ぼくの地球を守って
テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/OVA テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Sidebar with collapsible lists 『ぼくの地球を守って』(ぼくのちきゅうをまもって)は、日渡早紀作の漫画作品で、1987年から1994年にかけて「花とゆめ」で連載された。
目次
概要
通称:ぼく地球(ぼくたま)、英語名 Please Save My Earth。
花とゆめコミックスでは全21巻、白泉社文庫では全12巻で単行本化され、2004年5月からジェッツコミックスで愛蔵版 全10巻が発刊されている。また、2003年11月からは別冊花とゆめにて、続編『ボクを包む月の光(ボク月)』が連載開始。『記憶鮮明シリーズ』のいくつかと背景世界や登場人物を共有しているが、話は直接繋がってはいない。
輪廻転生する主人公たちの、前世の記憶をめぐる複雑な人間関係や時を越えた恋愛を描いた近未来SF漫画であった[1]。
1993年から1995年にかけて、Production I.Gの手によって製作されたOVAも発売された。
一大“前世の仲間探し”ブームを巻き起こした事で知られる。
あらすじ
1991年、父の栄転により東京の高校に転入してきた主人公―坂口 亜梨子は、校内にある中庭の片隅でクラスメイト―小椋 迅八とその親友―錦織 一成が交わす妖しい会話を立ち聞きしたのをキッカケに、2人が共有しているという夢―“ムーン・ドリーム”の話を聞くことになる。夢の中での2人はそれぞれ全くの別人、異星人の科学者であり、迅八は玉蘭、一成は槐という女性で、他の5人の仲間と共に“Z=KK101”と呼ぶ月にある極小の施設“月基地”から見守って暮らしているのだという。
その後、何かと亜梨子に絡んでくる7歳の少年―小林 輪を預かった折に、亜梨子は誤って彼をベランダから転落させてしまう。輪は奇跡的に軽傷で済んだが、それをキッカケに月基地での記憶とESP―“サーチェス・パワー”に覚醒。元気になった輪は「愛する亜梨子と婚約したい」と突拍子もない我儘を言って周囲を困らせる一方、裏では“Sくん”を名乗り松平 タカシを脅して“東京タワー”を強請るなど、深夜を中心に怪しい行動を人知れず繰り返すようになる。
その頃亜梨子は、自身が金髪の美女―木蓮と呼ばれ、褐色の肌の美丈夫―紫苑と地球を遥かに臨む部屋で仲睦まじく会話する夢を見る。短い夢ながら迅八と一成のムーン・ドリームとの共通点を見出した亜梨子は、夢の2人の詳細な似顔絵と共に迅八達に話したところ、間違いなく同じ夢だという結論に達する。ならば他の仲間―繻子蘭、柊、秋海棠、紫苑も現世に存在するのではないかと考えた3人は、残る仲間を探している旨をオカルト雑誌の読者連絡欄に投稿。程なく柊―土橋 大介と繻子蘭―国生 桜の夢を見る男女2人組から、連絡を受ける。
やがて顔を合わせた大介達から、ムーン・ドリームが自分達の前世であること、7人の科学者達の非業の死についてを知らされた亜梨子達は、度々月基地メンバーで集まる“会合”を開くようになる。しかし数度目の会合日、亜梨子に無理矢理同行した輪が、自身を2度目の転生を経た元・秋海棠であると偽り、現存する月基地を遠隔操作するための7つの短文―キィ・ワードを聞き出そうと、他のメンバーの記憶を次々に呼び起こす“同調連鎖”を始め、とうとう前世の世界の年表が作られるようになる。更に本当の秋海棠―笠間 春彦が輪に脅迫されて紫苑を名乗りながら、タカシを守ろうとしていた世話役―田村 一登に助けを求めたことで、事態はヤクザも加えての騒動に発展してしまう。輪の目的は? そして亜梨子達は、輪の策謀を止めることが出来るのか。
登場人物
主要キャラである7人の前世の詳細については、後述の月基地メンバーの項目を参照。
- 坂口 亜梨子(さかぐち ありす)
- 声 - 白鳥由里
- 木蓮の生まれ変わりである、石蕗高校の1年生。元から内気な性格ではあったが、北海道から人の多い東京への転校で気後れしており、未だ馴染めずにいる。近所付き合いの関係や年上である事から輪の面倒を何かと見ているが、よくイジメられては泣いている。一番の仲良しである鈴木 真理子(現世の項目参照)曰く、男子からの人気が高いらしいが、亜梨子自身にその自覚はない。
- 当初は動植物の感情が理解でき、動植物からは奇異の目を向けられていたが、ムーン・ドリーム(作中用語の項目参照)を見た後は木蓮同様に歌を聴かせた植物の成長を促進するようになり、合唱部に入部してからは部室近くの樹を大きく成長させる。しかし、大介達との合流のキッカケとなったムーン・ドリーム以降は夢を見なかったこと、木蓮が月基地の男性陣のマドンナであったことから、徐々に『あたしなんかが木蓮さんの筈がない』と自信を失い、遂に会合を辞退するようになる。が、物語後半に僅かずつ起こっていた覚醒が、京都・奈良への修学旅行中に笠間 春彦の促しで一気に加速。高熱で臥せりながらも木蓮として完全に覚醒した後は、同様に額に赤い四つ葉の痣“キチェ”が現れる能力者―キチェ・サージャリアン(作中用語の項目参照)として聖書(キサナド)を操って植物の成長を操れるようになる。
- 小林 輪(こばやし りん)
- 声 - 冬馬由美
