カワハギ
カワハギ(皮剥・鮍・英名 Thread-sail filefish・学名 Stephanolepis cirrhifer)は、フグ目・カワハギ科に分類される魚。丈夫な皮におおわれた海水魚で、美味な食用魚でもある。
特徴
全長は最大30cmほど[1]。体は菱形で上下に平たい。背びれの第1条と腹びれは太く短いとげになっている。また、オスは背びれの第2軟条は糸状に細く伸びるのでメスと区別できる。体色は青灰色や褐色で、個体によって淡いまだら模様や黒っぽい縦じまが入る。口は小さいが、中にはペンチのような頑丈な歯がある。全身が丈夫でざらざらした皮膚におおわれるが、この皮膚は料理の時にすぐに剥がせることが和名の由来となっており、別名でもハゲ、バクチなどと呼ばれる。
北海道から東シナ海まで分布している[1]が、南のほうが生息数が多い。水深50mより浅い砂底と岩礁が混じるような環境に生息する。昼に活動するが、夜は海藻などを口にくわえ、つかまって眠る習性がある。
食性は肉食性で、ゴカイ、貝類、ウニ、甲殻類など、さまざまな小動物を餌とする。口に水を含んで砂地に勢いよく吹きつけ、砂にもぐった生物を巻き上げて捕食する。殻におおわれたカニや貝類なども、頑丈な歯で殻を噛み砕いて食べてしまう。また、エチゼンクラゲを集団で襲うことが観察されており[2]、砂中に生息する多毛類より捕食しやすいクラゲを好むことも確かめられている[3]。
産卵期は夏で、砂底に産卵する。幼魚はアミメハギに似ており、海藻の多い岩礁海岸などで見られる。成長するにつれ岩礁の沖合いで生活するようになる。
食材
旬は本来は夏であるが、秋から冬にかけて第二の旬があり(後述)、釣りや籠漁などで一年を通じて漁獲される。小さな口で餌を削ぎとるように食べるので釣り人に当たりが伝わりにくく、釣り上げるには高度なテクニックが必要とされ、このため引っ掛け釣りなどの釣法も普及しており、釣りの対象としても人気が高い。
身は脂肪が少なく歯ごたえがある白身で、料理法も煮付け、刺身、フライ、干物など多種多様である。生では弾力があるので、刺身にする際は薄造りにする。
また、身だけでなく肝臓(キモ)も美味で珍重する。カワハギの第二の旬が秋からというのも、この時期は冬に備えて餌を多く摂り、肝臓が特に大きく発達する時期だからである。肝臓はピンク色で、脂肪の少ない身に対して脂肪分を多く含んでおり、こってりした旨みと甘みがある。身と一緒に刺身や煮付けで食べる。キモを裏ごしして醤油に溶いたものを刺身につけるのも、カワハギならではの食べ方である。
一方肝臓が発達すると身がやせてしまうので、身だけを賞味するならば夏がよい。
同じカワハギ科のウマヅラハギやウスバハギも料理法はカワハギと同様である。
別名
ハゲ(紀州)、ハギ、マルハゲ、カワハゲ、カワハギ、バクチ、バクチウオ、メンボウ、メイボ(山口県)、キュウロッポ(平戸市)ゲバチロ(三浦半島西部)など。バクチやバクチウオなどの名の由来は「皮がすぐ剥がれる」さまが「博打に負けて身ぐるみ剥がされる」さまを連想させるためである。また前述の通り、針に引っかからずに餌だけを食べるため、「餌泥棒」「餌取り名人」などとも呼ばれる。