夫婦
夫婦(ふうふ、めおと、wedded pair、husband and wife)または夫妻(ふさい)とは、
概要
国や文化圏によって、夫婦の位置付けは異なる。男女同権の理念を重視して、男女に一切差別があってはならない、と考え、ほとんど全ての権利や義務を同等に考える国もあれば、一方で、夫と妻の権利や義務は異なるものと考える国や文化圏がある。義務についても、夫の義務を重く考える文化圏と、妻のほうに重い義務を持たせる習慣を持つ文化圏がある。
例えばフランスではいくつかの結婚方式があるが、宗教的結婚ではなく、事実婚的な制度が主流となっており、この夫婦は経済的には別の存在とすることが多く、夫が稼いだお金はあくまで夫のお金、妻が稼いだお金はあくまで妻のお金で、ふたりのもともとの財産や各人がそれぞれ稼いだお金を混同はしないようになっている。
イスラーム圏では、夫というのは妻を庇護する存在であり、複数の妻を持つことができる。ただし(決して男性にとって楽しい家庭とは限らず)イスラームの規定では複数の妻を平等に愛さなければならないとされており、さらに複数の妻を同時に庇護する存在であることを求められ金銭的負担が非常に大きい。それを実行できても、妻の間にうまれる嫉妬や喧嘩をなだめたり調停することをずっと続けなければならないので、実際には一種の苦行のような生活を強いられることになる。
世界的に見ると、夫婦は同姓としている国が圧倒的に多い。
フランス
フランスではいくつかの結婚方式があるが、古来の宗教的結婚でもなく、フランス革命以降の法的結婚でもなく、PACSと呼ばれる事実婚的な制度が主流となっており、この夫婦は経済的には別の存在とすることが多く、結婚時にあらかじめ契約書に財産について細かく記述することが可能で、ふたりのもともとの財産や各人がそれぞれ稼いだお金を混同はしないようになっている。例えば、男性が数十億の資産を持っている人で、女性が無一文の人であって、離婚しても、もともと男性が持っていた財産が女性に渡ることはない。男女が逆の場合でもあらかじめそういった内容の契約書を書くのが一般的である。つまり(日本でありがちな)結婚相手の財産を奪ってしまうような結婚・離婚は阻止できるようになっている。これによって、(日本でありがちな、結婚相手のもともとの財産や婚姻中に稼いだ給料の半分を奪うことを期待した、不純な動機による結婚ではなく、(金銭のことは抜きで)心の相性として本当に一緒に暮らすのが心地よいと感じられる者同士が一緒に暮らせるので、これを選択する人々が主流となった。
フランスでは夫が稼いだお金はあくまで夫のお金、妻が稼いだお金はあくまで妻のお金と考え、そう分けることも一般的である。例えば二人で賃貸住宅を借りて住んでいる場合は、男・女が均等にその家賃を分担するべきだと考えるのが一般的であり、男女同権という理念を重んずるフランスではそれが理にかなっており正しいことだと考えられている。
イスラーム圏
イスラーム法で一夫多妻制が認められているわけであるが、実際に一夫多妻となっている夫婦の割合は国ごとに大きく異なり、西アフリカのブルキナファソでは1998年の統計で54.7%。コートジボワールで35%。中央アフリカのチャドで39%(1996年時点)。東アフリカのジンバブエで11%(2005年時点)。中東のイエメンで7.1%(1997年時点)。
イスラーム圏では男性は40歳程度になると、働くこと(働いて生活費を稼ぐこと)は妻にまかせてしまう国が多々ある。 例えば、トルコ共和国のイスラームの夫婦はそうである。男性は40歳程度まではそれなりに働くが、40歳程度になると、妻に働いてもらうようになり、妻が働いている間、夫たちは、夫同士で立ち話でおしゃべりをしたり、並んで座って水タバコを吸っては世間話をして過ごすようになるのが一般的である。そうした夫たちにかわり、妻たちのほうがせっせと働くようになる。[2]。トルコ人夫婦は、米国に移住してもそのような習慣を引きずって、妻のほうがせっせと働いている間、夫はのんびりと過ごす、というパターンになることが多い。例えば夫婦で商店を経営している場合、妻が商店のレジまわりや商品棚の前でせっせと手を動かして汗をかいて仕事をしている間、夫は店舗の中あるいは店舗の前などにおいた椅子にのんびりすわり、店の前をとおる顔なじみを見つけてはおしゃべりをして過ごす、という生活をしていることが多い。
日本
2007年時点での、日本の初婚夫婦の平均年齢差は約2歳である[3]。