- 紫苑の生まれ変わりであり、亜梨子の住むマンション隣室の夫妻の一人息子である小学生。名前の由来は母(声 - 川島千代子)が“輪廻”から付けたもので、『やがて死んでも、次の時代で会えるように』との意味がある。漫画とイタズラとガムが好きで、動植物に触れた経験が少ないためにその扱いが分からないという、典型的な都会っ子の少年。輪自身は隣りに引っ越して来た憧れの亜梨子の気を引きたいのだが、幼いあまりに、ガムを使ったイタズラばかりしてしまう。その結果、輪のお気に入りである新体操ごっこの音がするだけで、亜梨子は怯えていた。ベランダ事故を期に、輪は気持ちをオープンに亜梨子へ伝えるようになる。
- 覚醒後は紫苑としての記憶に加え、紫苑の知識とサーチェス・パワー(作中用語の項目参照)も蘇り、テレポートや念動力を扱う天才少年となる。容姿の特徴は、秋海棠そのもの。その力を駆使して“Sくん”として暗躍し、東京タワーを改造しようとする。表向きは秋海棠として紫苑に従う振りをしつつ、月基地メンバーにキィ・ワードを集めるよう促すが、やがてその手段はどんどん強引さを増していく。
- 小椋 迅八(おぐら じんぱち)
- 声 - 森川智之
- 玉蘭の生まれ変わりである、亜梨子のクラスメイト。単純明快・直情型で喧嘩っ早い。亜梨子に恋心を抱いていたが、木蓮だと知ってからはそれに拍車が掛かり、紫苑の存在に何かと神経を尖らせるようになる。親友の錦織 一成とは、クラスメイトであった中学時代から夢について話し合っており、ムーン・ドリームである事が判明した高1からは、度々昼休みに校内の図書館脇の木陰で話し合っていたが、その現場を亜梨子に見られ、一時はホモと誤解されてしまう。
- 玉蘭として覚醒した後もサーチェスはほとんど使えず、テレポート出来たのは2回のみ。念動力もブロックを僅かに持ち上げる程度で、他では突発的な事態に無意識にしか発揮していない。しかしそれでも転生後の方が力は強くなったらしく、玉蘭と違って制御ピアスがなくとも、力を使って見せている。
- 物語後半。修学旅行に出かけた際、輪との闘いで負傷し、薬師丸の下で療養している本物の秋海棠・笠間 春彦から真実を明かされた時に「最低じゃねぇか!」と激怒。田村と一成に、制止された。
- 錦織 一成(にしきおり いっせい)
- 声 - 置鮎龍太郎
- 槐の生まれ変わりである、亜梨子の同級生。ストレートの黒髪をボブカットにした、中性的な容貌。実はオカルト誌“BOO”の愛読者(?)で、同誌を利用して仲間を探そうと言い出した張本人。物語開始時は1人だけ3組だったが、序盤で2年に進級した際のクラス替えで、再び迅八と3組でクラスメイトになっている。
- 当初の迅八とのホモ説は亜梨子の全くの誤解だったが、次第に前世の記憶に感化されてしまい、髪を伸ばしたり、迅八を意識する事に翻弄され、木蓮に拘る迅八と仲違いしてしまう。しかしやがて国生 桜の励ましで、槐の望み通り玉蘭の親友になれる男に転生出来た事や、自分がもう槐ではない意味など、前世との決別にいち早く向き合う。ムーン・ドリームも、無意識の内に槐のテレパス(受信のみの精神感応)能力を使い、玉蘭であった迅八と同じシーンを見ていた。
- 姓は錦織一清、名は三宅一生からとった(作者談)。「一清」の音読と同じなのは偶然の一致。
- 笠間 春彦(かさま はるひこ)
- 声 - 山口勝平
- 秋海棠の生まれ変わりである、おっとりとした気の優しい少年。心臓が悪くて入退院を繰り返していたがこの程回復し、中学3年生から復学しているが本来は高校2年生。街中で起こした発作を助けられて以来、田村 一登(現世の項目参照)とは家族ぐるみの親交を持つ。キリンが好きで、メルヘンチックな性格。
- 幼少時から時折ムーン・ドリームを見ており、そうとは知らずにテレポートを使い体を壊していた。しかし、デパートへ亜梨子と買い物に来ていた輪とぶつかってからは急速に覚醒し、田村が襲われていた現場に駆け付けた際、輪の姿を見てほぼ完全に前世を思い出す。それにより、かつて秋海棠が犯した過ちを盾に輪に脅され続け、追い詰められた末に一度は川に投身自殺を図るが、一成と桜に発見されて一命を取り留める。母がインド系ハーフ、父は松平建設の建築設計技師(第3巻で、田村が輪に襲われて入院した際、輪が作成した設計図を確認していた)で東京タワー改築計画の関係者の日本人というクォーターであるため、左の口元にホクロはあるが浅黒い肌と真っ黒な髪という紫苑に瓜二つな容貌で、それにより輪の命令で他メンバーには前世名を入れ替え、紫苑と名乗る。サーチェスは前世同様、輪にその強さでは遠く及ばない。
- 国生 桜(こくしょう さくら)
- 声 - 松井菜桜子
- 繻子蘭の生まれ変わりである、横浜在住の女子高生。気が強いが、繻子蘭同様に清楚な女らしさを持っていた槐の美しさに憧れており、槐の髪型を真似て背まで伸ばした髪をワンレングスにしている。前世の繻子蘭同様、亜梨子達との合流後は一成と頻繁に会うようになり、迅八への物想いに悩む一成の相談にも乗る内、春彦の投身自殺現場を発見する。
- 土橋 大介(どばし だいすけ)
- 声 - 飛田展男
- 柊の生まれ変わりである、川崎在住の高校生。亜梨子達が雑誌に投稿した呼び掛けに、手紙で返信した事で合流。7歳の頃から見ていたムーン・ドリームの影響で入った天体観測サークルで、事故車に同乗していた桜が月基地メンバーと気付く。前世の柊が月基地の責任者であり、また合流時に一番前世を思い出していた事から、会合でもリーダー的存在になる。弟―孝平を輪に人質に獲られ、柊の基地での責任問題も詰問された末に、キィ・ワードを奪われた。
