小便器
小便器(しょうべんき)は、男性の排尿に特化した便器であり、使用後は自動または手動のフラッシュバルブで洗浄して排水する。
日本にある近代的な陶器製の小便器は、主に男性用で、座らずに用を足す形になっている製品がほとんどである。
小便器が設置されている部分は仕切りで区切っていない場合が多く、同じ広さの空間でも設置台数を多くすることができる。
近年では排泄後に自動的に洗浄水が流れる赤外線センサー付きの便器が増えている他、マイクロ波により感知する製品も登場しており、この場合センサーの小窓が付いていないすっきりとした小便器となっている。
女性用トイレでも母親と共に訪れた幼い男児向けに小便器が設置されているトイレもある。
和式便器が主流だった頃は、男性の小用に和式便器が使いにくいので、一般家庭でも小便器を設置する事が多かったが、洋式便器の普及に伴い、公衆トイレや公共のトイレ以外で見かける事が少なくなってきた。
種類
- 床置型(ストール)型小便器- 縦長の床置型小便器で大型、中型、小型に分類される、公衆便所に並んで設置される場合、ささやかな仕切り板が付けられることがある。 以前の水洗便所用の製品ではトラップがなく、別に地中に埋め込まれた鉛管のトラップと組み合わせて設置される方式であったが、現在の製品は大方が施工が容易な便器作り付けのトラップであり、尿石付着時の清掃を容易にするためにトラップが脱着式になった製品がほとんどである。 また、トラップがない製品は汲み取り便所で使用される場合もある。
- 壁掛け型小便器 - 戦前からあり、俗に朝顔と呼ばれる楕円形の普及品であったが、最近は、大型、中型の様々な形状の製品が存在する。成人男性の股間の高さに設置されていることが多く、このタイプは子供には使いにくい。このため、低めの高さに設置されたり、踏み台を設けたり、床置型(ストール)型小便器と併設されたりすることもある。
- 低リップ型小便器-壁掛け型と床置(ストール)型の折衷型の小便器で壁掛け型ながら床置(ストール)型同様の縦長の小便器で子どもから大人まで楽に使える形状で床清掃も容易で最近新設される小便器の主力になっている小便器。、
- 筒型小便器 - 和風の飲食店のトイレで使われることが多く、はね返りと臭気防止のため氷を投入してある(尿素のアンモニアへの酸化分解による臭気発生を低温にすることで防ぐ)場合もある。
- 省スペース型小便器 - 一般住宅でも取り付けが可能な細身のデザインとなっている。TOTOでは「スリムU」の愛称がある。(ただし、2005年6月に生産終了した。現在では発売されていない)
- 女性用小便器(サニスタンド)- アメリカで1930年代に当時は高級品のナイロンストッキングが普及した際、腰掛式では座った際に伝線などの恐れがあったが、中腰ならそれが防げるとして発売された女性の立ち小便用の便器。日本では1951年に東洋陶器(現:TOTO)が製造・販売を開始したが、まだ和服が多く、女性が座らず小用をするとは奇妙な製品だと一般に受け取られ、その結果普及せず、1971年に製造中止となった。なお、1964年東京オリンピックの際には、女子選手用として国立霞ヶ丘陸上競技場内に設置された[1]。
- 幼児用小便器 - ストール型小便器を幼児(男児)が使いやすいようにサイズを小さくしたもの(通常のストール型を幼児用として設置する場合もある)。幼稚園・保育所及び公共施設(近年(百貨店ではかなり前から)、母親と共に訪れた幼い男児向けに、このタイプの小便器が女子トイレや多目的トイレに設置されていることが多い)で用いられる。INAX製のものはミニチュア版ストール型小便器といった形だが、TOTO製のものは丸型の独特の形をしている。
- 筒型小便器 - 竹筒のような形状の便器で和風の飲食店のトイレで使われることが多い。
- 壁式小便器 - 公園などの公衆便所や鉄道駅の構内など小便器の場合、古い施設では混雑時に複数人同時に並んで用が足せるように、、個別に便器が無く、タイルやコンクリートの壁、あるいはFRP製の壁のような便器があり、その場合人の立つ場所が一段高くなって、向かい側の溝に流す形で、水洗式の場合でも、その壁に水を流す管が付いているだけのトイレが多用されていた。しかしこのタイプは水洗式であっても、小便の跳ね返りや尿石からの悪臭、蛆などの衛生害虫が発生しやすい等、利用者から臭くて不潔な印象としてかなり不評であり、近年では個別に小便器を設置したトイレに改修された場所も多く、急速に減少している。