日本の民法の752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」とあり、夫婦は「同居、協力、扶助」の三つの義務を履行しなくてはならないことになっている。夫婦共同生活が維持できなくなることを企図や意思を持って三つの義務を正当な理由なく故意に履行しないことを、「悪意の遺棄」と言う。例えば、相手方を置去りにして住居を飛出す行為、相手方を追出す行為、病気にかかった相手方を長期間放置する行為、が「悪意の遺棄」に該当する可能性がある。男性であれ、女性であれ、家に生活費を入れない行為などが「悪意の遺棄」に該当する可能性がある。注意しなければならないことは、あくまで憲法で男女同権と定められているので、生活費を稼ぐ義務は女性にもあり、女性が生活費を稼ごうとしなかったり、女性が稼いだ金銭を生活費として男性に渡さないことも「悪意の遺棄」に該当する可能性がある。職務上の単身赴任、夫婦関係を見なおす冷却期間としての合意の上での別居、子供の病気療養の為の別居、ドメスティックバイオレンスから逃れる為の別居など、正当な理由があって同居できない場合は「悪意の遺棄」には該当しない。「悪意の遺棄」に基づくものであれば民法違反になり、それが継続して修復困難とみなされれば正当な離婚理由となる。
日本では、江戸時代、農民は夫婦ともに田や畑で身体をよく動かし働いていたものだった。大正・昭和期に企業で働く人が増えると、結果として夫ばかりが企業で働き、妻は家庭で家事をし、いわゆる「専業主婦」となるパターンを選ぶ夫婦が圧倒的に増えた。だが、男性でも本当は企業などで激しい競争しながら働くのは全然好きではなく、むしろ家庭で家事をしているほうが性にあっているという男性も一定割合いるので、最近では(夫婦で相談の上)夫が専業主夫を選択する夫婦の数も、わずかづつではあるが、徐々に増えている。専業主夫同士のネットワークも構築されつつある。
また、民法750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」と定め、夫婦が異なる氏を持つことができない。日本では、女性が家庭外で仕事をする率が増えるにつれ、結婚前の姓(=いわゆる「旧姓」)を通称としてひきつづき利用する人が増えてきた。選択的夫婦別姓制度導入を求める女性も増え、国会でも議論されたが、そうした制度を導入している国は少なく、そうした珍しい(先進的な)制度を導入した場合に、子供がどのように片方の姓を選択するのか、その心理的な負担をどう解決するのか、子供の福祉をどう考えるのか、という大きな問題があり、話はほとんど進まなくなった。
(株)結婚情報センターが2008年に660人に対しアンケート調査を行ったところ、「夫婦喧嘩をしない」と答えた夫婦はわずか10%であり(つまり90%が夫婦喧嘩をしており)、「毎日夫婦喧嘩をする」が2.3%、「週に1~2回夫婦喧嘩する」が16.2%であった。
関連用語
- おしどり夫婦
- 仲のよい夫婦のこと。ただし、実際のオシドリは毎年相手を変えるなど、決して終生添い遂げるわけではない。
- ノミの夫婦
- 夫が妻より小さい夫婦のこと。ノミのメスの体長がオスよりも大きいことから。
- 仮面夫婦
- 世間的には装っているが仲は冷め切っている夫婦のこと。
脚注
- ↑ 広辞苑 第六版「夫婦」
- ↑ ちょうど、鳥の中に、卵を温める時はオス・メスが交互にあたため、メスが暖めている間はオスがエサをとってきて、オスが暖めている間はメスがエサをとってきて、ヒナたちが無事巣立つとオスは一切 エサをメスに持ってこなくなる種がいるのと、似たようなことをしており、オスが一方的にエサを調達する係だとは考えておらず、(自然界の多くの動物と同様に)メスもエサを調達してくるべく、同等の(あるいは同等以上の)労力を負担すべきだ、と考えているわけである。
- ↑ 厚生労働省『人口動態統計』
関連項目
- 婚姻(結婚)、事実婚(内縁)、別居・離婚
- 夫婦善哉
- 夫婦喧嘩
- 家族・家庭・世帯・大家族・核家族
- 配偶者
- 共働き、DINKS、扶養、出稼ぎ、単身赴任、DIWKS
- 主婦・主夫
- ジェンダー
- 仕事・家事・育児
- 晩婚化
- 亭主関白 / 愛妻家・恐妻家・かかあ天下
- ドメスティックバイオレンス
- 夫婦財産制
- 夫婦別姓
関連文献
- 山口一男(2007)「夫婦関係満足度とワーク・ライフ・バランス」 季刊家計経済研究
- ブランチ・エバット『イギリス人の知恵に学ぶ「これだけはしてはいけない」夫婦のルール』筑摩書房、2012 ISBN 4480429352
- 永井路子『日本夫婦げんか考』中央公論新社, 2006 ISBN 4122047242