現世
- 田村 一登(たむら かずと)
- 声 - 小杉十郎太
- 松平 タカシの世話役。京都の孤児院育ちで、元は暴走族・摩陀羅(マダラ)の参謀長。チンピラながら弟を養っていたが19歳の時にタカシの父・松平 羅王蔵に拾われて更正し、今に至る。弟が多摩川に投身自殺した呵責から、ショタコンと揶揄されながらも、タカシや弟によく似た春彦を身体を張ってでも守ろうとする。料理が得意。春彦からは恩人としても友人としても信頼が厚く、タカシに代わって対面した輪にボロボロにされていた場へ春彦が現れた件から、月基地にまつわる話を知らされ、事件に徐々に深入りするようになる。
- 薬師丸 未来路(やくしまる みくろ)
- 声 - 関俊彦
- 北斗の異母弟のエスパー。表情が少なく、淡々と喋るが現在は20歳の大学生。実の母にはそのESP能力のために疎まれ、代理出産を務めた北斗の母・薬師丸 顕子により、幼少時に薬師丸家に引き取られて育つ。未来路により、ESPに詳しかった北斗が田村に相談を受けたことで引き合わされ、春彦やタカシを守る為に“Mくん”として輪に真向かうことになる。
- 念動力やテレポート能力は高く、京都から東京までのテレポートが一瞬で可能。また死者の想念を聞き取る能力もあるようだが、サイコメトリーを利用したハッタリとも取れる部分も。未来路のESPと輪達のサーチェスは性質が異なるので、ぶつかり合うと水と油のように反発し合い、力を放った本人に跳ね返ってしまう。そのため、蓮明寺での大掛かりな輪との初対決の際には互いに負傷するが、質の違いに無自覚でより力の強かった輪に重傷を負わせてしまう。これを期に未来路は、傷付いた春彦を自宅に匿いながらも、輪を救う道も模索するようになる。改めてお見舞いに行った際、輪に「もう、止めてんか」と手を引くよう諭すが、言い争いの末。病室の外で立ち聞きしていた、輪の母が「私の輪を返して!!」と泣き叫びながら訴え、輪が失踪する原因に。
- 本作ラストでは、度々勧誘されていたEPIA(国際連邦科学情報局。ESPの研究・開発を行うアメリカの機関)へ入って渡米したことだけが朧気に描かれているが、『記憶鮮明シリーズ 東京編|記憶鮮明』や『ボク月』では入るまでの経緯やその後を見ることが出来る。
- 坂口 はじめ(さかぐち はじめ)
- 声 - 佐々木望
- 亜梨子の弟の中学生。両親も知らない亜梨子の能力の理解者。後に月基地についても亜梨子から話を聞き出して理解し、両親への説明役を務めるなど協力者にもなる。輪を警戒しているが、母(声 - 有馬瑞香)や亜梨子には適当にあしらわれてしまう。
- 薬師丸 北斗(やくしまる ほくと)
- 声 - 堀川亮
- 未来路の異母兄で、京都在住の田村の幼馴染み。あまり物事にこだわらない性格。ESP能力者に手を焼いていると相談して来た田村に未来路を付けたが、警察が動き出して事態が大きくなったため、一時は未来路の身を案じて、手を引かせようとした。
- 薬師丸 顕子(やくしまる あきこ)
- 北斗・未来路兄弟の母。代理出産で未来路を産んだが、引き取った実母が未来路を拒絶したことに怒り、幼少期の未来路を自ら引き取って養育する。より異質なものとして人々に拒否されないよう、無闇にESP能力を使わない養育を未来路にした経験から、春彦一辺倒な田村に輪への思いについて問い掛ける。
- フルネームを始め、後に未来路が所属する事になるEPIAに実は顕子自身も在籍していた時期があり、代理出産はその折の出来事であったとのエピソードが『ボク月』で明かされている。
- 松平 タカシ(まつだいら タカシ)
- 声 - 千葉一伸
- 建設会社社長のドラ息子。父が東京タワーの改装計画を請け負っていたため、輪に脅迫される。田村に依存し、春彦に嫉妬している。暴走族・爆桃の頭だが、父に与えられたようなものらしい。やがて脅迫を恐れ、京都に転校する。
- 松平 羅王蔵(まつだいら らおぞう)
- 声 - 藤本譲
- タカシの父。元ヤクザの建設会社の社長。タカシがバカ息子である事は分かっているものの、甘やかしている親バカ。田村のことを高く買っており、弟の自殺に憔悴していた田村に活を入れた恩人でもある。田村が22歳の時にヤクザから足を洗って建設会社を立ち上げたが、屋敷内には未だその色が強く残っている。
- 名前はラオウから。『北斗の拳』や『聖闘士星矢』のパロディが随所にある。
- 岡村 綾子(おかむら あやこ)
- 声 - 小林優子
- 田村の長年の恋人。やや蓮っ葉だが母性的な美女。春彦を田村共々、弟の様に可愛がっている。輪の友人 綾小路 歩美のピアノ教室の先生で、少し木蓮に似ている。
- 鈴木 真理子(すずき まりこ)
- 声 - 岩坪理江
- ショートカットの、亜梨子のクラスメイト。亜梨子の雰囲気に気圧されていたが、輪が亜梨子の髪にイタズラで付けたガムをキッカケに、一番仲の良い友人になる。活発な性格で、本作序盤での高校2年への進級後も亜梨子と同じ1組であったため、迅八達からの取り次ぎ役を務めるようになり、亜梨子を合唱部にも誘った。
- 綾小路 歩美(あやのこうじ あゆみ)