- スカイトイレ - 高層ビル等の工事現場などで、トイレを設置出来ないような場所に設置したり、災害時に使用する小便器タイプの簡易トイレ。上部が朝顔、下部がポリタンクになっており、溜まった小便をトイレあるいは汚水舛に流す。
構造
上部を起点に:上水道管、洗浄用のフラッシュバルブ(センサーやハイタンクによる自動洗浄の場合は水道管のみ)、洗浄水の吐水口、中心部、リム部(排泄時にちょうど尿が当たる部分)、排水口、陶器製のトラップ、配水管、排水管の途中に設けた排水トラップの順番となっている。
一方、壁掛け型小便器は便器本体がボルトやネジで壁に固定されており、便器の下部に排水トラップ部が露出している。
大小両用便器(兼用便器)
和式大便器の一種で、一段(20〜30cmほど)高くした床に設置し、便器後部を段違い部に張り出させて男子の小用を兼ねる両用便器(兼用便器、段差式とも呼ばれる)が存在し、段違い部に張り出した部分は小便器のリップ部と同形状になっている。この大小両用和式便器(兼用便器)は、小便器の設置空間が取り難い日本の住宅環境もあり、一般住居でも広く採用されているほか、 小規模な店舗やオフィスのトイレ、コンビニエンスストアのトイレ、ホテルや旅館等宿泊施設の各部屋にある客室のトイレにおいても同様に敷地面積の節約から和式の大小両用便器をひとつだけ供している場合も少なくない。 これらの大小両用和式便器(兼用便器)は男性用トイレの他に男女共用トイレの便器としても多く使われる。宿泊施設などにおいては、客室部屋内の個別の男女共用トイレを敬遠する宿泊客の為に各フロアーに男女各々の性別専用のトイレが設置された宿泊施設も多い。 大小両用和式便器(兼用便器)の洗浄装置は通常の和式便器と同様に店舗やオフィス、宿泊施設においては、多くが連続使用が可能で省スペースであるフラッシュバルブにより給水されるが、一般住居等のように25A以上の給水管径、給水圧力が0.07MPa以上が確保できず、フラッシュバルブが使用できない場合はボールタップによるタンクを設置して給水する。タンク式の主流を占めるロータンク式では、タンクの上部にはタンクの蓋の代わりに、手洗い器を兼ねている水盆を置き、タンクの給水の一部の水が手洗い部に出て来る仕組みであり、この場合トイレ内に個別に手洗い器を設けることを省略できるために、大小両用和式便器が設置される狭い空間のトイレで多く採用されている。
大小両用和式便器(兼用便器)においても一般向けの和風便器(和式便器)同様に床上給水式と床下給水式があり、給水方式は施工面や配管の取り廻し、便器との相性の関係で、床上給水式は主にロータンク給水で、床下給水式の場合フラッシュバルブにより給水される。
小便器としてのの役割を兼ねる大小両用和式便器(兼用便器)は、排尿に供する頻度が多いことから通常の小便器同様に店舗や宿泊施設等、不特定多数の利用があり衛生面や快適性を重視する施設のトイレにおいてはフラッシュバルブにサニタイザーを連結して、便器洗浄水を流す度にサニタイザーから一定の濃度に希釈された尿石付着防止薬剤が含まれる洗浄薬剤、消毒薬剤を大小両用便器へ常時供給させて、悪臭や便器の汚損を防止、、排水管の詰まり防止およびトイレ内の芳香をする事も多い。
洋式便器化が普及した近年では和式の大小両用便器に代わって通常の洋式大便器をひとつだけ設置して大小兼用便器として供していることが多くなっている。
小便器の洗浄装置
小便器の洗浄は主にフラッシュバルブを接続して給水するが、手動式の場合は押しボタンを押して起動させ、自動式の場合は人感センサが便器付近の壁や便器本体に内蔵されている。
古い公共のトイレではハイタンク式による連立一斉洗浄方式があり、設定されたタイマーにより、電磁バルブでサイホン作用を起こしハイタンク内に貯水された水を、排水して複数の小便器を洗浄する。この方式は利用者が全く居ない時でも洗浄水が流れたり、逆に利用者が集中している時でもタイマーの設定時間が来るまで洗浄水が流れないので悪臭の原因になるなどのデメリットが多い。
またハイタンク式による連立一斉洗浄方式でも自動サイホン式があり、絶えずタンクに少量の水が給水され、タンクの水が満水に達する頃に自動でサイホン作用が働いて排水して連立した複数の小便器に給水する。利用者が居ない時でも、この動作が繰り返されるので、大量に無駄な水を消費してしまう他、タイマー式同様、利用者が集中している時でもタンクの水が満水に達しないと洗浄水が流れないので悪臭の原因になるなどのデメリットが多い。
