 1.23(MO2/Mn2+) | 0.272 (MO2/M) |
0.22 (MO2/M) |
第7族元素のマンガンは、その存在量も多い(地殻の0.085%)元素で、5種類存在する酸化物のうち、4種が天然に産出する。レニウムは、モリブデンの鉱石である輝水鉛鉱 MoS2 中に極く少量含まれ、モリブデン精製の煤煙や特定の銅鉱石の副産物中から得られる。テクネチウムは、全ての同位体が放射性であり、天然にはウランが自発核分裂して生じる 99Tc(半減期2.14×105年)が痕跡量が存在するだけである。そしてテクネチウムは、最初の人工元素として、モリブデンに重陽子を照射して製造された。
第7族元素は、錯体化合物を含めると、s電子およびd電子を全て与えた+7から-1価の状態まで取りうる。しかし、テクネチウムとレニウムは性質が似ているものの、マンガンはその性質はいささか異なる。テクネチウムとレニウムの単塩は、好んで酸化数 +4, +5, +7の状態を取るのに対して、マンガンの単塩は +2, +4,+6,+7の状態を取る。そして、Mn(+2)の自由エネルギーは著しく低く、マンガンはMn(+2)の状態が最も安定である。言い換えると、マンガンの多の酸化状態は不安定であることを示唆する。実際に、高次酸化状態のマンガンの化合物は酸化剤として有用であり、単体マンガンは還元剤として有用である。
マンガンは反応性の高い元素で、ハロゲン、酸素、硫黄、炭素、窒素、および多くの非金属と化合物を形成する。また、鉄の合金である鋼鉄には、何れもマンガンが含まれ、製鉄業においては、重要な添加元素である。テクネチウムとレニウムとは性質が似ており、酸化物、硫化物、ハロゲン化物を与える。テクネチウムの半減期の短い同位体は、医療用放射線減(主にトレーサー)として利用される。希少で高価なレニウムは、工業的に大量に利用されることはないが、実験室での脱水素触媒や、フィラメントの添加物や熱電対として利用される。そして、99Tcは原子炉でのウランの核分裂生成物の6%を占める。すなわち、100MW級の原子炉では、毎日約2.5gのテクネチウムが生成している。したがって、今日では天然に存在する安定核種のレニウムよりも、放射性核種のテクネチウムの方が入手しやすい。
参考文献
関連項目