- 色素の薄い髪をツインテールにした、輪の曼珠沙華小学校での同級生。本作序盤で輪に、申し込んでいた交際を断られているが、入院時の見舞いなどで度々姿を見せている。綾子のピアノ教室の生徒。思い込みが激しいぶりっ子で、輪目当てから本作ラストで迅八へ心変わりした流れにより、桜にはココ(シア星系の人々の項目参照)の生まれ変わりだとされた。
- 錦織 今日子(にしきおり きょうこ)
- 一成のお下げ髪の妹。よく家の電話などを一成に取次ぎに私室へ来ては、中性的な美しい一成に陶酔し、やおい系の妄想を巡らす腐女子。
- 間島 正輝(まじま まさき)
- いつも咥え煙草の、川喜田建設グループの参謀。田村の暴走族時代、何かとぶつかっていた暴走族BLACKの元頭。当時から田村とはソリが合わなかったが、弱者に容赦のない間島に付いていけなかった下っ端の田村への寝返りなどで仲は最悪となり、松平建設に引き取られた田村への面当てに、松平建設と因縁のある川喜田へ弟子入りする。田村の弟の死を境に疎遠になっていたが、田村対策として輪に目を付けられ、亜梨子達の周りに現れる。田村達と行動していた未来路のESPに魅せられ、舎弟にしたがるようになる。
- ブンさん
- 母の拒絶で家出し、倒れていた輪を保護した小太りのホームレス男性。髭面の風体に反して純粋で、子供っぽい性格。作中、明確にエスパーとはされていないものの、ESPや人の感情を読み取ることに長けていたため、周囲に気味悪がられ、人々から孤立するようになる。その力で、出自についてだんまりを決め込む輪が帰れないと追い詰められているのにすぐ気付き、自ら保護する事を申し出た。以来、“銀太”の偽名を名乗る輪をとても可愛がり、養おうと道路工事に精を出すようになる。
- 森先生(もり せんせい)
- 闇医者状態(本人曰く「お国に税金を払っていない」)の眼鏡の中年男性。ブンさんの友人で、ざっくばらんな気のいい性格。医師免許も医療設備も健在だが、かつて勤務していた大病院で派閥争いに巻き込まれて以来人間関係に疲れ、現在は開業していない。それにより間島などヤクザの駆け込み寺にされている。ブンさんに代わり、輪を預かる。
- 本作ラストでは、「追徴課税をたっぷり取られ」て正式に開業しているとのこと。
前世
月基地メンバー
大母星を中心に高度な文明で栄えた異星人であり、辺境の地球“KK=101”を監視している。紫苑によれば基地の設備は「極めつきにレトロ」で、かなり軽視されていた。彼らの身長はわずか数cmで[2]、基地施設なども相応に小さいため、地球人には現在に至っても発見されていない。駐在メンバーは男女合わせて7人だったが、仮母星シアとの通信途絶後、まもなく伝染病が発生して全滅する。
- 木蓮(モクレン) / レーン / コウ=ハス=セイ=テ=モク=レン(シン=ラキ=セイ=テ=モク=レン)
- 声 - 篠原恵美
- 才色兼備な女性生物学者であり、月基地男性陣のマドンナ。動植物と感情を通わせるキチェスで、木蓮が歌うキサナドは植物を急成長させる。その異常促進力は、何度か月基地の機能を停止させ、大介曰く“木蓮・歌事件”を招いた。月基地メンバー全員の名前に一致するNXセクタ11=日本語の植物名を発見し、その発音で呼び合う事を定着させた張本人。表向きは背を覆って緩く波打つブロンドに、豊かな胸、象牙色の肌をした聖女然とした美女だが、本来はおてんばで天然、面食いかつ感受性の強い性格。かつての生活から、ふとした折に服を忘れる場合があり、紫苑と玉蘭に全裸姿を披露してしまうが、羞恥心が皆無ではないらしい。地球の大気になりたいというのが口癖。
- 有名なキチェス養育施設“楽園(パラダイス)”にて、元キチェスの両親の間に生まれたキチェス。その後、暫くは一般社会で両親と共に生活していたが、3歳の時に無理矢理母方の祖父母の養女とされ、楽園に入園させられる。一度は奪還しに来た父と逃亡するが、父の死により再び楽園に戻る。その後はキチェスの最長老の寵愛を受け、付き人であるリアン=モードの支えを受けながら成長していくが、その経歴や言動などにより、キチェス内でもその有能さで将来を嘱望されながらも異端児、という稀有な存在。
- 成人後、少女時代からの心の励みであったKK=101(地球)の月基地研究スタッフの総入替えに伴う募集情報を知り、周囲の反対を押し切って自ら応募し、KK=101へ赴く。他のメンバーとの軋轢や紫苑・玉蘭との三角関係を乗り越えて紫苑と結ばれるが、純潔を失った後もキチェが消えなかった事で、紫苑に愛されていないと思い込む。しかし、独房に幽閉された紫苑を救おうと、敢えて婚約。そのまま月基地に蔓延した伝染病により、紫苑1人を残して亡くなる。
- かつて自分の来世(亜梨子)の夢を見た。夢の内容を紫苑に話している場面が、亜梨子が最初に見たムーン・ドリームである。
- キィ・ワード - 紫苑のフルネーム「ザイ=テス=シ=オン」
- 紫苑(シオン) / シ=オン / ザイ=テス=シ=オン
- 声 - 速水奨 / 幼少:冬馬由美
- 衛星―テス出身の戦災孤児で、天才的エンジニア。高い知能と強力なサーチェスを持ち、テスでは殺人を犯した事もあり、それを買われてシアの孤児院で保護され育つ。学生時代は常に成績はトップクラスで女子の人気もあったが、生い立ちの所為か攻撃的な性格で協調性に欠けているため、周囲には煙たがられたり付き合いが長続きせず、恋人は取っ替え引っ替えであった。玉蘭・秋海棠とは同級生で、特に玉蘭には、強いコンプレックスとライバル意識を持っている。成人後もそれらは変わらず、遂に厄介払いとして政府命令により月基地への出向スタッフとなる。地球のマンガが大好きな、真面目なツッパリ。紆余曲折の末に木蓮と結ばれるが、程なくして木蓮が他界。秋海棠の陰謀により、月基地にただ独り取り残された狂気の9年間はそのまま亜梨子達と輪の年齢差となり、その間の記憶は輪にはほとんどない。