これを改良したのが人感センサ式自動サイホンでトイレの入口付近に設置された人感センサにより検知した利用者をカウントし、設定された利用者まで検知するとハイタンクに給水が始まり、タンクの水が満水に達する頃にサイホン作用が働いて自動で排水して小便器に給水する。
これらのハイタンク式による連立一斉洗浄方式は、人感センサ式フラッシュバルブが普及するまでは公共のトイレで多く採用されていたが、最近ではトイレの改修などにより徐々に採用が減ってきている。
その他、小便器の洗浄には蛇口と同様の水栓を回して開閉させ水を流す方式も存在するが、この方式も採用が減っている。
小便器の衛生面から跳ね返り、尿石の付着を防ぐためにトイレボールと呼ばれる洗浄薬剤を排水口付近に置いたり、、衛生面や快適性を重視する施設のトイレでは、水洗式小便器上部の給水管に連結したサニタイザーディスペンサー(薬剤供給装置、Sanitizer dispenser)により尿石付着防止薬剤が含まれる消毒薬剤を便器に供給する場合が多い。
小便器と薬剤供給装置サニタイザー
尿石は、尿に溶けているカルシウムイオンが濃縮および炭酸などと反応、カルシウム化合物として、これが排便時の洗浄・希釈が不足すると便器および配管の内部に滞留し、付着・沈積したものである。主に男子用小便器および管路に発生する他、女性用大便器やその管路にも発生する。
滞留中に腐敗分解濃縮が行われ、小便器内のトラップ、管路内に、カルシウムがアンモニアなどの成分を含みながら沈着、配管内が動脈硬化のような状態になり、排水不良や詰まりが発生する。
このため尿石の発生対策として、各業者や便器製造メーカーから尿石除去及び付着防止機能を持った便器や薬剤が発売されており、最近は便器の洗浄水を電気分解し、生成した機能水を流しバクテリアの繁殖を抑制して、アンモニアの発生や尿石付着を防止する機能がある小便器が発売されているほか、公共の施設では水洗便器の洗浄水に尿石防止の薬剤を添加する装置であるサニタイザーディスペンサー等が設置されることが多い。この装置は主に、デパート、駅、ホテル、劇場等の衛生面や快適性を重視する施設の男性用トイレでは主に小便器に、女性用トイレでは和式大便器・洋式大便器の便器洗浄管に連結して設置される。
サニタイザーディスペンサーが設置されている男性トイレでは、概ね小便器のみに設置され、和式大便器・洋式大便器には設置されないことが多いが、同一箇所の女性トイレにはほとんどの和式大便器・洋式大便器にサニタイザーディスペンサーが設置されている。これは同じ大便器でも男性トイレの大便器に比べ女性トイレの便器(大便器)は実質上、大便器が小便器の役割を兼ねている為に排尿に供される頻度が極端に高いためである(男性トイレの大便器にもサニタイザーディスペンサーが設置されているトイレも存在する)
サニタイザーディスペンサーの作動原理は、水洗フラッシュバルブを操作して便器に水を流すと、水は水圧により給排水管(便器の給水管からサニタイザーディスペンサーに連結した管)を通り、、フロート弁を経由してサニタイザーディスペンサー内に流入する。サニタイザーディスペンサー内の水量が増えるにつれて、フロートが上昇していき、やがてフラッシュバルブの流水がピークに達する頃、サニタイザーディスペンサー内が満水になると同時にフロートが最上昇点に達し、フロート弁が閉鎖される。このためにサニタイザーディスペンサーへ流入する水の量は、常に一定となる。サニタイザーディスペンサーに流入した水は、薬剤本体と接触して薬剤を溶解する。便器へ流れる水流の強さが弱まると、フロートが降下してフロート弁が開き、サニタイザーディスペンサー内の薬剤を溶解した水は給排水口を経由して便器に流れ込む。一回フラッシュバルブのの操作により便器に流れる水の量はほぼ一定であり、水流の強さの時間的変化も一定した状態が繰り返されるので、サニタイザーディスペンサーに水が流れ込み、薬剤を溶解して便器へ流れる過程も一定した状態が繰り返され、常にほぼ一定量の薬剤が溶解して便器に供給される。便器への流水が終了する間際に薬剤を溶解した水が便器に供給されるので、薬剤を溶解した水はほとんど希釈されることなく、常に安定した薬剤量及び薬剤濃度の溶液(使用水に対し100ppmの濃度の溶液)が便器内に留まり、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの菌を消毒して、脱臭、尿石の付着防止に効果的に作用させることができる。
