ソニックブーム
ソニックブーム (sonic boom) とは、主に戦闘機などの超音速飛行により発生する衝撃波が生む、轟く様な大音響のこと。衝撃波以外の原因で生じる単発的な大音響を含める場合もある。
地上で観測される轟音は衝撃波が減衰したものと、地上の物体を衝撃波が広範囲に鳴動させて発生するものが主体で、空中の飛行機内などでは轟くような音にならない(何かがぶつかった様に聞こえる)。
概要
超音速で飛行する物体が上空を通過した際に、何かが爆発したような2つの不連続な音として観測される[1]。2つの音のうち、最初の音は飛行体前方で発生した衝撃波(マッハコーン)によるもので、2つ目の音は物体後方(スペースシャトルの場合は垂直尾翼)で生じた衝撃波で生じる。機体の大きさや質量によって聞こえ方も変わるためこの2つの音を区別するのが難しく1回しか聞こえない場合もあるが、スペースシャトル帰還時に聞こえる音ははっきり2つに別れて聞こえる。このソニックブームを波形にすると、アルファベットの N 字型になるため、N-Wave と呼ばれる。
1960年代には高高度を飛行すれば衝撃波は減衰し、地表でソニックブームは発生しないと楽観視されていた。しかし、ノースアメリカン XB-70 が高度約21,000m(音が到達するまで、約1分の距離)を飛行した際、地上で強力なソニックブームが観測され、それほど単純ではないことが判明した。技術的には十分可能な、超音速旅客機や超音速輸送機の実用化を妨げる要因となっている。 コンコルドは洋上の高々度でのみ超音速飛行が許されていたが、客船上でソニックブームが観測されている[2]。
2013年にロシア連邦で発生した隕石の落下による災害は、隕石の通過と爆発で発生するソニックブームが災害の原因となった。隕石の爆発は、15kmから25kmという高高度で発生した現象である。
ソニックブームのデータ例
航空機 | 速度 | 高度 | 圧力 (lbf/ft2) | 圧力 (Pa) |
---|---|---|---|---|
SR-71 | Mach 3 | テンプレート:Convert | 0.9 | 43 |
コンコルド SST | Mach 2 | テンプレート:Convert | 1.94 | 93 |
F-104 | Mach 1.93 | テンプレート:Convert | 0.8 | 38 |
スペースシャトル | Mach 1.5 | テンプレート:Convert | 1.25 | 60 |
低減
2004年現在、ソニックブーム低減のための研究 SSBD(Shaped Sonic Boom Demonstration 低ソニック・ブーム設計手法飛行実証) が、DARPA の予算の下で NASA ドライデン飛行研究センターで実施する。使用している機体はノースロップ F-5 で、機首の形状を整形することによりソニックブームの低減を試みる。
また、日本でも宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が精力的に研究を行なっており、低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト(D-SENDプロジェクト)が進められている[4] [5] [6]。
参考資料
- ↑ http://www.youtube.com/watch?v=jqdbCGzmCfg&feature=player_embedded f-18 breaking sound barrier
- ↑ http://www.youtube.com/watch?v=annkM6z1-FE Concorde breaking the sound barrier
- ↑ Dryden Flight Research Center Fact Sheet: Sonic Booms
- ↑ 低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト 第1フェーズ試験の実施結果について(速報)2011年5月19日 JAXAプレスリリース
- ↑ 低ブーム・低抵抗設計技術の研究 JAXA
- ↑ 静かな超音速旅客機を実現するために 2007年12月27日JAXA
関連項目
外部リンク
- Shuttle sonic booms to wake Space Coast for final timeスペースシャトルで生じるソニックブームを分かりやすいイラストで紹介