- 紫苑も学生時代に来世の夢を見たが、木蓮と違い、内容はほぼ覚えていなかった様子。
- キィ・ワード - 「早くどこかへ帰りたい」
- 玉蘭(ギョクラン) / ギョク / オ=アンティ=シャ=ギョク=ラン
- 声 - 森川智之
- 紫苑のライバルの、考古学者。紫苑達同様のサーチェスだが、自身では制御が利かず、パワーを抑えるためのピアスを付けている[3]。品行方正な優等生で、学生時代から紫苑の親友を自称する世話好き。しかし、実際は何事も正反対なために全く敵わないと思っている紫苑に強い劣等感があり、紫苑の不幸な出自を憐れみ、親友として寄り添う自分に浸りつつ虚栄心を満たしていることには無自覚。紫苑にはその無頓着さを大いに見下され、嫌悪されていた。木蓮に片想いしていた中では、1番親しかった。謎の病原体による伝染病に感染し、最初に亡くなる。
- キィ・ワード - 「木蓮を永遠に愛す」
- 名前はモクレンもしくはハクモクレンの漢名。作中、その事を知らされた玉蘭は木蓮との結び付きを感じ、より一層好意を掻き立てられる事になるが、実は作者は語感のみで命名していて、後に知ったとのこと。
- 秋海棠(シュウカイドウ) / シウ / レム=サイ=ネ=シウ=カイドウ
- 声 - 松本保典
- サーチェスを持つ、医学博士。おっとりした大人しいロマンチストで、学生時代はよく玉蘭の後ろにおり、月基地では木蓮の茶飲み友達であった。幼い頃から病弱だった為に生への執着が強く、伝染病発生後に必死にワクチンを開発するも、完成した矢先に自身の発病を知る。苦悩の末、ずっと愛して見ているしか出来なかった木蓮を、汚しながらも手に入れた紫苑への妬みから、残る紫苑と木蓮の2人にワクチンを接種したと見せ掛け、紫苑にだけ接種して独り取り残そうと謀った。
- キィ・ワード - 木蓮と聴いた地球の楽曲―“流浪の民”の一節から「夢に楽土求めたり」
- 槐(エンジュ) / エン=ジュ / ト=フェコ=ロール=エン=ジュ
- 声 - 鷹森淑乃
- テレパス能力を持つ、女性古生物学者。肩下まであるストレートヘアをワンレグスにしており、芯は強いが内向的で物静か。玉蘭・秋海棠の大学院時代からの友人の1人で、ずっと一途に愛している玉蘭を追って月基地メンバーとなる。木蓮を想っていた玉蘭は、槐と度々関係を持ちながらも、決定的な恋人にはしなかった。月基地で紫苑が好意的に接していた、数少ないメンバー。お気に入りの地球食は、アスパラの唐揚げとおろし大根。
- キィ・ワードは「玉蘭のそばにいたい」。
- 繻子蘭(シュスラン) / シュス=ラン / ロキ=シ=アノール=シュス=ラン
- 声 - 松井菜桜子
- 槐の大親友の、女性科学者。玉蘭・秋海棠とも大学院時代から友人。ショートカットで口が悪いという勝気な性格だが、実は7人の中では一番打たれ弱い。すぐにキレる質で、月基地では何度も秋海棠にトランキライザーを打たれている。少々男性不信で、玉蘭を追って月基地メンバーに立候補した槐への保護者意識で同じくメンバーとなるが、実はその女性らしさで憧れてやまない槐への、コンプレックスの裏返しでもある。伝染病による2番目の死亡者。
- キィ・ワード - 3度更新して3度とも「エンジュのお守りはもうごめん」
- 柊(ヒイラギ) / ラギ / オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ
- 声 - 飛田展男
- 月基地のリーダーであった、言語学者。ややロマンチストで責任感が強いが、小心者。本星との連絡が途絶した後、このまま月基地に閉じ込められるよりも地球へ降下しようとの提案を、責任感から却下。キィ・ワードを集める事も堅く禁じた。伝染病に3番目に感染し、比較的早く亡くなってしまう。輪曰く、後頭部に6つのハゲがある。名前の由来は「オクタコサノール」からと思われる。
- キィ・ワード - 自分のフルネーム「オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ」
シア星系の人々
環境汚染や戦乱で住めなくなっていた“大母星”の復活による大母星の奪い合い―“星間戦争”で戦場と化した衛星―“テス”を離れ、紫苑達の世代には仮母星―“シア”・“セダ”・“カヤ”をメインに他の惑星にも生活の場を移していた。紫苑達がKK=101へ出発後も彼らの文明は戦争を繰り返し、遂には星系ごと消滅するに至った、と月基地では仮母星からの通信途絶を結論付ける(真相は不明)。この星間戦争後の星系については、『BIRTH - 記憶鮮明3』において、月基地とは別の生き残りに関する話が語られている。
- ラズロ / ディ=コモ=テ=ラ=ズロ
- 声 - 有本欽隆
- 優秀だったが、幼少期に戦場で自衛の為であれ殺人を犯した紫苑の、親代わりの保護監察士―ヴィーダとなった髭面の男性。紫苑の良き理解者として生活を始めた矢先、交通事故で死亡。共に暮らした78日間で残した言葉の数々は、その後の紫苑の心のしこりであり、ラズロの自宅が紫苑にとっては故郷そのものとなる。
- キャー、キャーJr.