また便器洗浄後のサニタイザーから便器への管路や便器内の管路に残留した薬剤は次回の洗浄開始直後に便器から出てきて消毒剤による便器内の消毒と、洗浄剤よる便器内の防汚洗浄がなされる。便器洗浄水を流す度にサニタイザーから便器への薬剤溶出の一連の動作が繰り返され、使用待機状態の便器は常に表面や管路は除菌消毒され、トラップ等の便器内の水溜りには一定量の、濃度の薬剤の溶液(約100ppmの濃度の溶液)が常時滞留している状態となる。
サニタイザーディスペンサーに内蔵されている薬剤はメーカーや種類により様々であるが、殺菌、尿石防止剤としてのカチオン系界面活性剤(スルファミン酸)、洗浄剤としてのノニオン系界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、メチルビニルエーテル・マレイン酸共重合体液)、成形助剤としてのホウ酸、及び防錆剤としてのイビット155Kを含有したを主成分とする強力な便器洗浄薬剤が、液体またはゲル(ゼリー)状の薬剤としてカートリッジ式の耐薬性容器ボトルのタンクに入っており、その薬剤ボトルタンク底にある蓋部の薬剤溶出部は、海綿体の合成樹脂製のスポンジになっており、その海綿体の無数に開いた小さな穴から薬剤が滲み出るようになっており、サニタイザーディスペンサー内には常に少量の水が残る構造になっており、残留した水に絶えず薬剤を溶解させる以外に、長期間使用しない場合のサニタイザーディスペンサー内及び薬剤溶出部の乾燥防止や、水圧が高い場合の飛沫の飛散などを防止することができる仕組みなっている。これらは、水を流す度に尿石防止、消毒薬剤と共に強力な洗浄剤等の化学物質が便器から出てきて便器をコートし、便器内~排水管までが絶えず防汚される。さら香料が含まれる芳香効果も併せ持っている薬剤もあり、便器から出てきた薬剤でトイレ内を芳香する他、一部にはトイレボールと同じ薬剤であるパラジクロロベンゼンを主成分とした薬剤や布製又は多孔フィルム製の袋に入ったティーパック状の薬剤が内蔵されている物もあり、液体状、ゼリー状の薬剤が内蔵されている場合、薬剤の溶解による泡立った水や芳香効果がある泡立っ水が便器から出てくるのに対し、パラジクロロベンゼン系の固形の薬剤が内蔵されている場合、トイレボールと同様のナフタレン(ナフタリン)系の独特な匂いの薬剤の溶液が水に混ざって便器から出てくる。
それぞれのサニタイザーディスペンサーの薬剤は、夏用と冬用の薬剤があり、その時の水温に応じた薬剤がセットされ、常に一定した濃度に溶解されるようになっている。
最新のサニタイザーディスペンサーではサニタイザーディスペンサー本体に赤外線人感センサと薬剤供給用輸液ポンプが内蔵されており、便器の使用人数や使用頻度を感知し、適量の薬剤が自動滴下し、便器の使用状況に応じた薬剤量及び薬剤濃度の溶液が便器に供給される機構を持つ機器も増えている。
ギャラリー
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カラー小便器
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大小両用(兼用)便器
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高層展望
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高層展望・バケツ
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集約型
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集約型と壁面の併用
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鋭角
- Men washroom display board having a picture of woman looking down.jpg
写真使用
- Spy Urinal.jpg
写真使用
- Design Urinal.jpg
写真使用
- Urinal in the Bangkok airport.jpg
写真使用
- Mouth shaped urinals.jpg
オブジェ