歯磨き

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歯磨き(はみがき)とは、歯ブラシ等を用いて歯茎についた歯垢などの汚れを落としたり、歯茎(歯肉)にマッサージを行ったりすること。ブラッシング。

概要

歯を磨く(擦って汚れを取る)から「歯磨き」と呼ばれている。英名のブラッシングもブラシで磨くことを意味する。

主に歯磨きの清掃効果を高めるなどの目的で、歯ブラシのブラシ繊維(いわゆる“毛”)の先端につけるペーストのことは歯磨剤と言う。一般にはそれは「歯磨き粉」や「ハミガキ」「練り歯磨き」などと呼ばれている。歯磨剤がペースト状であるにもかかわらず「歯磨き粉」と呼ばれる理由は、かつて粉状の歯磨剤が販売されていた時代の名残である。近年ではペーストの替わりに液体状の「液体ハミガキ」(洗口剤)を用いて歯磨きを行う人々も一定の割合いる。

歯磨きに歯磨き粉を使わないことを推奨・指導する歯科医師もいる。清掃効果が充分でない場合においても歯磨き粉の使用によって清涼感が感じられることから、丁寧な歯磨きを行う上で妨げになることがあるからである。

歯ブラシによる歯磨きだけでは、歯間や奥歯の磨き残しが多く歯垢が残りがちなので、それに対応するデンタルフロス糸ようじ) が利用されることもある。ワンタフト(毛束が1つの歯ブラシ)などの製品も市販されており、併用する人が増えている。

ブラッシングの種類

歯ブラシの動かし方により、次のような磨き方の種類がある。

バス法[1] 
歯茎の境界部分に斜め(約45度の角度)に歯ブラシを当てて、左右に振動させる磨き方。歯茎(歯肉)のマッサージ効果が高い。鉛筆を握るように歯ブラシを持ち力をいれずに軽く左右させることが望ましい。歯ブラシを握り締めて強く左右させると逆に歯肉を削ってしまう。
スクラッビング法 
歯ブラシを軽く歯に当てて、細かく振動させることによって、歯の隙間の汚れを落とす磨き方。歯ブラシが硬いと歯茎の痩せる原因になる。歯の隙間に歯ブラシの繊維が届かない場合は、歯間ブラシやデンタルフロスと併用するとよい。バス法との違いは歯に当てる歯ブラシの角度。45°のバス法に対し、90°(直角)に当てる[2]
ローリング法[3] 
歯ブラシを歯茎から歯に向かって回転させるように動かす磨き方。従来はTVのコマーシャルでもよく目にしたが、虫歯予防には適さないことが明らかになったため、最近はあまり推奨されていない。
つまようじ法 
 歯ブラシの毛先で歯茎をつついて、刺激を与える方法。歯周病の予防、治療に最適である。特に歯と歯の間に毛先を挿入して、歯間部の歯茎にも効果的である[4]

最近では電動式の歯ブラシも市販されており、中にはバス法とローリング法をスイッチで随時選択することができるものもある。また、超音波で歯を磨く機能もついている製品もある。

歯磨きのタイミング

歯磨きは朝晩の2回が一般的な習慣となっている。

  • 寝る前の歯磨き(プラークコントロール)

唾液には細菌の増殖を抑える作用があるが、睡眠中は唾液の出る量が激減する。そのため細菌が増殖し、虫歯や歯周病の原因となる。これを防ぐために歯磨きを行う。

  • 朝の歯磨き(エチケット磨き)

寝ている間に増えた細菌の数を減らすために歯磨きを行う。

子どもの歯磨き

多くの子どもは歯磨きが苦手で、保護者が補助して磨くようにする。離乳食が始まると乳歯が出現するので保護者が専用のブラシを用いて口中を清潔にする。幼児期になれば自分で歯ブラシを使わせて歯磨きの習慣に親しませ、仕上げを保護者が行う。

幼児期の虫歯が抱える問題は、歯が痛むことによって食事などで咀嚼することを幼児が嫌がるようになり、顎(あご)の成育に悪影響を生じる点にある。成育を阻害された顎に大人サイズの永久歯が成長すると、「出っ歯」、「乱杭歯(八重歯)」などを生じさせ、歯並びや顔立のバランスを崩す原因となる。

初等教育では口腔模型などを用いたブラッシングの指導が行われることもある。

歴史

人類の歯磨きの歴史は古く、古代エジプトにその記録が残っている。日本では平安時代の宮中医官である丹波康頼撰による日本現存最古の医学書「医心方」に、「朝夕歯を磨けば虫歯にならない」という記述があり、記録としてはこれが日本最古の歯磨きの記録となる[5]

脚注

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参考文献

関連項目

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  1. Bass, C. C.、1954年3月「An effective method of personal oral hygiene, Part II」『The Journal of the Louisiana State Medical Society』106巻3号100~112ページ、テンプレート:PMIDHarris、García-Godoy(1999年89ページ~)参照。
  2. 長崎県福祉保健部、長崎大学歯学部、長崎県歯科医師会(2001年13・15ページ)参照。
  3. Harris、García-Godoy(1999年91・92ページ)参照。
  4. 長崎県福祉保健部、長崎大学歯学部、長崎県歯科医師会(2001年17ページ目)参照。
  5. 竹原直道、松下玲子、藤田尚、松下孝幸、下山晃、2001年『むし歯の歴史 または歯に残されたヒトの歴史』砂書房、170~171ページ参照。