- 声 - 林玉緒
- ラズロのパートナーで、ジーニャン星系の珍獣。その姿は、二足歩行する人間大のネコ[4]で、初めて対面した者は例外なく悲鳴をあげた事が、名の由来。知能は子供並みで、言葉を話す事は出来ないらしい。ラズロ曰く、サーチェス・パワーを“食べる”。ラズロと共に事故死。
- 紫苑は後にキャーの同族をペットショップで購入し、キャーJr.と名付ける。月基地赴任に伴ってリアン=カーシュに預けられるが、リアン=カーシュの死後は紫苑が居ない寂しさで病気になったのも手伝って、ある動物病院の医者に引き取られた。
- リアン=カーシュ
- 声 - 翠準子
- 紫苑の育った孤児院の施設長。紫苑の母代わりだったが、月基地赴任後に病死。
- ココ / リマ=ティ=セ=ココ=ス
- 声 - 山崎和佳奈
- 紫苑・玉蘭・秋海棠が通っていた学校の同級生。ぶりっ子タイプの変わり身の早い少女で、当初紫苑にアプローチを掛けて付き合い始めるものの、紫苑にとってはココに想いを寄せていた玉蘭への当て付けでしかなく、間もなく紫苑に手酷く振られてしまう。その直後、紫苑を庇いつつ必死にココを玉蘭が慰めた事で、2人は長く付き合うようになる。大学院で玉蘭達やココと一緒になった繻子蘭は、その裏の顔にいち早く気付いて警告していた模様。玉蘭の月基地赴任前に、表向きはココの軽さを理由に破局したと玉蘭は紫苑達に語ったが、失恋で泣く玉蘭を槐が懸命に慰めた。
- が、紫苑・玉蘭・秋海棠の3人にとって、学生時代のココの一件は大きな影を落とす。特に紫苑と玉蘭はお互いへのコンプレックスを明確に意識し、後の木蓮と紫苑・玉蘭との三角関係でも、紫苑の玉蘭への激しい敵意の原因となる。だが、事情を知らない木蓮は「何故2人がこんなにいがみ合うのか」と理解に苦しんだ。
- ロージャ / ロジオン
- 声 - 石田彰
- 木蓮の父で、元キチェス。心優しく涙もろい性格から、木蓮には泣き虫として大切にされている。木蓮を楽園に渡すまいと隠すように育てるが、一度は連れ去られてしまい、忍び込んで連れ戻すと家族で北へ逃げ続ける。しかしこの逃避行は、キチェスの男性の多くの例に洩れぬロジオンの早逝により、終わりを告げる。キチェスを降りる際に実家からは勘当され、マージの実家には快く思われていない。キチェス全員に与えられる最長老からの予言で、ロジオンへのものは、キチェス内では有名な逸話となっている。木蓮の歌う際の心得は、ロジオンの教えによるもの。
- マージ
- 木蓮の母で、楽園育ちの元キチェス。木蓮にとってはよく泣くロジオンをいじめるポジションだった。ロジオンの死後、自身では木蓮と逃げられないと結論し、楽園に戻す事を決意。それから間もなく、ロジオンの後を追うように亡くなる。
- 最長老
- 声 - 京田尚子
- キチェ・サージャリアンのトップに位置する老女。皺だらけのほっそりした体で、普段は冷静沈着かつ威厳たっぷりだが、素顔は人のいいおばあちゃん。自身を気負いなく慕う木蓮を、キチェスの中では異端な存在であるにも関わらず普通に扱い、月基地行きも認めた。治癒能力や予知能力を有するらしく、ロジオンのその後や木蓮の月基地行き以外にも、星間戦争による滅亡まで予見したかのような遺言を木蓮に託す。全滅の少し前、静かに他界する。
- リアン=モード
- 楽園における木蓮の世話係。サージャリム信仰における修道女―リアンで、ほぼ皆スキンヘッド。少女時代より木蓮に仕え、木蓮の脱走事件では一時遠ざけられるが、最長老の執り成しと木蓮の強い要望により復帰。以後、木蓮が月基地に赴くまで献身的に仕え続けた。目立つ所のない凡庸な女性だが、木蓮の数少ない理解者の1人で、決して木蓮を特別視せずに対等に接した。
- セヴ=オルー
- 少女時代の木蓮が知り合った一般人の、そばかす顔の少年。サーカスの大スターであるマッチョな父が自慢。木蓮の初デートの相手で、一度は美しい木蓮にプロポーズするものの、父に反対されてすぐに発言を取り消す。練習中に不慮の事故に遭った父の助命を木蓮に頼むが、間に合わず父を亡くす。出自にこの経験が加わった事で、木蓮は他のキチェス達と違ってサージャリムを疑問視し、益々キチェスである自分に劣等感を抱くようになる。
作中用語
- ムーン・ドリーム
- 地球に転生した月基地メンバー7人が見ていた夢のこと。命名は大介。前世の異星人としての記憶で、亜梨子が夢を見たのを契機に、メンバー探しが始まる。必ず前夜の続きが見られる訳ではない為、多少内容が前後する場合もある。また結局はそれぞれの視点からの記憶なので、同じ出来事でも人によっては捉え方が大分違ったり、1人だけが知る後日談などもある。迅八と一成の夢だけが連動していたのは、一成のテレパスによる。
- 同調連鎖
