女房言葉
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女房言葉(女房詞・にょうぼうことば)とは、室町時代初期頃から宮中や院に仕える女房が使い始め、その一部は現在でも用いられる隠語的な言葉である。語頭に「お」を付けて丁寧さをあらわすものや、語の最後に「もじ」を付けて婉曲的に表現する文字詞(もじことば)などがある。
省略形や擬態語・擬音語、比喩などの表現を用いる。優美で上品な言葉遣いとされ、主に衣食住に関する事物について用いられた。のちに将軍家に仕える女性・侍女に伝わり、武家や町家の女性へ、さらに男性へと広まった。
有職故実書『海人藻芥』や『日葡辞書』・『日本大文典』などのキリスト教宣教師による日本語本にも一部が記されている。
女房言葉の事例
語頭に「お」が付く
- おかか(鰹の削り節)
- 「お」+「鰹節」の「か」を2回重ねたものか。
- おかき(欠餅)
- 当初は「鏡餅」を砕いて食べたことから。
- おかず(御菜)
- 惣菜は数々取り揃えるものであることから。
- おかべ(豆腐)
- おかちん(餅 江戸時代)
- 「お」+餅を意味する古語「搗飯(かちいい)」が訛った「かちん」。
- 大豆から豆乳を絞った後の残りかす。
- おこわ(強飯:こわめし)
- おさつ(薩摩芋:さつまいも)
- おじや(雑炊)
- 「じやじや」という煮える時の音からというが、語源不明。
- 「御台盤」の略語。食器を載せる脚付きの台の意から、転じてご飯の意になった。
- 「付け」は飯に付けて出すもののことを言う。本来は吸い物の意であったが、味噌汁のことを、味噌の女房言葉である「おみ」と合わせて「おみおつけ」というようになり、それが略されて特に京阪神で「おつけ」で味噌汁の意としても使われるようになったものである。
- おなか(腹)
- おなら(屁)
- 「鳴らす」から来た語。
- 小豆の粒を萩の花に見立てた表現。
- 元は「歯黒め」と言った。
- おひや(水)
- お冷。冷水のこと。
- おひろい(歩行)動詞「拾う」から変化。
- おまる(便器)
- 「放る(まる、ほまる)」は排泄を意味する動詞(例:放屁)
- おまわり
- 副食物。
- おめぐり
- 副食物。
- おまん(饅頭)
- およる(寝るの尊敬語)「御夜」の動詞化。
言葉に拠っては、ごが付く場合もある。
- ごん(ごぼう)
語尾に「もじ」が付く(文字詞)
- おくもじ(奥さん)
- 「奥様」+文字
- 「お」は接頭語「御」
- 「九献(くこん)」の「く」+文字→お酒
- 「茎(くき)」+文字→漬物
- 「苦労」+文字→苦労
- おめもじ(御目にかかる)
- 「御目にかかる」の「おめ」+文字
- かもじ
- 母または妻「かか」+文字、付け髪の場合は「髪文字」
- くろもじ(植物名及びそれで作った楊枝)
- こもじ(鯉)
- 「鯉(こい)」の「こ」+文字
- しゃもじ(杓子)
- 「杓子(しゃくし)」の「しゃ」+文字
- すもじ(寿司)
- 「寿司(すし)」の「す」+文字
- にもじ(大蒜)
- 「大蒜(にんにく)」の「に」+文字
- はもじい
- 「恥ずかしい」の「は」+文字
- ひともじ(ねぎ)
- 当時「葱」と書いて「き」と一音で読んでいたことから
- ひもじい
- 「空腹である」という意味の「ひだるい」の「ひ」+文字
- ふたもじ(にら)
- 「葱(き)」が一文字であるのに対し、「韮(にら)」が二文字であることから。
- ゆもじ(浴衣)
- 「浴衣(ゆかた)」の「ゆ」+文字
その他
典拠・資料
- 日本語解釈活用事典(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助、共編著/ぎょうせい)1993年、ISBN 4-324-03707-8
- 古典文学レトリック事典 (國文学編集部[編]/學燈社)1993年、ISBN 4-312-10038-1
- 思わず人に話したくなる続・日本語知識辞典(学研辞典編集部)2003年、ISBN 4-05-401927-7