- シア星系の言葉で、1つの発言から次々に考えや記憶を発展させていくこと。これを利用して、輪はメンバー各人の覚醒を促し、キィ・ワードを思い出させようとしていた。
- キィ・ワード
- 輪が集めていた、7つのパスワード。月基地研究スタッフが1人1つずつ設定し、コンピュータに入力したもの。全員のキィ・ワードを設定順に正確に入力すると、月基地の機器全てを起動させる権限が与えられるというもので、中には地球を破壊させるだけの兵器も存在した。その為、メンバーが互いにキィ・ワードを教え合う事は柊が堅く禁じていた。が、シア星系の全滅で地球降下を果たそうとする紫苑により、キィ・ワードを巡る諍いが起きた。
前世
- 大母星
- シア星系の人類発祥の星。星系内で随一の文明を誇ったが、人口増加により近隣惑星への大移住が始まる。その後、乱開発による公害などで異常気象が続き、地震や極地の氷の流出による水位上昇と洪水が多発。遂には人類の居住不可能な状態になり、放棄せざるを得なくなってしまう。だがキチェス達の懸命な活動により奇跡的な回復を遂げるものの、各星は大母星の独占を巡り、星間戦争が勃発。紫苑達のKK=101赴任時には、戦争は戦場をテスに移しての30年に渡るものであった。月基地メンバーは、仮母星からの戦争激化による待機の報や星系の一切の反応が突如消滅した事から、とうとう何らかの兵器により星系全体が滅亡したと推測し、シア星系の人類として生き残ったのは月基地の7名のみと結論付ける。
- テス
- 大母星の衛星。30年前より星間戦争の戦場となった事で、紫苑が生まれた頃には荒廃。紫苑の故郷として、その洗礼名の一部になっている。
- シア
- 大母星と同星系の惑星。シアには最も多く人が移り、仮母星と呼ばれた。月基地への報は、セダ・カヤの一斉攻撃を受けたというのが最後で、程なくしてシア星系内の一切の反応が消滅した。
- セダ
- 大母星と同星系内にあった、中くらいの惑星。最初にテスに侵攻し、星間戦争を引き起こした。
- カヤ
- 大母星と同星系内にあった、小さめの惑星。セダの侵攻に対しテスを守ろうと、シアとテスで共闘する。
- KK=101
- シア星系内での地球のコードネーム。“KK”の意味は「田舎、辺境」。シア星系とは遠く離れた辺境の未開地という認識で、研究スタッフは月面上の基地から、地球上の環境・文化・政治などあらゆる面を観測しており、干渉は禁止されていた。しかしその最終目的は、万一の場合の地球移住=地球への侵略にあった。しかし生き残ったメンバー7人も謎の伝染病を発病し、地球に病原体を持ち込まない為に、月基地で死ぬしかないという末路を辿った。
- サージャリム
- 大母星を発祥地とし、シア星系の人々の半数以上が信仰する唯一神。その恵みをあらゆる生命体に注ぎ、シア星系すべてを創り出した創造主とされている。その姿は、黄金の羽をもつ女性。この宗教の起源・提唱者については不明。
- サーチェス・パワー
- サージャリムの恵みとされている、地球でいう所のESP能力。しかし地球のESPとは、質が異なる。その種類は透視やテレパシー、予知能力、念動力、テレポートなど多岐に渡る。シア星系人の10人に1人が持っている。
- 月基地メンバーの中では木蓮と紫苑が強力な使い手で、他にも玉蘭と秋海棠、槐はテレパス能力のみ持っていた。
キチェス
- キチェ=サージャリアン
- 多くのサーチェス能力者の中でも、生まれながらにして額に赤い四つ葉の痣―キチェを頂く者達。サージャリムの御使いとされ、特に人間と自然とを仲介する特殊能力を持つ。遺伝ではなく、1億分の1の確率という完全な突然変異で生まれる。童貞・処女であり、性交渉によりその資格・能力を失う。キチェス同士の子供として生まれるた木蓮は、極めて稀な例。男女比は2:98で、男性のキチェスはほとんどが短命。
- サーチェス・パワー
- 最長老には治癒・予知能力などがあったが、そこまでの能力者は少数。大多数のキチェスは動植物との交信や、歌で植物に働きかけてその成長を早めたり、逆に死滅させる事が出来た。
- 聖書(キサナド)
- 全318章から成る、サージャリムを讃える聖歌を纏めた聖書。独特の節と音階を持つ曲が付き、キチェスの単なる歌声でも植物の成長は加速するが、キサナドは更にその効果を高める。
- 黒聖歌
- キサナド第49章。この章をキチェスが歌うと、植物は枯れてしまう。しかし実は植物はただ眠るだけで、キチェスが再生歌を歌えばまた再生する。国家にもリム・リアン評議会にも、その存在自体を秘密にされているキチェス間の最高機密。完全防音の室内でのみ口伝で教えられ、表向きは失われた章とされている。あまりの恐ろしさから習得時に泣き出す者もおり、木蓮も一度も歌わずにただ覚えただけに留めた。
- 伝承
- 大昔、キチェスの人数は多かったがその力を恐れる時の権力者により、魔女狩りなどの迫害に遭っていた。一般の人々も怖がってサージャリムやキチェスの名すら口に出さなくなると、これに怒ったサージャリムがキチェスを隠してしまい、ある日響いた奇妙な歌声で世界中の緑が枯れてしまった。為す術もなかった人々が懸命に悔い改めると、ようやくキチェスが生まれるようになり、世界に緑も戻った。それからは世界中でキチェスを保護するようになるが、その数は大きく減ってしまった、というもの。だが実際は迫害に怒ったキチェス達が黒聖歌を歌ってしまい、自責の念から歌ったキチェス達が自害。キチェスが激減したという真実は、キチェスの間でのみ口伝えに教えられる。
- 楽園(パラダイス)
- 国によるキチェス養育施設。数が少ないキチェ・サージャリアンは、この施設やキチェス管理局によって保護・管理される。キチェスは3歳になると親元から離され、20歳の成人まではこの一般社会から隔離された施設に収容。キサナドや祭祀の伝承などを教えられ、伝説通りのキチェスとなるべく特殊教育を受ける。裸体が理想とされ、楽園での生活ではずっと全裸。成人後は学校などの社会に出る事も出来るが、国の行事やセレモニーでに引っ張りだこになってしまう。木蓮曰く、キチェスである事から優越感の塊にもなるので、劣等感だらけの木蓮は異端。
- 生活保証保護金
- 全くの突然変異で生まれるキチェスを、保護するシステム。キチェスを生んだ夫婦は、国から終生に渡る生活保証保護が与えられる。キチェスを“降りる”事になる“結婚”は、それのみに生計を頼ってきた家庭の死活問題となる。その為、木蓮は保護金を取り上げられたマージの実家が、保護金を取り戻そうと強制的に養女に迎えた。
- リム・リアン評議会 / キチェス管理局
- リアン達によるサージャリム信仰の運営組織と、キチェスの養育・管理を司る組織。その主な職務は教会での布教、礼拝。式典の管理。紫苑が育ったような孤児院の運営も担当。エリート層はリアン=モードの様に、キチェスの付き人を務めた。
OVA
1993年からOVAがリリースされる。全6話。原作序盤の内容をほぼ忠実に構成、最終話はオリジナルの展開であり、伏線などは明かされず未完のまま終わっている。
NHK衛星第2の夏休みアニメ劇場などでテレビ放送もされた。2001年にはDVDが全4巻構成で発売。DVD最終巻は完結編とイメージミュージック映像が収録されている。
スタッフ
- 原作 - 日渡早紀
- 監督・構成 - やまざきかずお
- 監督補佐 - 川崎逸朗(第2話以降)
- キャラクターデザイン - 後藤隆幸
- 美術監督 - 池田祐二(第2話まで)、長崎斉(第3話以降)
- 撮影監督 - 高橋明彦
- 編集 - 辺見俊夫、船見康恵
- 音楽 - 溝口肇
- 音響監督 - 浦上靖夫、小林克良
- プロデューサー - 前田哲也、桜井裕子、石川光久
- 制作 - Production I.G
- 製作 - 白泉社、ビクターエンタテインメント、イング
主題歌
各巻リスト
巻数 | サブタイトル | 演出 | 作画監督 | 総作画監督 | 発売日 |
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第1巻 | 覚醒(めざ)め | 川崎逸朗 | 後藤隆幸 | - | 1993年12月17日 |
第2巻 | 出会い | わたなべひろし | 後藤隆幸 | 1994年2月25日 | |
第3巻 | 月の記憶 | 川崎逸朗 | 後藤隆幸 | - | 1994年3月25日 |
第4巻 | 想い | 千葉大輔 | 高岡希一 | 後藤隆幸 | 1994年5月27日 |
第5巻 | E・S・P | 川崎逸朗 | 後藤隆幸 | - | 1994年7月22日 |
第6巻 | 転生、そして…… | 1994年9月23日 |
ラジオ番組
関連のラジオ番組として、1993年7月11日から1993年10月3日までの毎週日曜日夜11時から11時30分に文化放送・ラジオ大阪でアニラジ番組「ラジメーションMOONWAVE・ぼくの地球を守って」が放送されていた。パーソナリティーは速水奨と白鳥由里だった。
番組内容はリスナーから月にまつわる不思議現象の報告や「ぼくの地球を守って」の世界観に関する質問や各キャラクターの性格や特徴に関する質問のほかに普通のお便りも紹介していた。また、スタジオに他のキャラクターを演じている声優をゲストに呼んだり、主題歌を歌う新居昭乃を呼んでリスナーからの質問やフリートークもしていた。また、OVA作品の導入に当たる特別ラジオドラマも番組内で放送していた。番組終了後も作品への人気が高く1994年の12月にイベントが行なわれた。
類似作品
何の関係もなかった者達が、実は前世で縁のある義兄弟だった、という話。
同じ輪廻転生を元にしたアニメ。前世が異星人も共通している。